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企業法務/知財の最新事情 【リーガルステーション】 《施行されたがまだ不透明な中国独占禁止法》
企業法務/知財の最新事情 【リーガルステーション】 	司法界も今、大きく変わりつつあります。裁判、司法行政の現場を見つめ続けてきたジャーナリストがその動きを読み解き、今の、将来の実務に役立つコラムです

企業法務/知財の最新事情 【リーガルステーション】 中国の独占禁止法が8月1日から施行された。昨年には物権法が施行されており、これで主要経済法の整備は大きな区切りを迎えた。ただ、運用面ではガイドラインや適用実例、判例といったソフト的な動向を見ないとまだ不透明な部分がある。独禁法は経済警察法の側面があり、進出企業への影響が大きくなる恐れがある。今後の動きに注目したい。

独禁法は第1章 総則、第2章 独占協定、第3章 市場支配的地位の濫用、第4 章 事業者の集中、第5章 行政権力濫用による競争の排除、制限、第6章 独占行為の嫌疑に対する調査、第7章 法律責任、第8章 附則の8章、57条で構成されている。1条では「独占行為を予防し、阻止して、市場の公平な競争を保護し、経済運営の効率を高めて、消費者の利益と社会の公共利益を確保し、社会主義市場経済の健全な発展を促進するために、本法を制定する」と目的を規定している。

以下にジェトロなどの資料を基に、ポイントとなる部分を見てみる。法で規定する独占行為は、【1】独占協定(いわゆるカルテル)の締結 【2】市場支配的地位の乱用 【3】事業者集中 の3つ(3条)。ここに中国特有の行政独占も加えた4つが規制の対象となる。また、注目されるのは「国有経済が支配的地位を占め、国民経済上、最も重要な部分、国家安全にかかわる業種および法に基づく専営専売を実行する業種については、事業者の合法的な経営活動を保護する」(7条)とされている点である。これは電力、ガス、通信、石油、鉄道、航空、銀行など基幹産業に従事する国有大企業の「独占」は特例的にとらえているものと見られる。

 「独占協定(カルテル)」に関しては、競争を排除、制限する協定、決定またはその他の共同行為を指し、具体的には、競争関係にある事業者が以下の独占協定を締結することを禁止(13条)。それは【1】商品価格を固定または変更すること 【2】商品の生産または販売の数量を制限すること 【3】販売市場または原材料調達市場を分割すること 【4】新技術、新設備の購入を制限、または新技術、新商品の開発を制限すること 【5】取引を共同ボイコットすること 【6】独占禁止執行機関が認定したその他の独占協定 −と列挙された。さらに、事業者とその取引相手方が以下の独占協定を締結することを禁止(14条)。これは【1】第三者への再販売商品の価格を固定すること 【2】第三者への再販売商品の最低価格を限定すること 【3】独占禁止執行機関が認定したその他の独占協定 −だが、15条で「ただし、締結した協定が以下のどれかに該当することを事業者が証明できる場合には、規定を適用しない」(15条)とし、それは【1】技術改良や新製品の研究開発のため 【2】製品の品質向上、コスト低減、効率向上のため、製品の規格・標準を統一する、または専門化分業を実行するため 【3】中小事業者の経営効率を向上させ、競争力を増強させるため 【4】省エネ、環境保護、災害救助等の社会公共利益を実現させるため 【5】不景気による販売量の著しい減少または明らかな生産過剰を緩和するため 【6】対外貿易および対外経済協力での正当な利益を保障するため 【7】法律および国務院の規定するその他の事由 −の場合と規定している。違反者については、「独占禁止執行機関は、違法行為の停止を命じ、違法所得を没収し、前年度の販売額の1%以上10%以下、締結された独占協定を実施していない場合には、50万元以下の罰金を科することができる」(46条)。

 「市場支配的地位の乱用」については、「市場支配的地位にある事業者による以下の行為を禁止」し、その市場支配的地位は、「事業者が関連市場で商品の価格、数量またはその他の取引条件を支配し、あるいはその他の事業者が関連市場に参入することを妨害し、影響を与えることができる能力をもつ市場での地位」と定義した(17条)。禁止行為は【1】不公平な高値で商品を販売、または安値で商品を購入する 【2】正当な理由なく、コストを下回る価格で商品を販売する 【3】正当な理由なく、取引相手方との取引を拒絶する 【4】正当な理由なく、取引相手方が自己、または自己が指定した事業者だけに取引を制限する 【5】正当な理由なく、商品の抱き合わせ販売を行う、または取引の際にその他の不合理な取引条件を付加する 【6】正当な理由なく、条件が同じである取引相手に対して、価格などの条件で差別待遇する 【7】独占禁止執行機関が認定したその他の市場支配的地位を乱用する行為 −と列挙している。「事業者が市場支配的地位にあると推定される」のは、【1】1つの事業者の関連市場での市場占有率が2分の1以上 【2】2つの事業者の関連市場での市場占有率の合計が3分の2以上 【3】3つの事業者の関連市場での市場占有率の合計が4分の3以上 −どれかに1つに該当する場合とされている(19条)。この違反者には、「独占禁止執行機関は、違法行為の停止を命じるとともに、違法所得を没収し、前年度の販売額の1%以上10%以下の罰金を科する」(47条)。

 「事業者集中」に関して、事業者集中とは、【1】事業者の合併 【2】事業者の持分または資産の取得による他の事業者の支配権の取得 【3】事業者の契約などによる他の事業者に対する支配権の取得、または他の事業者に対する決定的な影響力の行使 −の3点を指す(20条)。事業者集中が国務院の規定する申請基準に達する場合、事業者は独占禁止執行機関に対して事前に申請しなければならず、申請をしていない場合には、集中を実施してはならない(21条)。ただし、事業者集中が【1】集中に参加する1つの事業者がその他の各事業者の50%以上の議決権をもつ株式または資産を有している 【2】集中に参加する各事業者の50%以上の議決権をもつ株式または資産が、集中に参加しない同一の事業者により所有されている −のいずれか1つに該当する場合には、独占禁止執行機関に申請しなくてもよい(22条)。

  31条に「外資が国内企業を買収、またはその他の方法により事業者集中に参加し、国家安全にかかわる場合には、本法の規定により事業者集中を審査するほか、国の関連規定に従って国家安全審査を行わなければならない」との規定があるが、これは事実上、外資の参入障壁になる。違反者には、「集中実施の停止、期限内での株式または資産の処分、期限内での営業譲渡および集中前の状態へ回復するその他の必要な措置をとることを命じるものとし、50万元以下の罰金を科することができる」(48条)。

  「行政権力乱用による競争の排除・制限」(いわゆる行政独占)についてでは、「行政機関および法律、法規により授権された公共事務管理の職能をもつ組織は、行政権力を乱用して、単位または個人に対し、その指定する事業者の提供する商品を経営、購入、使用するよう制限、または形を変えて制限してはならない」(32条)と規定、「行政権力を乱用して、商品の地域間の自由な流通を妨害してはならない」(33条)などと定めた。

  独占禁止執行機関が法に基づき実施する審査や調査に対して、関連の資料、情報の提供を拒絶した場合、虚偽の資料や情報を提供した場合、証拠を隠匿、破棄、移転した場合、またはその他調査を拒絶し妨害する行為があった場合、独占禁止執行機関は、その是正を命じ、個人に対しては2万元以下の罰金、法人に対しては20万元以下の罰金を科することができる(52条)。最後の「付則」では、「事業者が知的財産権に関する法律、行政法規の規定に従って知的財産権を行使する行為については、本法を適用しない。ただし、事業者が知的財産権を乱用し、競争を排除、制限する行為については本法を適用する」(55条)との規定がある。



石田 哲夫

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