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公正証書遺言は自分で作成できる?原案の書き方から当日までの進め方

「公正証書遺言は、自分で作成できるのだろうか」「専門家に頼まず、本人だけで手続きを進めることはできるのか」と考える方は少なくありません。結論からお伝えすると、公正証書遺言は行政書士・司法書士・弁護士といった専門家を介さずに、本人が公証役場と直接やり取りをして作成することができます。ただし「自分で作成する」とは、公証人に代わりに内容を考えてもらうという意味ではなく、遺言の原案(案文)を自分の手でまとめ、必要書類と証人を自分で準備したうえで、公証人との打ち合わせに進むという意味です。

この記事では、司法書士事務所リーガルステーションが、専門家に依頼せず自分で公正証書遺言を進める場合の原案の書き方、必要書類・証人の準備、打ち合わせから作成当日までの流れを、実際に手を動かす順番に沿って解説します。公証人に直接依頼すべきか専門家に相談すべきか迷っている方は、まず公証人への直接依頼と司法書士への相談の違いの記事もあわせてご覧ください。作成費用の内訳を先に知りたい方は公正証書遺言作成費用の記事を参照してください。

司法書士 田中良太

この記事の監修者

司法書士 田中 良太千葉県司法書士会 登録 第1702号

相続・遺言の面談を3,000人以上経験。最初から最後まで司法書士本人が対応します。

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結論|公正証書遺言は自分で作成できる。ただし「案文を書く」のは本人の役割

結論|公正証書遺言は自分で作成できる。ただし「案文を書く」のは本人の役割

公正証書遺言は、民法969条が定める方式にもとづき、公証人が遺言者の口授(口頭で伝える内容)を聞いて文章に整え、証人2人以上の立ち会いのもとで完成させる遺言書です。公証人に相談・依頼する行為そのものは、士業者や銀行等を介さず本人が直接行うことができます。しかし公証人は、遺言者が話した内容を公正証書という形式に整える中立的な立場であり、「誰に何を、どれだけ遺すか」という遺言の中身を考えて提案する役割ではありません。そのため自分で作成を進める場合、最初に取り組むべき作業は、遺言の内容を記したメモ(原案・案文と呼ばれます)を自分の手でまとめることです。この原案が整っていないと、公証人との打ち合わせ自体が前に進みません。

自分で作成する場合の流れ|5つのステップ

自分で公証役場とやり取りをして公正証書遺言を作成する場合、おおむね次の5つのステップで進みます。それぞれ何を自分で準備するのかを、順番に確認していきましょう。

ステップ1|遺言の原案(案文)を自分で書く

自分で作成する場合、まず原案づくりから始まるのが基本です。最初に取り組むのは、誰にどの財産をどれだけ遺すかを決め、文章としてまとめる作業です。自筆証書遺言と異なり、公正証書遺言の原案そのものに「自書」の要件はないため、パソコンで作成しても構いません(もちろん手書きでも構いません)。原案には決まった書面の形式があるわけではなく、公証人に内容が正確に伝わる箇条書きのメモで十分です。財産を特定する際は、不動産(土地・建物)なら登記事項証明書(登記簿)に記載された所在・地番・家屋番号を、固定資産税の納税通知書に記載された評価額とあわせて、預貯金なら金融機関名・支店名・口座番号を、通帳のコピーを添付しながら具体的に書いておくと、後の打ち合わせがスムーズになります。例えば「自宅の土地・建物は妻へ、預貯金は子ども2人で2分の1ずつ」のように、誰に・何を・どれだけ渡すかが一文で読み取れる程度まで具体的にすると、公証人に意図が伝わりやすくなります(夫婦であっても、必ず別々の遺言書を作成する必要があります)。財産をどのように分けるかは、公証人ではなく遺言者自身が決める必要があります。財産の種類が多い場合は、原案とは別に財産目録の形で一覧化しておくと整理しやすくなります。

ステップ2|必要書類を自分でそろえる

原案と並行して、次のような書類を自分で準備します。

  • 遺言者本人の印鑑登録証明書(印鑑証明書。発行から3か月以内が目安)と実印
  • 遺言者と相続人・受遺者との続柄がわかる戸籍謄本
  • 財産を受け取る人が法定相続人以外の場合は、その人の住民票(手紙やハガキなど住所の記載があるものでも代用できる場合があります)
  • 不動産がある場合は登記事項証明書と、固定資産評価証明書または納税通知書
  • 預貯金・株式がある場合は通帳や取引残高報告書の写し
  • 証人予定者の氏名・住所・生年月日・職業がわかるメモと、本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど、顔写真付きの身分証明書に限ると考えてよいでしょう)

書類の正式名称や必要部数は公証役場によって運用が異なるため、打ち合わせの早い段階で担当の公証人に確認しておくと、二度手間を避けられます。

ステップ3|証人2人を自分で手配する

証人になれる人には限りがあります。民法974条により、未成年者、推定相続人・受遺者およびその配偶者・直系血族、公証人の配偶者や四親等内の親族など利害関係のある人は証人になれません。証人として立ち会う人は、作成当日に運転免許証等の本人確認資料を提示するのが一般的です。身近に頼める人がいない場合は、公証役場に紹介を依頼する方法と、司法書士事務所などの専門家に手配のみを依頼する方法があります。証人2人のうち一人だけ知人に依頼し、もう一人を公証役場に紹介してもらうなど、分けて手配することもできます。原案の作成まですべてを依頼しなくても、証人の手配だけを専門家に頼めるという選び方も可能です。

ステップ4|公証役場に連絡し、打ち合わせをする

原案と必要書類の見通しが立ったら、最寄りの公証役場に電話やメールで連絡し、相談の予約を取ります。原案は持参・郵送・ファックスのいずれでも提出でき、公証人がその原案にもとづいて遺言公正証書の案を作成し、内容に間違いや不備がないかの打ち合わせを行います。記載に誤りがあれば、公証人がその場で書き換える形で修正してくれるのが通常です。打ち合わせは一度で終わらないこともあり、財産の記載方法や相続人の特定方法について、公証人から追加の資料提出の指示を受けることもあります。公証人に支払う手数料は、専門家に依頼した場合と同じく財産の価額に応じて決まるため、自分で進めても金額は変わりません(目安として財産の価額が100万円までなら5,000円です)。自宅や病院へ出張してもらう場合は手数料が加算されるほか、日当(4時間以内で1万円、4時間を超えると2万円が目安)も別途かかります。自分で進める場合に変わるのは専門家報酬の有無だけで、着手金のような費用は不要になりますが、公証人とのやりとり自体や支払う手数料の額は変わりません。

ステップ5|作成当日、署名・押印して完成させる

作成日時を決める際は、証人2人の予定もあわせて確認し、関係者全員が同じ日に集まれるよう調整します(高齢や病気などで公証役場に出向くことが難しい場合は、公証人に出張を依頼することもできます。遺言者が自ら署名できない事情があるときは、公証人がその事情を記載したうえで署名に代わる措置をとることも民法が認める対応です)。当日は公証人が遺言者に口授させ、作成した文書の全文を読み上げる、または閲覧させて記載内容を確認したうえで、遺言者・証人・公証人が署名押印して完成させます。原案が遺言者本人の意思に沿う内容になっているかは、この最終確認の場面まで何度でも見直して構いません。原本は公証役場で保管され、遺言者には正本・謄本が交付されます(正本・謄本は、紙のほか電子データでの交付に対応する公証役場も増えています)。

原案(案文)には何を、どこまで書けばよいか

原案(案文)には何を、どこまで書けばよいか

自分で書く原案は、法律文書としての体裁を整える必要はなく、公証人に内容が伝わる形であれば箇条書きのメモで構いません。ただし、次の点はできるだけ具体的に書いておくと、打ち合わせがスムーズに進みます。

  • 誰に渡すか(相続人は氏名・続柄、法定相続人以外への遺贈は氏名・住所・生年月日も)
  • 何を渡すか(不動産は登記事項証明書の記載どおりの所在・地番・家屋番号、預貯金は金融機関名・支店名・口座番号)
  • どれだけ渡すか(全部か、割合か、特定の財産か)
  • 遺言執行者を指定するか(指定しない場合、相続開始後の手続きを相続人自身が進める負担が増えることがあります)

「なぜそのように分けたか」という気持ちを書く付言事項は、法的な効力はありませんが、相続人間の納得感を高める目的で加えることができます。原案の時点で書いておくと、公証人との打ち合わせでも趣旨を伝えやすくなります。

自分で進める場合によくある失敗・やり直しになるケース

記載内容が不明確なまま打ち合わせに進むと、公証人との往復が増えて作成までの時間が延びがちです。一定の要件を満たさない原案のまま話を進めてしまうと、次のようなやり直しが典型的に起こります。

  • 不動産の所在・地番を住所表記(住居表示)で書いてしまい、登記事項証明書の記載と一致しないため特定し直しを求められる
  • 法定相続人以外の人に遺贈するつもりで「孫に」とだけ書き、孫が複数いて特定できず、氏名・生年月日の追加提出を求められる
  • 証人の手配を打ち合わせの直前まで後回しにし、作成日時の調整が遅れる
  • 遺留分を侵害する内容になっていることに気づかず原案を作成し、相続人間の争いの火種を残したまま完成させてしまう

これらは、公証人が様式面の不備を指摘してくれても、遺産の分け方の是非までは助言してもらえないために起こりやすい失敗です。相続人同士の関係が複雑な場合や、遺留分への配慮が必要な場合は、原案を書く段階で司法書士や弁護士に一度目を通してもらうと、やり直しのリスクを減らせます。

自筆証書遺言の「自分で作成」とは何が違うか

「自分で作成する遺言書」と調べると、自筆証書遺言の作成方法も合わせて目にすることがあります。遺言には自筆証書遺言・公正証書遺言のほか秘密証書遺言という方式もありますが、自分で作成を検討する場合の多くは、費用をかけない自筆証書遺言か、公証人の関与で無効のリスクを抑えられる公正証書遺言のいずれかを選びます。自筆証書遺言は、全文・日付・氏名を自分の手で書けるため、公証人も証人も必要ありません。ただし法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用しない限り、相続開始後に家庭裁判所での検認の手続きが必要になりますが、公正証書遺言はこの検認が不要です。公正証書遺言で「自分で作成する」というのは、原案を自分で書くという意味であり、文章を公正証書として完成させる部分は公証人が担います。紛失・改ざんや形式不備による無効のリスクを抑えたい場合に公正証書遺言が選ばれる、という整理になります。自筆証書遺言の具体的な書き方は自筆証書遺言の書き方の記事で解説しています。

どこまで自分でできる?専門家に相談すべきタイミングの判断基準

どこまで自分でできる?専門家に相談すべきタイミングの判断基準
  • 財産が預貯金中心で、相続人の人数も少なく、遺留分の心配がない場合は自分で進めやすい
  • 不動産や株式など財産の種類が多い、法定相続人以外への遺贈がある、再婚などで家族関係が複雑な場合は、原案作成の段階から相談しておくと安心
  • 相続人同士で遺産分割協議の方針が固まっていない、将来の遺産相続で争いが心配な場合は、原案作成から公証人との調整、将来の執行まで一括で相談できる

公証人への直接依頼と司法書士への相談のどちらが向いているかは、財産の内容や相続人間の関係によって変わります。判断に迷う場合の比較は公証人に直接依頼する場合と司法書士に依頼する場合の違いの記事、作成費用の内訳は公正証書遺言作成費用の内訳の記事もあわせてご確認ください。

まとめ|自分で作成するなら、原案と必要書類の準備から始める

ここまで見てきたとおり、公正証書遺言は、専門家を介さず自分で公証役場とやり取りして作成することができます。ただし「自分で作成する」とは、遺言の原案を自分の手でまとめ、必要書類・証人を自分で準備したうえで、公証人との打ち合わせに進むという意味です。遺言者が生前に原案を残すことが、亡くなる前にできる最も重要な準備であり、死亡後の相続人の負担を減らします。原案の記載内容を正確に反映させ、公証人からの指示に早めに対応することが、確実に有効な公正証書遺言を完成させるための注意点です。公証人との打合せの記録として、原案の控えを保管しておくと安心です。内容面に不安がある場合や、相続人間の関係が複雑な場合は、原案を書く段階で司法書士事務所リーガルステーションまでお気軽にご相談ください。

この記事の監修者

司法書士 田中良太

田中 良太司法書士

保有資格
司法書士・行政書士・宅地建物取引士・測量士補・簡裁訴訟代理等能力認定
所属
千葉県司法書士会(個人登録番号 第1702号/簡裁訴訟代理認定 第1401013号)
学歴
同志社大学 法学部 法律学科 卒業
経歴
相続を主とする司法書士事務所に勤務しながら司法書士試験に合格。債務整理・不動産登記・相続と、業務の異なる4つの司法書士事務所で10年以上の実務を経験
実績
相続・遺言の面談3,000人以上
専門
相続・生前対策に特化。税理士・弁護士などの専門家と連携し、遺言書の作成から相続後の手続きまで対応
お客様目線に立った、親切で正直な対応をお約束します。手続きのデメリットやリスクも、包み隠さずお伝えします。

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