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企業法務/知財の最新事情 【リーガルステーション】 《200万社もの中小企業が弁護士を利用していない》
企業法務/知財の最新事情 【リーガルステーション】 	司法界も今、大きく変わりつつあります。裁判、司法行政の現場を見つめ続けてきたジャーナリストがその動きを読み解き、今の、将来の実務に役立つコラムです

企業法務/知財の最新事情 【リーガルステーション】歯科医を他人事とはいえない厳しい競争時代に入り、弁護士も知識、技能ばかりではなく、新しい仕事先を開拓する努力がさらに必要となった。とりわけ若手にとっては“営業”戦略は避けて通れない。ではどうすればいいのか。これを考えるヒントになりそうな調査結果が公表された。「中小企業の弁護士ニーズ全国調査報告書」である。ざっと数えて全国の中小企業200万社は弁護士を利用したことがなく、うち136万社が法的課題を抱えているという。この潜在顧客を掘り起こしていくことは極めて重要だが、そのためには越えなければならないハードルがある。それは意識改革であろう。敷居をなくし、サービス業としての「街弁」になる覚悟と言ったらいいだろうか。これが需要喚起につながる入り口になるのだと思うが、それと「正義」「公正」といった職業倫理を両立させる工夫も必要である。

この調査は、日弁連弁護士業務総合推進センターの法的ニーズ・法曹人口調査検討プロジェクトチームと中小企業関係業務推進プロジェクトチームにみずほ総合研究所が加わって行われた。対象は全国の中小企業15450社にアンケート調査を実施し、3214社から回答を得た。回答率は約2割で高くはないが、この手の調査は低率になるのもやむを得ない。  回答を見てみると、弁護士を利用したことがある企業は全国平均で 51.8%(訴訟等のみ23.2%、それ以外も28.6%)で、東京は75.7%(訴訟等のみ26.1%、それ以外も49.6%)だった。企業の規模別に見ると、従業員数 10 人以下は39.8%(20.8%、19.1%)、11 人〜50 人55.8%(25.8%、30%)、51 人以上82.9%(24.4%、58.5%)。売上高 3 億以下は38.4%(20.5%、17.9%)、10 億以下60%(25.8%、34.2%)、10 億超83.4%(28.4%、55.0%)と当たり前かもしれないが零細企業ほど弁護士と距離があることが分かった。 それでは弁護士を利用しなかった理由を聞いてみると、「特に弁護士に相談すべき事項がないから」(74.8%)、「弁護士以外への相談で足りる」(21.9%)、「費用問題」(15.7%)、「接点がないから」(13.6%)と、法的トラブル自体がなかったという回答が3分の2を占めている。

法的な問題があっても弁護士に相談しなかった理由については「弁護士の問題と思わない」(46.6%)、「料金問題」(34.3%)、「相談しにくい」(20%)、「弁護士につてがない」(17.3%)、「連絡が取りにくい」(10.7%)。他の士業に依頼したのかもしれないが、やはり敷居の高さが邪魔をしている感じがする。もし顧問契約をする時に何を重視するか聞いたところ、「専門性・力量」55.5%(東京は53.7%)、「人柄」52.8%(東京は58.1%)だった。専門知識がもっと高いと思われたかもしれないが、相談するときはやはり親身になって聞いてくれたり、怒られたりしないほうが良いに決まっている。サービス業である認識が欠けていると、外からは見られているのである。

ではどんな法的な課題を抱えていると認識しているのだろうか。約20 項目の法的事項を示して法的な課題と考えているかどうかを聞いたところ、やはり一番多いのは債権回収で40.6%だった。10%未満だったのは、知財(9.1%)、個人情報(8.2%)、総会取締役会(8%)、PL 法問題(7.9%)、コンプライアンス体制構築(7.8%)、M&A(3.8%)、会社再建(3.5%)、セクハラ問題(3.3%)、貿易取引(2.7%)、独占禁止法(2.5%)、海外進出(2.2%)、株式公開(0.9%)、証券取引法(0.9%)である。この低い分野はこれからの需要を考える上で、重要である。周知の機会を積極的に作って、粘り強く説得していかなければならないであろう。これを中小企業でも大きな方の301 人以上の企業で見ると、 雇用問題は72.6%、総会取締役会29.8%、個人情報25.8%、コンプライアンス体制構築33.2%、社内規定44.3%、債権回収44.5%、契約書44.7%、クレーム72.9%となっており、企業規模別で際立った差異があった。 一般的な弁護士の満足度は満足9.5%、やや満足40.9%、満足しないが納得した 21.8% 納得しないが不満はない 5.8%、不満 3.9%とまずまずの成績といっていいだろう。顧問のいる企業の満足度は満足64.4%、満足しないが納得した 16.2%だった。隣接士業の満足度は税理士 67.7%(満足7.5%、やや満足60.2%)、社会保険労務士73.7%(満足10.5%、やや満足63.2%)、司法書士77.6%(満足17.5%、やや満足60.1%)、公認会計士76.9%(満足11.4%、やや満足65.5%)だった。他の士業の場合は顧問契約しているところがほとんどであり、弁護士との比較も顧問のいる企業の数値と比較する方が妥当だが、信頼は高いことが裏付けられた。

 費用問題は企業規模が小さいほどネックになっており、全体でも34.3%「費用問題が弁護士への相談を阻害している」と回答している。弁護士への要望では、報酬の分かりやすさ 52.1%、フットワークの良さ 32.4%、得意分野の分かりやすさ 32.4%、業界への知見 23.8%、 専門性 20.4%、新法の知識 18.1%、 コミュニケーション能力 17.8%だった。 ざっと調査概要を見てきたが、大方の中小企業では弁護士の専門的能力に対しては高い評価を与えているものの、報酬が分かりにくくて高く、それほどの費用を掛けてまで弁護士に依頼するほどの法的問題を今は抱えていない−ということではないだろうか。中小企業は全国で432万社に上る。調査結果からすぐに果実が得られるものではないが、潜在市場であることは確かだ。



石田 哲夫

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