遺言作成は銀行に頼める?遺言信託の内容・費用と司法書士に依頼する場合との違い
「遺言作成 銀行」と検索する方の多くは、遺言書の作成やその後の手続きを銀行に任せられるのか、銀行が案内する遺言信託というサービスがどのようなものなのかを知りたいと考えています。司法書士事務所リーガルステーションが、銀行の遺言信託でできること・できないこと、費用の目安、司法書士に依頼する場合との違いを整理して解説します。
結論からいうと、銀行の遺言信託は公正証書遺言の作成サポートから保管、相続開始後の遺言執行までを長期にわたって任せられる便利なサービスですが、法律上の効力そのものは自分で作る公正証書遺言と変わらず、費用は専門職に依頼するより高くなりやすい傾向があります。資産を次の世代へ承継し、家族に想いを遺す・のこす手段として仕組みと費用を理解したうえで、司法書士など他の依頼先とも比較して選ぶことが大切です。

結論|銀行の遺言信託は「公正証書遺言+保管・執行の周辺サービス」

銀行が案内する遺言信託は、信託法が定める「遺言による信託」という法律用語としての意味とは異なり、遺言書の作成支援・正本の保管・相続発生後の遺言執行という3つの周辺サービスをまとめた金融商品としての名称です。遺言そのものの方式は公証役場で作成する公正証書遺言を用いるのが一般的で、銀行が遺言者に代わって法的な効力を持つ遺言そのものを作ってくれるわけではありません。都市銀行だけでなく信託銀行が窓口になっているケースも多く、銀行がこうした信託業務を扱えるのは「金融機関の信託業務の兼営等に関する法律」に基づき信託兼営の認可を受けているためです。
「信託」という言葉から専門的な資産運用を連想しがちですが、実際に遺言者が銀行と契約するのは、遺言者の意思を確実に反映した遺言書の作成をサポートしてもらい、正本を預かってもらい、亡くなった後の相続手続き(遺言執行)を任せる、という内容です。名義変更や換金といった実務を長期にわたって任せられる安心感がある一方で、費用や対応範囲には司法書士などの専門職と異なる特徴があります。
民法が定める遺言の方式には自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の3つがありますが、銀行の遺言信託が前提とするのは公正証書遺言です。自分で書く自筆証書遺言は保管・執行の対象外としている銀行がほとんどで、自筆証書遺言を選ぶ場合は法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用するのが一般的です。
銀行の遺言信託でできること|3つのサービス
銀行が提供する遺言信託は、大きく分けて次の3つのサービスで構成されています。
- 遺言書作成のお手伝い:推定相続人や法定相続人以外への遺贈の希望を確認し、財産目録の整理を手伝いながら、公正証書遺言の原案(文案)を一緒にまとめる
- 遺言書(正本)の保管:公証役場で作成した公正証書遺言の正本を銀行が預かり、遺言者の氏名や財産の異動がないかを毎年照会する
- 遺言執行:遺言者が亡くなると、遺言執行者に就任(就職)したことを相続人へ通知し、遺言の内容を開示したうえで、戸籍謄本・除籍謄本を収集して相続人を確定し、預金口座の解約・払戻しや株式・債券など有価証券の名義変更・換価を行い、遺言の内容どおりに相続人・受遺者へ配分・交付する
公正証書遺言そのものは、遺言者本人が公証役場に出向き、証人2人以上の立ち会いのもとで公証人に内容を口述して作成します。公正証書遺言には原本・正本・謄本の3種類の書面があり、公証役場に保管される原本とは別に、銀行は正本を長期間預かる仕組みで、相続人が内容を確認する際は謄本の交付を受けます。作成した遺言は日本公証人連合会の遺言検索システムにも登録されるため、相続人はどの公証役場からでも遺言の有無を照会できます。
2019年の民法改正で遺言執行者の権限が明文化され、遺言執行者は相続財産の処分に関する行為を単独で行えるようになりました。相続人が複数いて遺産分割協議が必要になるケースや、法定相続分と異なる配分を希望するケース、住宅ローンなどの債務も含めて整理したいケースでは、原案作成の段階から司法書士や税理士にも相談しておくと安心です。家族への感謝を伝える付言事項を書き添えたい場合や、契約後に内容を見直して中途解約したい場合の扱いも、あわせて確認しておきましょう。
銀行の遺言信託にかかる費用の目安

銀行の遺言信託は、契約時・保管中・執行時のそれぞれの段階で費用がかかる仕組みが一般的です。金額は銀行や財産の内容によって差があるため、あくまで目安として捉えてください。
- 契約時の基本手数料(消費税込):公正証書遺言の作成サポートを申し込む際にかかる費用で、数十万円程度からと設定している銀行が多い
- 保管料:正本を預かってもらう期間中、毎年数千円から2万円程度の保管料がかかる
- 遺言執行報酬:相続開始後、遺言執行者としての報酬で、相続財産の評価額に一定の料率を掛けて計算され、最低額が100万円前後からと定められていることが多い
遺言執行報酬は、相続税評価額による執行対象財産の額に料率を乗じて計算するのが一般的な方式です。たとえば相続財産の評価額が1億円程度であれば、料率を乗じた報酬額が最低金額の100万円前後を上回る水準になることが多く、財産の評価額が3億円、あるいは10億円を超えるような規模になると、報酬額も数百万円単位に膨らむことがあります。財産が少額でも最低金額が設定されているため、相続財産の総額によっては割高に感じられることもあります。実際の料率や最低金額は銀行ごとに異なるため、契約前に見積りを取り、必ず各行の公式サイトや窓口で最新の手数料をご確認ください。なお、相続税の申告が必要な場合、銀行は申告書の作成までは行わないため、別途税理士へ依頼する必要があります。
銀行に依頼するメリット
銀行の遺言信託を利用するメリットとしては、次のような点が挙げられます。
- 全国に店舗網を持つ銀行が長期にわたって遺言書の保管と照会を続けてくれるため、遺言者本人が高齢になっても管理の負担が少ない
- 預貯金や有価証券などの資産運用に関する相談を、遺言の相談とあわせて同じ窓口で受けられる
- 遺言執行の実務(財産の名義変更・換金・相続人への分配や交付)を専門部署がまとめて代行してくれる
遺言者本人が高齢で、生前のうちに長期間にわたる保管や定期的な照会を家族以外の第三者に任せておきたい場合、全国規模の銀行の体制は安心材料になります。配偶者や長男など特定の推定相続人に多くの財産を遺したい場合や、法定相続人以外の孫・お世話になった第三者に財産を遺贈したい場合も、原案作成の相談時に希望を伝えておくと想いを反映しやすくなります。
銀行に依頼する際の注意点・デメリット
一方で、銀行の遺言信託を選ぶ前に知っておきたい注意点もあります。
- 遺言執行報酬をはじめとする費用が、司法書士や弁護士など専門職に依頼する場合より高くなりやすい
- 相続人の間で遺産分割をめぐる争いが生じている場合、銀行が遺言執行者への就職を辞退したり、就職後に家庭裁判所の許可を得て辞任したりすることがある(弁護士資格を持たない銀行の担当者は、法律的な紛争解決そのものには関与できない)
- 遺留分の主張や相続人の廃除など、相続人の身分や権利関係に踏み込む法律的な判断・助言は基本的に行われない
- 認知や未成年後見人の指定といった財産以外の身分行為は、遺言執行の対象に含まれないことが多い
銀行はあくまで金融機関であり、弁護士資格を持たない担当者が個別の法律相談に応じることはできません。遺留分を侵害していないか、相続人の廃除に該当するかといった判断が必要な内容は、契約前に司法書士や弁護士など専門家に確認してもらうことをおすすめします。
司法書士に依頼する場合との違い
同じように遺言書作成をお手伝いする専門職として、司法書士に依頼する方法もあります。銀行の遺言信託との主な違いは次のとおりです。
- 費用:司法書士への依頼は、銀行の遺言信託より初期費用・執行報酬とも抑えられる傾向がある
- 対応範囲:司法書士は公正証書遺言の原案作成のサポートに加え、不動産の相続登記(名義変更)や必要書類の収集まで一貫して対応できる
- 紛争時の対応:相続人間で遺産分割の争いが予想される場合も、司法書士が提携する弁護士と連携しながら手続きを進められる
- 相談のしやすさ:地域の司法書士事務所であれば、契約後も顔の見える関係で継続的に相談しやすい
特に不動産の相続登記(名義変更)は2024年4月から義務化されており、遺言執行とあわせて登記事項証明書の取得から登記手続きまで任せられる司法書士に依頼すると、手続きがスムーズに進みやすくなります。登録免許税や司法書士報酬が別途必要になる点は銀行に遺言信託を依頼した場合も変わらないため、銀行の遺言信託を契約したあとに、実際の相続登記だけ別途司法書士へ依頼するケースも少なくありません。なお、遺言書の原案作成だけであれば行政書士に依頼する方法もありますが、不動産の相続登記は司法書士でなければ対応できません。
どちらに依頼すべきか|銀行と司法書士の向き不向き

銀行の遺言信託と司法書士への依頼、どちらが向いているかは、財産の内容や家族構成によって変わります。
- 銀行が向いている人:資産運用の相談も一体で任せたい、遠方に住む相続人が多く長期の保管・照会体制を重視したい
- 司法書士が向いている人:費用を抑えたい、不動産の名義変更まで一括で任せたい、相続人間で遺産分割の意見の相違が予想される
どちらの依頼先を選ぶ場合も、まずは推定相続人と財産の内容を整理し、複数の依頼先で見積りや対応範囲を比較してから決めることが、遺言作成で後悔しないための近道です。
まとめ|遺言作成の依頼先に迷ったらご相談ください
銀行の遺言信託は、公正証書遺言の作成サポートから正本の保管、相続開始後の遺言執行までを長期にわたって任せられるサービスですが、法律上の効力は自分で作る公正証書遺言と変わらず、費用は専門職に依頼するより高くなりやすい傾向があります。大切な資産を家族へ確実に引き継ぐためにも、相続人間で遺産分割の争いが予想される場合や、不動産の名義変更まで一括で任せたい場合は、司法書士への依頼も選択肢に入ります。
円満な遺産相続につなげ、円滑に手続きを進めるためにも、遺言作成の依頼先としてどちらが向いているか、費用や対応範囲に迷った場合は、司法書士事務所リーガルステーションまでお気軽にご相談ください。
