遺言書作成シートの書き方|記載項目と雛形の選び方
「遺言書作成シート」と検索する方は、何をどう書けばよいか分からないまま白紙から遺言書を書き始めるのは不安で、まず考えを整理するための書き込み式のシートやひな形を探していることが多いようです。司法書士事務所リーガルステーションが、遺言書作成シートの位置づけと記載しておきたい項目を解説します。
結論からいうと、遺言書作成シートは遺言の内容を整理するための下書き用の書面であり、それ自体に法律上の効力はありません。財産目録をパソコンで作る具体的な方法は別記事「遺言書パソコン作成の手順」、質問に答えるだけで下書きができるサービスは「遺言書自動作成は使える?」でも解説していますので、あわせてご覧ください。

遺言書作成シートとは|正式な遺言書ではなく下書き用の整理シート
遺言書作成シートとは、遺言者が誰にどの財産をどれだけ遺すかを書き込みながら整理するための、質問形式・記入欄形式の書面のことです。法務局や司法書士事務所、金融機関などが無料で配布している場合があり、財産の一覧や相続人の情報、付言事項の下書きなどをあらかじめ書き出しておくことで、実際に遺言書の本文や財産目録を作成する際の抜け漏れを防ぐ役割があります。
注意したいのは、このシート自体に記入しただけでは遺言としての効力は生じないという点です。民法が定める自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言のいずれかの方式の要件を満たして初めて、法的に有効な遺言書になります。シートはあくまで内容を整理するための準備段階の書面であり、完成した遺言書そのものと混同しないようにしてください。
遺言書作成シートの入手方法|法務局の様式と民間の雛形
法務局が公開している遺言書の様式
法務局の自筆証書遺言書保管制度では、遺言書の様式について用紙サイズや余白のミリメートル単位まで細かい指定があります。用紙はA4サイズの用紙を用い、上部5ミリメートル以上・下部10ミリメートル以上・左側20ミリメートル以上・右側5ミリメートル以上の余白を確保し、各ページに通し番号を記載する必要があります。法務省のホームページでは、この様式に沿った記載例や、自書によらない財産目録の様式の見本が公開されており、保管制度の利用を考えている場合はこの様式に沿って準備すると手続きがスムーズです。この制度を利用しておくと、遺言者本人が亡くなると、あらかじめ指定した相続人へ法務局から遺言書を保管している旨の通知が届く仕組みもあり、遺言書の存在に相続人が気づけないという事態を防げます。
民間の雛形・チェックシートを使うときの注意
司法書士事務所や弁護士事務所、銀行などが公開している遺言書作成の事前チェックシートや雛形・テンプレートは、財産の種類ごとの記載例やケース別の文例が用意されており、法務局の様式よりも書き方のイメージがつかみやすいという利点があります。一方で、雛形は一般的なケースを想定して作られているため、家族構成や財産の内容によってはそのまま当てはまらないことがあります。雛形を使う場合も、最終的な内容は司法書士や弁護士などの専門家に確認してもらうと安心です。
遺言書作成シートに記載しておきたい項目

遺言書作成シートには、遺言書の本文を書く前提として、次のような項目を書き出しておくと、内容の整理がスムーズに進みます。
整理しておきたい6つの項目
遺言者本人の氏名・住所・生年月日と、法定相続人・推定相続人の氏名・続柄・生年月日をまず書き出します。次に財産の内容を種類ごとに一覧化します。不動産は土地であれば所在・地番、建物であれば家屋番号・構造・床面積を登記事項証明書または登記簿の記載どおりに、預貯金は金融機関名・支店名・口座番号・口座名義、株式などの金融資産は証券会社名・銘柄・数量・口座番号を記載しておくと、後で財産目録を作成する際にそのまま転記できます。財産目録は自書のほか、登記事項証明書や通帳のコピーといった必要書類をそのまま添付する方法でも作成でき、自分での記入が難しい場合は第三者に代筆してもらっても構いません。シートの段階でどの資料を添付するかまで書き添えておくと準備が進めやすくなります。
- 相続人・推定相続人の氏名、続柄、生年月日
- 預貯金(金融機関名・支店名・口座番号)
- 不動産(所在・地番・家屋番号・床面積)
- 株式・投資信託などの金融資産(証券会社名・銘柄・口座番号)
- 誰に何を相続させる・遺贈するか(配偶者、内縁のパートナー、法定相続人以外の受遺者を含む)
- 遺言執行者に指定したい人、家族へ伝えたい付言事項
財産の記載が曖昧なまま本文を作成すると、遺言者が亡くなった後の遺産分割協議で相続人間の争いのもとになることがあります。特に不動産は登記事項証明書の記載と一致させ、預貯金は通帳の写しと突き合わせて、財産を特定できる書き方にしておくことが重要です。本文で「別紙目録記載の不動産を相続させる」のように財産目録を参照する書き方をする場合は、目録の表題と本文の文言を一致させておくと迷いません。
遺言書作成シートの使い方|4つのステップ
書き出したシートをもとに、実際の遺言書を仕上げるまでの流れは次の4ステップで進めます。
- ステップ1: シートに相続人・財産の内容・分け方の希望を書き出す
- ステップ2: 自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言のどの方式にするかを決める
- ステップ3: シートの内容をもとに本文(方式に応じた作成方法)と財産目録を仕上げる
- ステップ4: 署名・押印し、保管方法を決める
シートに書き出した内容がそのまま遺言書の本文になるわけではありません。特に自筆証書遺言を選ぶ場合、シートを見ながら清書することは問題ありませんが、本文は民法が定める要件に沿って遺言者本人が改めて作成する必要があります。
シートを本文に仕上げるときの注意点

自筆証書遺言を選ぶ場合、民法968条により遺言書の全文・日付・氏名は遺言者本人の自書が必須で、押印も必要です。シートに下書きした内容をパソコンで清書してそのまま提出すると、自書の要件を満たさず本文全体が無効になるため注意してください。日付は「令和〇年〇月吉日」のような、いつかを特定できない書き方では要件を満たさないとされており、年月日を明記する必要があります。
一方、2018年の民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律により自筆証書遺言の方式(民法968条)が緩和され、2019年1月13日以降に作成する財産目録に限っては自書によらずパソコン等で作成する方法が認められています。この場合も、本文とは別のページにし、財産目録の各ページ(両面に記載がある場合は裏面にも)に遺言者本人の署名と押印が必要です。押印に使う印鑑は実印である必要はなく認印でも構いませんが、消えやすいスタンプ印は避けてください。シートに書き間違いがあった場合、内容を書き直すのではなく、変更した場所を示して署名・押印するという民法が定める加除訂正の方式に従う必要があり、この方式に従わない訂正は無効になることがあります。簡単な誤字であっても、清書後に気づいた場合はそのページを書き直したほうが無難です。
方式によってシートの使い道が変わる
自筆証書遺言|シートの内容を自分の手で清書する
証人や公証人の関与なしに、遺言者が自分だけで作成できる方式です。シートで整理した相続人・財産の内容をもとに、本文は遺言者本人が全文・日付・氏名を自分の手で手書きし押印します。民法が定める要件を満たしているかを清書のたびに見直し、自宅で保管すると紛失・改ざん・偽造のリスクがあるため、法務局の自筆証書遺言書保管制度の利用も検討してください。
公正証書遺言|シートの内容を公証人との打ち合わせ資料にする
遺言者が公証役場で遺言の内容を口述し、公証人がその内容を筆記して作成する方式です。証人2人以上の立会いのもとで、遺言者本人であることの確認や真意に基づく意思であることの確認が厳格に行われます。シートに書き出した財産の内容や分け方の希望をそのまま公証人との打ち合わせ資料として持ち込むと、口述がスムーズに進みます。作成された原本は公証役場に保管されるため紛失・改ざんのリスクがほとんどなく、家庭裁判所の検認も不要です。
秘密証書遺言|本文はシートをもとにパソコンで作成できる
本文をパソコンで作成しても有効な方式です。ただし遺言者本人が証書に署名・押印したうえで封筒に入れて封印し、公証人1人と証人2人以上の前に、その証書が自分の遺言書であることと筆者の氏名・住所を申述する必要があります。公証人は内容を確認しないため、遺言者が亡くなった後は家庭裁判所の検認手続きが必要です。
シートを使ってもよくある不備

遺言書作成シートで内容を整理していても、本文に仕上げる段階で次のような不備が起きやすいので、作成後の見直しのチェックリストとして活用してください。
- 自筆証書遺言の本文をパソコンで清書し、自書の要件を満たさないまま提出してしまう
- 全文・日付・氏名のいずれかの自書、または押印が漏れている
- 財産目録の署名・押印が一部のページだけで、他のページに漏れている
- 書き間違いを民法の定める加除訂正の方式に従わず、二重線や修正液だけで直してしまう
- 不動産の地番・家屋番号や預貯金の口座番号の記載が登記事項証明書・通帳と食い違い、財産を特定できない
- 法定相続人以外への遺贈や、遺留分を侵害する内容になっていることに気づかないまま作成してしまう
まとめ|遺言書作成シートの記入に迷ったらご相談ください
遺言書作成シートは、相続人や財産の内容、分け方の希望を整理するための下書き用の書面であり、記入しただけでは法律上の効力はありません。法務局が公開している様式や、司法書士事務所・銀行が配布している雛形・チェックシートを使って内容を整理したら、自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言のいずれかの方式の要件に沿って本文と財産目録を仕上げる必要があります。
財産の特定や相続人間の遺留分への配慮など、内容面の判断はシートだけでは代替できません。円満な相続につなげるためにも、遺言書作成シートの記載項目や、ご自身の家族構成・財産状況に合わせた書き方に不安がある場合は、司法書士事務所リーガルステーションまでお気軽にご相談ください。
