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遺言書パソコン作成の手順|財産目録の作り方と注意点

高齢や手の不自由といった理由で自書に負担を感じる方から、パソコンを使って準備を進めたいというご相談も少なくありません。人がいつ亡くなるかは誰にも分かりませんから、早めに手順を確認しておくと安心です。「遺言書はパソコンで作成できるのか」という制度そのものの疑問については、別記事「遺言書はパソコンで作成できる?有効な範囲と法改正の動きを解説」で詳しく解説していますので、まずは制度を確認したい方はそちらもあわせてご覧ください。この記事では制度の説明よりも、実際に手を動かす際の手順と注意点に絞って解説します。

「遺言書をパソコンで作成したい」と考えたとき、実際にどう作業を進めればよいかを、司法書士事務所リーガルステーションが手順に沿って解説します。結論からいうと、自筆証書遺言は本文の自書が必須で、パソコンで作成できるのは財産目録の部分に限られます。この記事では、遺言の方式を決めるところから、財産目録をパソコンで作る具体的な方法、本文の下書きにパソコンを使うときの注意点、作成をサポートするツールの使い方、完成後の保管までを、順を追って整理します。

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司法書士 田中良太

遺言書をパソコンで作成する4つのステップ

遺言書をパソコンで作成する4つのステップ

パソコンを活用して遺言書を用意する場合、大まかに次の4つのステップで進めます。どの方式を選ぶかによって、パソコンを使える範囲や手続きの厳格さが変わってくるため、まず方式を決めることが最初の分かれ道になります。

  • ステップ1: 遺言の方式(自筆証書遺言/公正証書遺言/秘密証書遺言)を決める
  • ステップ2: 財産の内容を整理し、パソコンで財産目録を作る
  • ステップ3: 遺言書の本文を作成する(方式に応じた作成方法に従う)
  • ステップ4: 署名・押印し、保管方法を決める

遺言者が自ら手軽に作成できるのは自筆証書遺言ですが、本文は自書が必須のため、パソコンで書ける範囲はステップ2の財産目録に限られます。本文までパソコンでまとめて済ませたい場合は、公証人が口述内容を筆記する公正証書遺言や、本文をパソコンで作成しても有効な秘密証書遺言を検討することになります。それぞれの方式の要件・注意点は次章以降で順に説明します。

ステップ2|財産目録をパソコンで作る具体的な方法

自筆証書遺言でパソコンを使って書ける範囲は財産目録に限られますが、実際の作り方にはいくつかの決まりがあります。この方法が使えるのは、2018年に成立した「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」により自筆証書遺言の方式(民法968条)が緩和され、2019年1月13日以降に作成する財産目録に限って自書によらない方法が認められるようになったためです。財産の内容や量に応じて、次のいずれかの方法、またはこれらを組み合わせて作成します。

表計算ソフトで作成する

エクセルなどの表計算ソフトを使うと、不動産・預貯金・有価証券といった財産の種類ごとに一覧化しやすく、価額の計算や合計もしやすくなります。法務局のホームページで公開されている雛形を参考に、財産の種類・所在・数量・価額を記載する列を用意して作成すると、書き漏れを防げます。

通帳や登記事項証明書のコピーを添付する

預貯金は通帳の写し、不動産は登記事項証明書の写し、株式や投資信託などの有価証券は取引残高報告書の写しをそのまま財産目録として添付する方法も認められています。この場合、コピーの余白に手書きで補足を書き込んでも構いません。財産が少ない場合や、パソコンの操作に慣れていない場合は、自書で目録を作成しても構いません。自宅にパソコンがない、あるいは自分で作成するのが難しい場合は、第三者に代筆してもらう方法もあります。

目録が完成したら必ずやること

パソコンなど自書以外の方法で財産目録を作成した場合、次の点を必ず確認してください。

  • 遺言書の本文と財産目録は別のページにする
  • 財産目録は毎ページ(裏面にも記載がある場合は両面)に遺言者本人の署名と押印をする
  • 書き間違いがあった場合は訂正ではなく、そのページ全体を作り直す
  • 本文で目録を指定する書き方(「別紙目録記載の不動産」など)と、目録の表題を一致させておく

本文と目録をホチキス等で綴じたり契印を押したりすることは法律上の必須要件ではありませんが、差し替えなどの不正を防ぎ、一体の書類であることを示す実務上の工夫として、契印をしておくと安心です。財産目録には、誰にどの相続財産を相続させる、あるいは誰を受遺者として遺贈するかが明確に分かるように記載してください。記載が曖昧だと、相続人の間で遺産分割協議の際に争いや紛争のもとになることがあります。円満な相続のために、誰を遺言執行者に指定するかもあわせて記載しておくと、亡くなった後の手続きがスムーズに進みます。特定の相続人の遺留分を侵害する内容になっていないかなど、内容面に不安がある場合は、司法書士や弁護士が所属する法律事務所に相談しておくと安心です。

ステップ3|本文の下書きにパソコンを使うときの注意点

ステップ3|本文の下書きにパソコンを使うときの注意点

自筆証書遺言を選んだ場合、本文はパソコンで下書きだけを作り、最終的には自分の手で書くことになります。この「下書きにパソコンを使う」こと自体は問題ありませんが、次の点には注意してください。

  • 下書きの構成整理や文字数の調整にパソコンを使うのは自由だが、最終的に提出する本文は必ず自書で書き写す
  • パソコンで作った下書きをそのまま印刷して押印しただけのものを提出しない(本文全体が無効になる)
  • 全文・日付・氏名をすべて自書し、押印する(押印に使う印鑑は実印である必要はなく認印でも構わないが、消えやすいスタンプ印は避ける)
  • 書き間違えた場合の訂正方法は、どこをどう直すかまで民法で厳格に決まる仕組みになっているため、簡単な誤字であっても訂正ではなく書き直したほうが無難(このルールに従わない訂正は無効になることがある)

長文になる場合、下書きの段階で誰にどの財産を遺すか、付言事項として家族へのメッセージを盛り込むかどうかを整理しておくと、清書の際に書き直しの手間を減らせます。なお付言事項は法律上の効力を持ちませんが、本文の一部として自書が必要です。清書した本文と目録がそろったら、二重に内容を確認したうえで、遺言者本人が日付・氏名を自書し押印してください。

方式によって手続きの厳格さが変わる

前述のとおり、選んだ方式によって求められる手続きの厳格さが異なる点も押さえておくと安心です。

自筆証書遺言|自分で完結できる分、様式不備に注意

証人や公証人の関与なしに、自分だけで作成できる方式です。民法が定める要件(全文・日付・氏名の自書と押印)を1つでも欠くと形式(様式)不備として無効になるため、パソコンで下書きを作ってから清書する場合も、清書後に要件が満たされているか必ず見直してください。自宅で保管すると紛失・改ざん・偽造のリスクがあるため、法務局の自筆証書遺言書保管制度の利用も検討してください(保管の詳細は次章)。

公正証書遺言|公証人が口述を筆記するため厳格だが不備が起きにくい

遺言者が公証役場で遺言の内容を口述し、公証人がその内容を筆記して作成する方式です。証人2人以上の立会いが必要で、遺言者本人であることの本人確認や、真意に基づく意思であることの確認が厳格に行われます。作成された原本は公証役場に保管されるため、紛失・改ざんのリスクがほとんどなく、家庭裁判所の検認も不要です。パソコンを直接操作するのは公証人側になりますが、事前に用意した財産目録やメモをパソコンで整理して持ち込むと、口述がスムーズに進みます。

秘密証書遺言|本文はパソコンで作成できるが検認が必要

本文をパソコンで作成しても有効な方式です。ただし遺言者本人が証書に署名・押印(捺印)したうえで封筒に入れて封印し、公証人1人と証人2人以上の前に、その証書が自分の遺言書であることと筆者の氏名・住所を申述する必要があります。公証人は内容を確認しないため、第三者が本人になりすます形での代筆や内容の不備があっても気づかれないまま成立してしまう可能性があり、遺言者が亡くなった後は家庭裁判所の検認手続きが必要です。厳格な手続きを踏む割に内容面のチェックが働きにくい方式のため、本文の作成には特に慎重さが求められます。

パソコンでの作成をサポートするツールを使うときの注意

パソコンでの作成をサポートするツールを使うときの注意

財産目録の作成や本文の下書きには、表計算ソフトのほか、遺言書の作成を支援するソフトやオンラインサービス、法務局や士業事務所が公開している雛形(ひな形)を利用する方法もあります。こうしたツールは、記載すべき項目の抜け漏れを防ぐチェックリストとして使う分には便利ですが、次の点に注意してください。

  • 雛形やテンプレートの内容が、自分の家族構成・財産状況にそのまま当てはまるとは限らない
  • オンラインサービスが出力した文面の法的な有効性を、サービス提供者が保証しているとは限らない
  • 相続人の遺留分や、二次相続まで見据えた財産の分け方など、内容面の判断はツールでは代替できない

特に相続財産が高額になる場合や、相続人の数が多く遺産分割で争いが起きやすいと予想される場合は、ツールで下書きを作ったうえで、司法書士や弁護士が所属する法律事務所に内容を確認してもらうと安心です。

ステップ4|完成後の保管方法

遺言書が完成したら、保管方法を決めます。生前のうちに保管方法まで決めておくことで、遺言者が亡くなった後の家族の手続きの負担を軽くできます。自筆証書遺言を自宅で保管する場合、紛失・改ざん・偽造のリスクが残るため、法務局の自筆証書遺言書保管制度の利用をおすすめします。この制度を利用するには、遺言者本人が法務局へ出向く必要があり、用紙のサイズや余白など様式面のチェックを受けたうえで、原本が法務局に保管されます。保管制度を利用した自筆証書遺言は、遺言者が亡くなった後の家庭裁判所の検認が不要になる点もメリットです。公正証書遺言は原本が公証役場に保管されるため、別途の保管手続きは不要です。

パソコンでの作成でよくある無効・不備の原因

パソコンを使った作成で特に起こりやすい無効・不備の原因を整理します。作成後の見直しのチェックリストとしても活用してください。

  • 自筆証書遺言の本文をパソコンで作成し、清書せずにそのまま提出してしまう
  • 全文・日付・氏名のいずれかの自書、または押印が漏れている
  • 財産目録の署名・押印が一部のページだけで、他のページに漏れている(両面に記載がある場合は裏面への押印漏れも多い)
  • 書き間違いを訂正の決まり(変更した場所への署名・押印など)に従わず、修正液や二重線だけで直してしまう
  • 目録の記載と本文の指定(別紙目録記載の不動産、など)が一致していない

今後の法改正の動き

遺言の方式は社会の変化にあわせて見直しが進められています。2026年1月、法務大臣の諮問機関である法制審議会の部会が、パソコンなどのデジタル機器で作成した遺言のデジタル・データを法務局が保管する「保管証書遺言」制度の導入などを盛り込む要綱案をまとめ、その後、政府はパソコンやスマートフォンでの遺言のデジタル化・作成を認める民法改正案を閣議決定しています。

本人確認を厳格に行う趣旨から、法務局の職員の前で口述することが原則とされる見通しですが、ウェブ会議の利用を認める案も検討されています。ただし、これらはあくまで法案の段階の内容で、今後の国会審議や世論の動向によって内容が修正される可能性があります。義務化されるものではなく、現行制度に上乗せする形での検討です。

最新の施行時期や内容は、法務省の公式サイトやe-Govのパブリックコメント情報でご確認いただくか、司法書士など専門家にお問い合わせください。

まとめ|パソコンでの遺言書作成に不安があればご相談ください

パソコンを使って遺言書を用意する場合、方式を決める→財産目録をパソコンで作る→本文を作成する→署名・押印して保管する、という4つのステップで進めます。財産目録は表計算ソフトや通帳・登記事項証明書のコピーで作成でき、本文は自筆証書遺言であれば自書が必須です。パソコンで下書きを作ること自体は問題ありませんが、清書や署名・押印、保管方法まで含めて要件を満たしているか、作成後に必ず見直してください。ご自身の財産状況や家族構成に合わせて、どの方式を選ぶべきか、財産目録の書き方や内容面に不安がある場合は、司法書士事務所リーガルステーションまでお気軽にご相談ください。

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