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企業法務/知財の最新事情 【リーガルステーション】 07年度中国の知財権侵害判例集から〈4〉
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企業法務/知財の最新事情 【リーガルステーション】 【広州広日電梯工業有限公司が広州永日電梯有限公司、李湘を営業秘密侵害で訴えた紛争事件】 《争点=本件設計図は「不正競争防止法」第 10条に規定する営業秘密に該当するか、永日公司および李湘には広日公司の営業秘密に対する侵害行為が存在するか》

(1)事実関係=1999年から 2003年にかけて、広日公司は、GRFエスカレーターの設計図 11枚を作成した。2002年 9月 27日、広日公司は深?市国美電器有限公司(以下「国美公司」)と「売買契約」を締結し、国美公司が広日公司から型番 GRF-35-100の広日ブランドエスカーレーターを 2基購入することを約定した。契約に約定された商品代金は、合計 46万人民元であった。広日公司は、同社の技術成果に対し秘密保持措置を講じ、広日公司「設計文書管理規定」を制定した。 李湘は、永日公司の社員である。2004年 10月、彼は広州市人事局の主催した広州機械・電気加工技術エンジニア資格コンテストに参加した。李湘は、自らにエスカレーターを独自設計する能力があることを証明するため、設計日 2003年 8月 13日と明記し、かつ永日公司の社印を押捺したエスカレーターの部品設計図合計 11枚を広州機械、電気加工技術エンジニア資格コンテストに提出した。コンテストに参加した広日公司の社員は、当該図面を詳細に確認した後、当該図面は広日公司が 1999年から 2003年にかけて設計した GRFエスカレーターの設計図であると判断した。そこで、2004年 12月 15日、永日公司および李湘が不正手段によって広日公司の営業秘密を窃取し、製造経営及び資格コンテストに使用した行為は権利侵害を構成すると主張して、広東省広州市中級人民法院に提訴した。

(2)第一審判決=広日公司の請求を棄却する 第一審・広州市中級人民法院は、次の通り判示した。 営業秘密とは、公知となっておらず、権利者に経済的利益をもたらすことができ、実用性を備え、かつ権利者が秘密保持措置を講じている技術情報及び経営情報を指す。広日公司が自ら秘密保持措置を講じたということを証明するために用いた社内文書「設計文書管理規定」の制定日が 2004年 10月 1日、「技術関連文書追加発行申請表」の時期が 2005年 3月であるのに対し、提訴された 11枚の図面の作成時期は 2003年 8月である。すなわち、広日公司が秘密保持措置を講じた時期は、被疑侵害図面の作成時期よりも後であるため、永日公司及び李湘が被疑侵害図面を取得する以前に、広日公司がすでに秘密保持措置を講じていたことは証明できない。広日公司の 11枚の GRFエスカレーター設計図は、営業秘密の構成要件に合致しておらず、営業秘密の保護範囲に該当せず、永日公司および李湘が権利を侵害したという広日公司の主張は事実的根拠及び法的根拠がないため、これを支持しない。

(3)第二審判決=上訴を棄却し、原判決を維持する 第二審・広東省高級人民法院は、次の通り判示した。 広日公司が保有する 11枚の GRF型エスカレーター技術設計図は営業秘密の構成要件に合致しないとする第一審人民法院の認定には誤りがある。広日公司の 2.0版〜7.0版「設計文書管理規定」の内容から判断すると、2001年 11月 11日の開始から現在まで、広日公司は一貫して、その製品図面の基図および設計資料について原則的に設計者以外のその他の者に閲覧させてはならず、設計者が閲覧する場合には、管理者に閲覧手続を行い、かつ主管者の同意を得た後に資料室にて閲覧しなければならないと規定している。設計文書の交付については、主管者が決定した後に情報管理科が統一して交付するものとし、かつ「文書交付・受領登記表」に受領署名しなければならない。 また、2003年 4月 25日より新たな規定が制定され、設計文書の交付は設計部/技術開発部の内部者と外部者とを区別し、それぞれ等級ごとの責任者が確認し、かつ情報管理科科長の審査を受けた後に交付することとなった。このことから、広日公司は、その設計図面及び周辺資料の保管についても、設計図および周辺資料に接触できる人員の管理についても、適切かつ合理的な秘密保持制度を確立しており、広日公司の保有する GRFエスカレーター設計図は秘密性を備えていることが分かる。広日公司が保有する GRFエスカレーター設計図は営業秘密の構成要件に合致するという同社の上訴請求は、法的根拠および事実的根拠を備えており、第二審人民法院はこれを支持する。 次に、永日公司及び李湘に広日公司の営業秘密に対する侵害行為が存在するか否かの問題についてである。当該図面と広日公司の保有する営業秘密とを比較した結果、完全に一致するが、@営業秘密は、一種の知力の成果として、いかなる者も自ら開発、研究および製造することによって、またはその他正当な手段によって当該成果を獲得することができる。A法律に、広日公司の技術秘密と同一または類似する技術秘密を保有する者は全てそのかかる秘密を取得した経緯を証明する挙証責任を負わなければならないと規定されているとするならば、その他の自ら開発、研究および製造することによって、またはその他正当な手段によって当該成果を取得した主体の訴訟の負担が必然的に増加し、かかる主体の自らの権利行使に影響を及ぼすこととなり、明らかに不公平である。 従って、広日公司は、永日公司及び李湘が広日公司の保有する 11枚の設計図に接触したこと、永日公司および李湘に広日公司の営業秘密を取得する条件があること、または永日公司及び李湘が「不正競争防止法」第10条に定める「窃盗、利益誘導、脅迫又はその他の不正な手段」によって広日公司の営業秘密を取得した事実を証明する義務を有する。広日公司は、これを証明するいかなる証拠も提出しておらず、これについて挙証不能の法律責任を負うべきであり、広日公司が、永日公司および李湘にその営業秘密侵害に対する民事責任負担の判決を負う旨の判決を請求することには事実的根拠及び法的根拠がなく、第二審人民法院はこれを支持しない。 以上のことから、広日公司の上訴理由は成立しない。原審判決は事実認定の部分に誤りがあるものの、判決結果に影響するものではなく、第二審人民法院はこれを維持する。

(4)解説=本判決によれば、営業秘密侵害紛争事件において、権利者の挙証責任には主に次の 2点が含まれる。まず、その主張する営業秘密が「不正競争防止法」第 10条に定める構成要件に合致していることを証明しなければならない、すなわち、@公知でなく A権利者に経済的利益をもたらすことができ B実用性を備え C権利者が秘密保持措置を講じている D技術情報・経営情報という要件を同時に満たさなければならない。次に、被疑侵害者が係争の営業秘密に接触したこと、係争の営業秘密を取得する条件が存在すること、または窃盗、利益誘導、脅迫もしくはその他の不正な手段で係争の営業秘密を取得したことを証明しなければならない。 本判決の後、最高人民法院の「不正競争民事案件審理における法律適用の若干問題に関する解釈」が制定・施行された。本解釈第 14条は、営業秘密侵害の存在を主張する者が、@その保有する営業秘密が法定条件に合致すること(その証拠には、営業秘密の担体、具体的内容、商業価値および当該営業秘密に対し採用した具体的な秘密保持措置等を含む)A相手方当事者の情報と自身の営業秘密が同一または実質的に同一であること B相手方当事者が不正手段を行なった事実について立証責任を負わなければならないと規定しており、本判決とほぼ同様の内容と考えられる。 しかし、通常、営業秘密侵害行為の具体的事実関係は侵害行為に関与した者以外の第三者には判明しないのであり、営業秘密侵害の存在を主張する者が営業秘密侵害行為の具体的事実関係を立証することは非常に困難である。にもかかわらず、営業秘密侵害行為の具体的事実関係の立証を要求すると、営業秘密侵害行為が人民法院により認められることは事実上ほとんど無くなるのではなかろうか。 この点に関し、国家工商行政管理局の「営業秘密侵害行為を禁止することに関する若干規定」第 5条第 3項は、「権利者が、被申立人の使用する情報と自己の営業秘密とが一致または同等であることを証明することができ、同時に、被申立人がその営業秘密を入手する条件を有することも証明することができたが、被申立人が、その使用する情報を合法的に入手しもしくは使用しているという証拠を提出できず、またはその提出を拒否した場合は、工商行政管理機関は、関連証拠に基づき、被申立人に侵害行為があると認定することができる」と規定している。この規定の方が、営業秘密侵害行為の立証責任の合理的分配の見地から、より妥当と思われる。実際上、営業秘密侵害の存在を主張する者が営業秘密侵害行為の具体的事実関係を立証することよりも、営業秘密侵害の存在を否定する者が「その使用する情報を合法的に入手しもしくは使用しているという証拠」を提出する方がはるかに容易であると考えられるからである。営業秘密侵害訴訟において、人民法院が、訴訟の審理状況に応じて適切な訴訟指揮により柔軟な解決を図ることを期待したい。

(5)ポイント=営業秘密侵害行為の存在を主張・立証しようとする日本企業にとって、本判決のように、営業秘密侵害行為の立証責任を負わされることは重い負担であるが、可能な限り、調査会社による調査等を通じて営業秘密の漏洩ルート等の事実関係を具体的に把握し、証拠を収集・確保することが必要である。   石田 哲夫

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