
消費者庁の枠組みが最終的に固まった。来年度から内閣府の外局としてスタートするため法案の準備に入る。組織、人員をはじめまだ確定されていない部分も残されているが、消費者にかかわりのある29の経済法が移管若しくは共同所管となる。メディアは総じて冷たい雰囲気だが、閣議決定されており、消費者行政の転換点になることは間違いなく、これまでとどう変わるのか企業問題にかかわる弁護士らの関心は高い。前評判が今一つだけに実績が必要となるわけで、企業にとっても消費者庁の運用の方向は気に掛かるところだ。そこで移管、共同所管となる各法律について消費者行政推進会議の最終報告書や政府の基本計画を基にまとめた。
最終報告書は消費者庁について「行政に対する消費者の信頼性の確保を重視し、6原則の実現を図る」と性格を位置づけている。順に見ていくと、最初の原則は「消費者にとって便利で分かりやすい」。新たな組織だけに「生産者サイドから消費者・生活者サイドへの視点の転換の象徴」として消費者に便利で分かりやすいものとする。具体的には、消費者問題全般にわたり強力な権限と責任を持つとともに、消費者が迷わず何でも相談できるよう一元的窓口を持ち、情報収集と発信の一元化を実現する。
2番目が「消費者がメリットを十分実感できる」。消費者被害の実態を踏まえ、被害防止や救済に結び付けられる仕組みを構築する。このため、担う消費者行政は、商品・金融などの「取引」、製品・食品などの「安全」、「表示」といった消費者の安全安心に関わる問題を幅広く所管する。また、物価に関する基本的な政策や消費者や生活者が主役となる社会を構築する上で重要な制度など、消費者の利益に大きな影響を及ぼす行政分野を幅広く担当。一元的な窓口機能(苦情相談の解決を含む)、執行、企画立案、総合調整、勧告などの機能を有する消費者行政全般についての司令塔として位置づける。また、すき間事案への対応や横断的な規制体系の整備のため、新法の早急な制定に向け取り組む。さらに、父権訴訟、違法収益の剥奪等も視野に入れつつ、被害者救済のための法的措置の検討を進める。
3番目が「迅速な対応」。消費者からの相談や法執行、さらには法律や政策の企画立案に至るまで、「迅速な対応」を行う。緊急時には、新組織を担当する大臣を中心に、警察等を含め関係省庁との緊密な連携の下、緊急対策本部を設置するとともに、各省庁への勧告等の機能を有効に活用する。これにより、食品による危害事案などにも適切に対処する。
4番目が「専門性の確保」。各省庁や民間からの専門家の活用を積極的に行うなど、消費者行政に関する幅広い「専門性」を確保・育成する。また、各省庁や民間に蓄積された専門性を活用する。非常勤職員に弁護士の採用も予定されている。
5番目が「透明性の確保」。運営に消費者の意見が直接届くような仕組みを導入する。具体的には、有識者からなる審議会的な機関を設置し、消費者などが新組織や各省庁の消費者行政(企画立案、法執行)をチェックし、消費者の声を反映させる。
最後が「効率性の確保」。消費者の立場に立って強力な指導力を発揮する、機動的で賢い組織とする。消費者行政を総合的に取り扱う新組織の創設により、各省庁の重複や時代遅れの組織を整理することにつなげる。
次に法律ごとに見てみる。法律の中には調整が済んでいない場合もある。
【不当景品類及び不当表示防止法】見直しを行った上で、消費者庁に移管する。
【農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(JAS法)】品質表示基準の企画立案、執行は、消費者庁に移管する。消費者庁は、品質表示基準の策定・改正に当たっては、農林水産省にあらかじめ協議し、同意を得ることとする。農水省は、消費者庁に対し、案をそなえて、品質表示基準の策定・改正の要請を行うことができる。消費者庁は、報告徴収・立入検査、指示及び措置命令を担当する。その上で、消費者庁は、農林水産大臣に権限の一部(報告徴収・立入検査、指示)を委任する(包括委任)。農水省は、報告徴収・立入検査、指示を行うとともに、指示の内容を消費者庁に報告する。消費者庁は、自ら報告徴収・立入検査、指示を行う、または個別に方針を定めた上で、これらの事務を農水大臣に委任できる(個別委任)。農水省は、消費者庁に対し、措置命令を要請できる。
【食品衛生法】表示基準の企画立案、執行は、消費者庁に移管する。消費者庁は、表示基準の策定・改正に当たっては、厚生労働省にあらかじめ協議する。また、厚労省は消費者庁に対し、表示基準の策定・改正の要請を行うことができる。消費者庁は、表示基準に合わない食品等の販売等の禁止および虚偽または誇大な表示および広告の禁止に関する廃棄命令、危害除去命令などの処分を担当する。なお、これら処分に係る都道府県知事等の権限は現行通りとする。厚労省は、食品等の規格基準(安全基準)等の策定・改正に当たっては、消費者庁に協議する。
【健康増進法】表示基準の企画立案、執行は、消費者庁に移管する。消費者庁は、表示基準の策定・改正に当たっては、厚労省に協議する。特別用途表示の審査・許可は、消費者庁が所管する。消費者庁は、特別用途表示、栄養表示基準等に係る立入検査、勧告、収去及び命令、虚偽・誇大な広告等の監視指導などの執行を所管する。その上で、消費者庁は、地方厚生局長に権限の一部を委任する。地方厚生局長は、上記に係る権限を行使した場合には、その内容を消費者庁に報告する。なお、都道府県知事等の権限(特別用途食品の収去、立入検査等)については、現行通りとする。消費者庁は、特別用途表示の許可及び収去を行った食品について、独立行政法人国立健康・栄養研究所等に試験を行わせる。
石田 哲夫
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