遺言書は自動作成できる?できることとできないこと
「遺言書自動作成」と検索する方は、質問に答えるだけで遺言書が仕上がるサービスを使ってみたいけれど、それだけで本当に完成するのか、法的に問題はないのかを知りたいと考えていることが多いようです。司法書士事務所リーガルステーションが、自動作成でできること・できないこと、安全に使うための注意点を整理して解説します。
結論からいうと、自動作成でできるのは財産の整理や本文の下書き作成までで、遺言書として効力を持たせる手続き(自書、証人・公証人の関与など)は別途必要です。具体的なアプリの種類や比較は別記事「遺言書作成アプリは使える?」、ChatGPTなど生成AIチャットの活用可否は「遺言書作成にAIは使える?」でも解説していますので、あわせてご覧ください。

結論|自動作成でできるのは「下書き」まで、効力を持たせる手続きは別
民法968条が定める自筆証書遺言の要件は、遺言者本人が遺言書の全文・日付・氏名を自書し、押印することです。自動作成サービスがどれだけ精度の高い文章を作っても、それを印刷してそのまま提出した本文は自書の要件を満たさず、遺言としての効力を持ちません。パソコンで作った下書きを手書きに写さず提出するのと同じで、「自動で作られた文章」であっても最終的には自分の手で紙に書き写すという手順は省略できません。
一方で、2019年1月13日以降に作成する財産目録に限っては、自書によらずパソコン等で作成する方法が認められています。自動作成サービスで財産の一覧や文案を整理し、それをそのまま財産目録としてまとめる、という使い方であれば制度上の対象に含まれます。つまり自動作成の立ち位置は、遺言書そのものを完成させる主体ではなく、遺言者本人の意思を書面にする作業を助ける道具という位置づけになります。
遺言書の自動作成とはどんな仕組みか
「自動作成」と呼ばれるサービスの多くは、画面の質問にチャットボット形式や入力フォーム形式で答えていくと、その回答をもとに遺言書の草案や財産目録が自動で組み立てられる、という仕組みです。生成AIのように文章そのものを一から作らせるタイプもあれば、あらかじめ用意された条文のひな形に入力内容を当てはめるだけの、AIを使わない仕組みのサービスもあります。画面の案内に沿う形で入力するだけで、所要時間は数分程度で下書きが完成するものが多く、遺言書を残す必要があるかどうか、あなたに当てはまる項目をチェックするだけで判定してくれる簡易診断機能を備えるサービスもあります。入力を中断しても、続きから再開できるようメール通知でお知らせしてくれる仕組みのものもあります。
続柄ごとの相続人情報と、預貯金・有価証券・不動産といった財産の内容を入力すると、「相続させる」「遺贈する」といった法律上の文言の使い分けを自動で判定してくれるものもあり、専門知識がなくても書き方に迷いにくいのが自動作成の利点です。内容に納得できなければ、費用がかからない範囲であれば何度でも入力をやり直して草案を作り直せる点も、紙に手書きする方式にはない手軽さといえます。こうしたサービスは、相続を専門に扱う税理士法人や司法書士・行政書士などの士業法人、金融機関が母体となって無償または有償で提供していることが多く、士業法人が運営に関わっているサービスは、専門家の監修のもとで内容が作られている分、専門性という安心材料の一つになります。終活の一環として、まずは自動作成サービスで現状を整理してみたいという使い方でも構いません。無料の範囲でどこまで使えるか、有料プランとの違いは別記事「遺言作成アプリは無料で使える?」で詳しく解説していますので、費用面が気になる方はあわせてご確認ください。
自動作成でできること

自動作成サービスをうまく使うと、次のような準備がスムーズに進みます。
- 預貯金の口座、株式などの有価証券、不動産、取引のある金融機関などの財産を、相続人情報とあわせて画面に入力し、一覧に整理する
- 通帳や登記事項証明書など必要書類の収集を、チェックリスト機能で漏れなく進める
- 誰に何をどれくらいの割合で引き継ぐか、分け方の配分を考えながら文案・草案のたたき台を自動で作る
- 遺言執行者の指定文言や、家族へのメッセージとなる付言事項(法律上の効力は持たないが、想いを伝える一文)のたたき台を提案してもらう
- 記載すべき項目に抜け漏れがないか、チェックリストとして確認する
- 作成した草案や財産目録をPDF等の書類として保存し、あとから読み返す・作り直す
専門知識がなくても遺言書作成の第一歩を踏み出しやすいことが、自動作成サービス最大の利点です。
自動作成だけでは完結しないこと・注意点

便利な自動作成サービスですが、次のような点は自動作成だけでは完結しません。
- 自筆証書遺言の本文は、自動で作られた文章であっても最終的に遺言者本人が紙に書き写す必要がある。清書後に書き間違いに気づいても、画面上の文字を消す操作のようには直せず、民法は変更した場所を示して署名・押印するといった厳格な訂正方法を定めており、このルールに従わない訂正は様式不備として扱われ、その部分だけでなく遺言全体が無効になることもあるため、簡単な修正でもページごと作り直したほうが無難
- 遺言者本人であることの確認や、なりすまし・偽造・隠匿を防ぐための証人・公証人の立ち会いは、自動作成では代替できない
- 相続人の遺留分を侵害していないか、推定相続人の廃除や特別受益、内縁のパートナーへの遺贈など、家族構成が複雑な場合の個別事情は自動判定だけでは十分に汲み取れない
- 自動作成サービスが出力した文章の法的な正確性を、サービス提供者が保証しているとは限らない
- 記載が曖昧なまま自動生成された文章を使うと、かえって相続人間の遺産分割協議で揉める原因になる
自動作成サービスが出した原案を鵜呑みにして、内容の確認をせずにそのまま本文や財産目録として使うことは避けてください。第三者による代筆と同じように、本人の真意が反映されているかを誰も保証してくれない点は自動作成でも変わりません。特に相続財産に不動産や自社株式など評価額の算定が難しいものが含まれ、相続税の申告が必要になりそうな場合は、司法書士や弁護士が所属する法律事務所に加えて税理士にも早めに相談しておくと安心です。また、サービスの終了やアップデートの停止によって保存したデータにアクセスできなくなるリスクもあるため、作成した草案や財産目録は自分の手元にもPDF等で保存しておくと安心です。
自動作成を安全に使うための3ステップ

自動作成サービスを遺言書作成に取り入れる場合は、次の順番で進めると安全です。
- ステップ1: 自動作成サービスに財産の内容を入力し、財産目録の整理と本文の原案・下書きを作る
- ステップ2: 自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言のどの方式を選ぶかを決め、その方式が求める作成手順(自書、公証役場への出向きと口述、証人の立ち会い等)に沿って清書・手続きを進める
- ステップ3: 内容面(遺留分の配慮、財産の分け方、遺言執行者の指定など)を司法書士や弁護士など専門家に確認してもらう
自書の負担そのものをなくしたい場合は、公証人が口述内容を筆記する公正証書遺言を選ぶと、結果的に自動作成で整理した内容をそのまま活かしやすくなります。公証役場に出向く当日は、運転免許証などの身分証明書と実印・認印といった印鑑、その他必要書類を持参し、自動作成サービスで整理した財産の内容や分け方の希望をもとに公証人が原案を読み上げる形で内容を確認します。遺言者本人と証人2人以上の立会人がその場で誤りがないか確認したうえで、それぞれ署名・押印して完成し、正本と謄本を受け取ります。公証人は公正証書の作成を担う公務員で、私文書とは異なり原本は公的に公証役場で保管されるため、遺言者本人が死亡した後でも家庭裁判所の検認が不要です。司法書士事務所リーガルステーションでは、自動作成サービスで整理した内容をもとに公証役場との打ち合わせへの同行や、内容面のアドバイスにも対応しています。
今後の法改正の動き|自動作成・デジタル化がさらに広がる可能性
遺言の方式は社会の変化にあわせて見直しが進められています。2026年1月、法務大臣の諮問機関である法制審議会の部会が、パソコンなどのデジタル機器で作成した遺言のデジタル・データを法務局が保管する「保管証書遺言」制度の導入などを盛り込む要綱案をまとめ、その後、政府はパソコンやスマートフォンでの遺言のデジタル化・作成を認める民法改正案を閣議決定しています。本人確認を厳格に行う趣旨から、法務局の職員の前で口述することが原則とされる見通しで、自動作成サービスが生成した文章をそのまま登録できるようになるわけではありません。
ただし、これらはあくまで法案の段階の内容で、今後の国会審議や世論の動向によって内容が修正される可能性があります。最新の施行時期や内容は、法務省の公式サイトやe-Govのパブリックコメント情報でご確認いただくか、司法書士など専門家にお問い合わせください。
まとめ|自動作成は下書きの道具、仕上げと内容確認は専門家に相談を
遺言書の自動作成サービスは、財産の整理や文章の下書きを手軽に進められる便利な道具ですが、自筆証書遺言の本文は自書が必須で、法的な正確性や個別の家族事情までは保証してくれません。前述のとおり、財産をどう分ける、誰に何を渡すといった判断や、遺産相続をめぐる家族の事情に配慮した書面に仕上げる作業は、自動作成に任せきりにはできません。最終的に紙にペンで自書する場面は、自動作成サービスを使っても遺言者本人が担う必要があります。
遺言者本人が有する財産の内容や家族への想いを正確に反映し、円満な相続につなげるためにも、自動作成で下書きを作ったら方式を決めて手続きを進め、最後は司法書士や弁護士など専門家に内容を確認してもらう、という順序を守ることが安全な遺言書作成につながります。自動作成をどこまで活用してよいか、内容面に不安がある場合は、司法書士事務所リーガルステーションまでお気軽にご相談ください。
