
遺言公正証書作成手数料の計算方法|財産額ごとの早見表と実例
「遺言公正証書作成手数料」を調べると、公証人手数料令に基づく金額の一覧はいくつも見つかりますが、表の数字をそのまま見ても、自分のケースで実際にいくらになるのかを計算するのは簡単ではありません。特に、財産を渡す相手が複数いる場合は、一人当たりの金額ではなく「誰にいくら渡すか」ごとに手数料を計算して合算する必要があり、単純な早見表だけでは総額を見誤りやすい部分です。
この記事では、司法書士事務所リーガルステーションが、公正証書遺言の作成でかかる公証人手数料について、目的の価額ごとの早見表と、財産額別の具体的な計算実例を使って、手数料の出し方そのものを解説します。ご自身の財産額や分け方に近い例を確認しながら、総額の見通しを立てる際の参考にしてください。

公正証書遺言の手数料はどのように計算するか
公正証書遺言を作成する際の公証人手数料は、日本公証人連合会が定める公証人手数料令という政令の別表(第9条別表)に基づいて算出されます。法令で金額が決まっているため、どの公証役場に依頼しても、同じ財産額・同じ分け方であれば手数料は変わりません。
自筆証書遺言や秘密証書遺言の作成そのものには、法務局や公証役場に支払う手数料はかかりません(自筆証書遺言を法務局の保管制度に預ける場合は別途手数料が発生します)。公正証書遺言だけに公証人手数料がかかるのは、公証人が遺言者本人の意思を直接確認したうえで文案を作成し、原本を公証役場で保管するためです。そのぶん、確実に法的な効力を持つ遺言書として無効になるリスクが低く、遺言者が亡くなったあと家庭裁判所で行う「検認」の手続きも不要になるという法的なメリットがあります。
手数料の基準になるのは、遺言者の財産の総額ではなく「目的の価額」と呼ばれる、その遺言によって法定相続人や受遺者が実際に受け取る遺産の評価額です。相続人や受遺者が複数いる場合は、遺産を受け取る人ごとに目的の価額を算定し、それぞれの手数料を早見表に当てはめて合算します。この「受け取る人ごとに計算して合算する」という考え方が、手数料の総額を見積もるうえで最も間違えやすいポイントです。次の章で早見表を確認したうえで、複数人に分ける場合の計算方法を実例で見ていきます。
目的の価額に応じた公証人手数料の早見表

目的の価額に応じた基本手数料は、2025年10月の公証人手数料令改正で見直されており、以下は改正後の金額です。目的の価額が50万円以下は3000円、50万円を超え100万円以下は5000円、100万円を超え200万円以下は7000円、200万円を超え500万円以下は13000円、500万円を超え1000万円以下は20000円、1000万円を超え3000万円以下は26000円、3000万円を超え5000万円以下は33000円、5000万円を超え1億円以下は49000円が基本手数料の目安です。
目的の価額が1億円を超える場合は、超過額に応じた加算方式に変わります。1億円を超え3億円以下の部分は49000円に超過額5000万円までごとに15000円を加算した額、3億円を超え10億円以下の部分は109000円に超過額5000万円までごとに13000円を加算した額、10億円を超える部分は291000円に超過額5000万円までごとに9000円を加算した額が目安です。政令の改正により今後も金額が変わる可能性があるため、実際に手続きする際は最寄りの公証役場に最新の金額を確認してください。
相続人・受遺者が複数いる場合の計算方法
早見表の金額は「1人が受け取る財産の目的の価額」に対する手数料です。相続人や受遺者が複数いて、それぞれに異なる財産を渡す遺言を作成する場合は、人ごとに目的の価額を算定し、早見表で出した手数料を全員分合算します。同じ総財産額でも、渡す相手の人数や分け方によって基本手数料の合計は変わります。
財産をすべて1人に渡す場合
財産の全部を配偶者や長男など1人にまとめて相続させる場合は、その人の目的の価額を早見表に当てはめるだけで基本手数料が決まります。たとえば財産1000万円をすべて長男に相続させる遺言であれば、目的の価額1000万円は「500万円を超え1000万円以下」の区分にあたり、基本手数料は20000円です。
複数の相続人・受遺者に分けて渡す場合
遺産分割の内容として財産を複数人に分けて渡す場合は、受け取る人ごとに目的の価額を算定します。たとえば同じ財産1000万円を、長男と次男に500万円ずつ分けて相続させる遺言では、長男の目的の価額500万円と次男の目的の価額500万円のそれぞれが「200万円を超え500万円以下」の区分にあたり、基本手数料は13000円ずつ、合計26000円になります。同じ財産1000万円でも、1人にまとめる場合の20000円より、2人に分ける場合の26000円のほうが基本手数料は高くなる点は押さえておきたいポイントです。相続人以外の人に財産の一部を遺贈する場合も、受遺者ごとに同じ考え方で目的の価額を算定します。
手数料に加算される項目

早見表の基本手数料には、状況に応じて次の項目が加算されます。
遺言加算|財産の総額が1億円以下の場合に加わる13000円
全員分の基本手数料を合算した金額が、遺言者の財産全体の価額で1億円以下となる場合は、「遺言加算」として一律13000円が別途加算されます(2025年10月の改正前は11000円でした)。財産の総額が比較的小さいケースほど、基本手数料に対する遺言加算の割合が大きくなる点に注意が必要です。
正本・謄本の交付手数料
公正証書遺言の原本は公証役場で保管され、遺言者には正本と謄本が交付されます。書面で交付を受ける場合の手数料は用紙1枚につき300円で、財産の内容が複雑になり証書の枚数が増えるほど、この手数料も増えます。電子データでの交付に対応している公証役場では、1通あたり2500円が目安です。
公証人の出張を依頼する場合の日当・交通費
病気や高齢で公証役場に出向けない場合は、自宅や病院、施設への出張を公証人に依頼できます。この場合、基本手数料が50%加算されるほか、証人への日当とは別に公証人自身の日当(4時間以内は1万円、4時間を超える場合は2万円が目安)と、交通費の実費が加算されます。
財産額別に見る手数料総額の実例
ここまでの早見表と加算項目を踏まえて、財産額と分け方のパターン別に、公証人手数料の総額を計算してみます。数字はいずれも目安であり、実際の金額は財産の内容や公証役場によって幅があります。
財産500万円を配偶者1人に相続させる場合
目的の価額500万円は「200万円を超え500万円以下」の区分にあたり、基本手数料は13000円です。財産全体が1億円以下のため遺言加算13000円が加わり、公証人手数料の合計は26000円が目安です。
財産1000万円を長男・次男に半分ずつ相続させる場合
前章の実例のとおり、500万円ずつ2人に分ける場合の基本手数料は13000円×2人で26000円です。ここに遺言加算13000円を合わせると、公証人手数料の合計は39000円が目安になります。
財産1億円を配偶者・長男・長女の3人で均等に分ける場合
1億円を3人で均等に分けると、1人あたりの目的の価額は約3333万円となり、「3000万円を超え5000万円以下」の区分にあたる基本手数料33000円が3人分、合計99000円です。財産全体が1億円以下のため遺言加算13000円が加わり、公証人手数料の合計は112000円が目安になります。同じ1億円でも1人にまとめて相続させる場合は、「5000万円を超え1億円以下」の基本手数料49000円に遺言加算13000円を加えた62000円が目安となり、分け方によって総額が大きく変わることが分かります。
手数料のほかに必要になる実費・専門家報酬

ここまでの公証人手数料は、公証役場に支払う法定の費用です。実際にはこのほかに、次のような実費や専門家報酬が必要になります。
必要な実費は相続財産の内容によって変わります。遺言者と相続人・受遺者の関係を示す戸籍謄本、財産に不動産が含まれる場合の登記事項証明書や固定資産評価証明書(固定資産税の納税通知書や課税明細でも評価額の確認は可能です)、住民票、印鑑登録証明書(お持ちでない場合は運転免許証などの身分証明書)などの取得実費が、戸籍謄本1通450円程度から数千円程度かかります。証人2名の立ち会いも必要で、友人・知人に頼めない場合は公証役場や依頼先の事務所に紹介を依頼でき、証人1名につき5000円から1万円程度の日当が発生します。民法974条により、未成年者、推定相続人およびその配偶者・直系血族、受遺者およびその配偶者・直系血族に加えて、公証人の配偶者や四親等内の親族、公証役場の書記・使用人も証人になれないと定められている点も押さえておきましょう。
遺言の文案作成や必要書類の収集を司法書士・行政書士・弁護士に依頼する場合は、公証人手数料とは別に専門家への報酬が発生します。報酬は依頼先や業務範囲によって幅があるため、依頼先ごとの目安は別の記事で解説しています。遺言の内容を実現する遺言執行者(財産目録の作成や預貯金の解約、不動産の名義変更などを行う人)を専門家に依頼する場合も、作成時の手数料・報酬とは別に、将来の遺言執行時に執行報酬が発生する点は見落としやすいので確認しておいてください。
手数料の支払い方法とタイミング
公正証書遺言の公証人手数料は、遺言を作成する当日に、公証役場で現金で支払うのが一般的です。事前の見積もり時点では概算にとどまり、実際に必要書類がそろい目的の価額が確定した段階で、正式な金額が案内されます。財産に不動産が含まれる場合は、固定資産評価証明書や納税通知書に記載された評価額をもとに目的の価額を算定するため、これらの書類を早めに準備しておくと、見積もりから確定までの流れがスムーズです。
まとめ|公正証書遺言の手数料は「誰にいくら渡すか」で決まる
公正証書遺言の作成でかかる公証人手数料は、目的の価額に応じた基本手数料を、財産を受け取る人ごとに算定して合算し、そこに遺言加算・正本謄本の交付手数料・出張時の日当交通費などを加えて決まります。同じ財産額でも、1人にまとめて相続させるか複数人に分けるかによって総額が変わる点は、早見表だけでは見落としやすいポイントです。
手数料は政令の改正により変更される場合があるため、実際に手続きする際は最新の金額を公証役場にご確認ください。なお、財産額や相続人の関係によっては相続税や遺留分への配慮が必要になる場合があります。税額の見込みは税理士に、遺留分を含めた遺言の内容については司法書士や弁護士に確認しておくと安心です。ご自身のケースで手数料の総額を具体的に見積もりたい方は、司法書士事務所リーガルステーションまでお気軽にご相談ください。
