遺言書を勝手に作成されたらどうなる?偽造・変造の責任と対処法を解説
「遺言書 勝手に作成」と検索する方の多くは、自分以外の相続人が遺言者に無断で遺言書を作った・書き換えたのではないか、あるいは今後そのような行為をしたらどうなるのか、という不安を抱えています。結論からお伝えすると、遺言者以外の人が権限なく遺言書を作成・書き換える行為は偽造・変造にあたり、遺言そのものが無効になるだけでなく、関与した相続人は「相続欠格」として相続権を失うおそれがあります。この記事では、勝手に作成された遺言書に生じる法的なリスクと、疑いがあるときに相続人が取るべき対応を、司法書士事務所リーガルステーションが解説します。

「遺言書を勝手に作成する」とはどういう行為か

遺言書は、遺言者本人の意思に基づいて作成されてはじめて効力を持つ書面です。自筆証書遺言であれば、遺言者自身が全文を直筆で自書し、日付を記載して署名・押印することが民法上の要件とされており、第三者が代わりに本文を書いた遺言書は、この自書の要件を満たさないため無効と判断されます。「遺言書を勝手に作成する」という検索の実態は、大きく二つの場面を指していると考えられます。ひとつは、遺言者以外の人が権限なく遺言者の名前で新たに遺言書を作り上げる場面、もうひとつは、既にある遺言書の内容を遺言者に無断で書き換える場面です。民法上、どちらも「偽造」「変造」と呼ばれる行為にあたります。
偽造・変造・隠匿・破棄の違い
相続人による遺言書への不正な関与は、行為の内容によって偽造・変造・隠匿・破棄の4つに分けて説明されることが多くあります。偽造とは、遺言者が作成していない遺言書を、遺言者の名前で新たに作り上げる行為です。変造とは、遺言者が実際に作成した遺言書の内容を、本人に無断で書き換える行為です。隠匿とは、既にある遺言書の存在や内容を、他の相続人や家庭裁判所に対して隠す行為です。破棄とは、遺言書そのものを捨てる、燃やすなどして無くしてしまう行為です。いずれの行為も、相続人としての立場に重大な影響を及ぼす点は共通しています。
勝手に作成・書き換えた相続人に生じる法的な責任
相続権を失う「相続欠格」にあたる場合がある
民法891条5号は、遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿した相続人について、相続人となる資格そのものを失わせる「相続欠格」の事由として定めています。相続欠格に該当すると判断されると、その相続人は最初から相続人ではなかったものとして扱われ、法定相続分どころか遺留分も含めて相続財産を取得できなくなります。これは家庭裁判所の審判などを経て効力が生じる重い制度であり、被相続人の財産や遺産分割の話し合いに加わる資格そのものを失う点で、遺言書に手を加えたことが明らかになった場合の影響は小さくありません。相続欠格に該当するかどうかが相続人間で争われるケースも少なくなく、事実関係によって判断が分かれる事由でもあります。
遺言そのものが無効になる
遺言者以外の人が内容を書き足したり書き換えたりした部分は、遺言者の真意に基づくものではないため、その部分、あるいは遺言書全体が無効と判断される可能性があります。特定の相続人や受遺者にとって一方的に有利な内容になっている遺言書、他の相続人が見たことのない筆跡で書かれた遺言書、公証役場を通さず自宅で保管されていた遺言書などは、偽造・変造が疑われやすい典型的なパターンです。遺言が無効になれば、その遺言に基づく財産の分配は実現されず、相続人全員による遺産分割の話し合いで分け方を決め直すことになります。
刑事上の責任を問われることもある
遺言書を勝手に作成・書き換える行為は、相続上の不利益にとどまらず、有印私文書偽造罪など刑法上の犯罪に該当する可能性もあります。私文書である自筆証書遺言を偽造・変造した場合の刑事責任の有無は個別の事実関係によって判断が分かれるため断定はできませんが、民事上の相続の問題と刑事上の問題の両方にまたがりうる行為だということは知っておく必要があります。心当たりがある場合、または疑いを持っている場合は、相続欠格の事由に当てはまる行為である点も踏まえ、早い段階で司法書士や弁護士に相談することをおすすめします。
遺言書が勝手に作成された疑いがあるとき、相続人はどう対応すればよいか

まずは家庭裁判所の検認手続きで内容を確認する
法務局の保管制度を利用していない自筆証書遺言や秘密証書遺言を発見した場合、相続人は遅滞なく家庭裁判所に遺言書を提出し、「検認」という手続きを受けなければなりません。検認は、遺言書の状態や形式を家庭裁判所が確認し記録として保存するための手続きであり、この場で遺言の内容そのものが有効かどうかまで判断されるわけではない点に注意が必要です。それでも検認の期日には相続人全員に通知が送られ、立ち会った相続人がその場で遺言書の形状や筆跡について疑問を伝えられるため、偽造・変造の疑いに気付く最初の機会になります。公証人が遺言者から直接聞き取って作成し、原本を公証役場で保管する公正証書遺言は、この検認の手続き自体が不要です。
封印されている遺言書を勝手に開封しない
封印がされている遺言書は、家庭裁判所で相続人またはその代理人の立会いのもとで開封することが民法1004条で定められています。これを知らずに自宅で勝手に開封してしまうと、民法1005条により5万円以下の過料という行政上のペナルティを受けるおそれがあります。ただし、誤って開封してしまったこと自体によって遺言書が無効になるわけではないため、慌てて隠したり処分したりせず、そのままの状態で家庭裁判所に提出し、検認の手続きを受けることが大切です。自宅で保管していた遺言書は、こうした無断開封のリスクに加え、紛失や経年による汚損のリスクも抱えています。
筆跡や作成経緯に疑いがあるときの調べ方
遺言書の筆跡が遺言者の普段の字と違う、体調的に長文を書くのが難しい時期に作成されている、特定の相続人だけに一方的に有利な内容になっているといった事情がある場合は、偽造や変造を疑う材料になります。こうした場合、筆跡鑑定を専門家に依頼したり、作成当時の遺言者の病状や生活状況を示す診断書・介護記録などを集めたりすることで、偽造・変造を主張する側の裏付けを固めていきます。押印に使われた印影が遺言者の普段の印鑑と異なっていないかも、あわせて確認しておきたい点です。相続人だけでこうした調査を進めるのは難しいことが多いため、早い段階で司法書士や弁護士に相談し、証拠の集め方や今後の進め方について助言を受けることをおすすめします。
話し合いで解決しない場合は遺言無効確認訴訟も検討する
偽造・変造の疑いについて相続人間の協議で解決しない場合、最終的には遺言無効確認訴訟という裁判手続きで、遺言の効力そのものを争うことになります。訴訟では、筆跡鑑定の結果や作成当時の遺言者の状況を示す資料など、具体的な証拠に基づいて主張を組み立てる必要があり、受遺者や被相続人の生前の意思を裏付ける資料集めも含めて、相続人本人だけで対応するのは負担が大きい手続きです。弁護士に依頼して訴訟を進めるケースが多く、相続税の申告期限が迫っている場合は遺産分割の話し合いと並行して進める必要も出てきます。司法書士事務所リーガルステーションでも、提携する弁護士と連携しながら相談に応じています。
勝手な作成・書き換えを防ぐためにできること
遺産分割の場面で偽造・変造が疑われるトラブルを未然に防ぐには、遺言者が生前のうちに、信頼できる方式で遺言書を作成し、適切な場所に保管しておくことが基本になります。公証人が遺言者から直接聞き取って作成する公正証書遺言は、原本を公証役場が保管するため、第三者が内容を書き換えることが難しく、偽造・変造のリスクを大きく下げられる方式です。公証役場での手続きには公証人手数料がかかりますが、改ざんや紛失のおそれがほとんどない点は大きな利点です。内容を明らかにせず存在だけを証明してもらう秘密証書遺言という方式もありますが、様式の不備を公証人が確認するわけではないため、無効になるリスクは自筆証書遺言と同様に残ります。自筆証書遺言で作成する場合でも、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用すれば、原本を法務局が保管してくれるため、自宅保管に比べて紛失・改ざん・隠匿のリスクを抑えられます。自筆証書遺言書保管制度の具体的な手続きは、別記事「遺言書を自分で作成し法務局に預ける方法」で詳しく解説していますので、あわせてご確認ください。
遺言の種類ごとに偽造・変造のリスクは異なる
遺言書には自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の3つの方式があり、偽造・変造のリスクの大きさはこの選び方によって変わります。自宅で保管する自筆証書遺言は、費用をかけずに作成できる一方、相続人や被相続人の身の回りにいた人が内容を書き換える機会を持ちやすく、勝手な作成・改ざんが疑われるケースの大半はこの方式で起きています。公正証書遺言は、公証役場で公証人が遺言者本人の意思を確認しながら作成し、封印した原本を公証役場が保管するため、相続人や受遺者が内容に手を加える余地がほとんどありません。秘密証書遺言は、遺言者が自分で作成した書面を封印したうえで公証役場に持参し、公証人と証人に存在だけを証明してもらう方式で、内容を知られたくない場合に選ばれますが、様式面は公証人の確認を受けないため、偽造・変造が疑われた場合の争いを避けられるわけではありません。将来の遺産相続で偽造・変造の疑いが生じるリスクを避けたい場合は、公正証書遺言を軸に検討するとよいでしょう。
まとめ

遺言者以外の人が権限なく遺言書を作成したり、内容を書き換えたりする行為は偽造・変造にあたり、遺言そのものが無効になるだけでなく、関与した相続人は相続欠格として相続権を失うおそれがあります。遺言書を発見したら、勝手に開封すれば過料を科されるおそれもあるため、封印を切らずに家庭裁判所の検認手続きを受け、筆跡や作成経緯に疑問があれば早い段階で専門家に相談することが、遺産相続のトラブルを大きくしないための第一歩です。遺言書の偽造・変造が疑われる場合の対応や、公正証書遺言への切り替えなど、これから遺言書を作成する際の防止策について不安がある方は、司法書士事務所リーガルステーションまで、お気軽にご相談ください。
