
遺言書作成は何歳がいい?年代別に見る書くべき理由と注意点
「遺言書作成 年齢」と検索する方の中には、何歳から遺言書を作れるのか、何歳までに作るべきなのか、年代によって気をつけるべき点が違うのではないかと知りたい方が多くいます。結論からお伝えすると、遺言をするための年齢の条件は満15歳以上・上限なしの1点だけですが、実際に遺言書を書くべき理由やきっかけは、20代・30代・40代・50代・60代・70代以上という年代によって大きく異なります。この記事では、年齢そのものの条件については別記事に譲り、年代別に見る遺言作成のきっかけと注意点、年齢を重ねるほど重みが増す「意思能力」の壁、何歳であっても無効のリスクを抑える方法までを、司法書士事務所リーガルステーションが解説します。
結論|遺言書作成の年齢条件は1つだけ。書くべき理由は年代で変わる

民法961条は「15歳に達した者は、遺言をすることができる」と定め、年齢の上限についての規定はありません。つまり遺言書作成の年齢の条件は、満15歳以上であることの1点だけで、何歳になっても作成・書き直しができます。ただし年齢の条件に加えて、遺言の内容と結果を理解できる「意思能力」を備えている必要があり、この年齢の要件・意思能力の基準・証人や遺言執行者になれる年齢の違いについては、別記事「遺言は何歳から作れる?」で詳しく解説しています。ここでは、年齢の条件そのものではなく、実際に20代から80代以上まで、年代によって遺言書を書く理由やきっかけ、気をつけるべき点がどう変わるのかを中心にお伝えします。
遺言書には、自筆証書遺言・公正証書遺言のほかに、内容を明らかにせず存在だけを証明してもらう秘密証書遺言という方式もあります。どの方式でも、法律上の効力を持たない「付言」として、家族への感謝などのメッセージを書き添えることができ、年齢を重ねても、今の思いを残せます。
遺言書を作成する人の年齢はどのくらい?

司法書士や弁護士の相談実績では、遺言書を作成する方の年齢は70歳以上、なかでも70代から80代が中心という事務所が多く、定年退職や配偶者との死別といった人生の節目を迎えてから準備を始める方が目立ちます。一方で、遺言書の作成に年齢的な早すぎるという決まりはなく、65歳や72歳で初めて作成する方もいれば、結婚や出産を機に20代・30代のうちから作成する方、事業承継や相続税対策を見据えて40代・50代で準備する方も増えています。平均年齢だけを基準にすると「まだ早い」と感じてしまいますが、年齢よりも、財産の状況や家族関係が変化したタイミングを基準に考えることが大切です。
年代別に見る、遺言書を書く理由ときっかけ

遺言書を書く理由は、年代によって次のように傾向が分かれます。ご自身の年代に近い項目から、該当する事情がないかを確認してみてください。
20代・30代|結婚・出産を機に、万一の事故や病気に備える
20代・30代で遺言書を作成する方の多くは、結婚や出産によって配偶者や子どもという守るべき家族ができたことをきっかけに、不慮の事故や急病で万一のことがあった場合に備えておきたいと考えています。この年代は財産がまだ少ないと感じて先延ばしにされがちですが、交通事故や急病はいつ起こるか分からず、判断能力に問題がない今のうちに意思を残しておけるという点で、年齢が若いことはむしろ有利に働きます。
40代・50代|相続税や事業承継を意識し始める
40代・50代になると、マイホームの購入や退職金の見通しが立ち、相続税が課税対象になりそうな財産規模に達する方が増えてきます。この年代で遺言書を作成する方は、将来の相続税額を見据えた分配や、経営する会社の事業承継を見越した財産の引き継ぎ方を考えて準備することが多く、税理士と連携しながら進めるケースも目立ちます。
60代・70代|離婚・再婚など複雑な家族関係を整理する
60代・70代は、実際に遺言書を作成する方が最も多い年代です。離婚・再婚によって先妻との間に子どもがいる家庭や、子どものいない夫婦、内縁の妻や後妻がいる場合など、法定相続人だけでは財産の分け方が本人の希望と一致しにくい家族関係を整理する目的で作成する方が多く見られます。長男に多く相続させたい、特定の子どもには遺産を渡したくないなど、兄弟姉妹を含む相続人の間でもめることを避けたいという理由も、この年代から目立つようになります。
80代以上|認知症・判断能力への備えを最優先にする
80代以上になると、認知症や判断能力の低下によって有効な遺言を残せなくなるリスクが現実的な心配事になります。高齢になってから作成する場合は、遺言の内容を争われにくくするため、公証人が本人の意思を確認しながら作成する公正証書遺言を選ぶ方が安心です。本人の判断能力に不安がある場合は、作成時に主治医の診断書を準備しておくと、後から遺言能力がなかったと争われた際の有力な証拠になります。
年齢が上がるほど重くなる「意思能力」の壁

遺言書作成の年齢条件は満15歳以上の1点だけですが、年齢を重ねるほど、加齢や認知症によって「意思能力」(遺言の内容と結果を理解する能力)を欠く常況になるリスクが高まります。2025年には高齢者の5人に1人が認知症になるという推計もあり、年齢的にはまだ早いと感じていても、判断能力がはっきりしているうちに作成しておくことが、将来の争いを避ける一番の近道です。すでに成年後見人がついている方が遺言を作成する場合に必要な医師の立ち会いなど特別な要件は、別記事「認知症の親に成年後見人がついている場合の遺言作成」で解説していますので、当てはまる場合はあわせてご確認ください。
何歳であっても、公正証書遺言なら無効のリスクを抑えられる

自筆証書遺言は、全文を自分で手書きする分だけ様式の不備で無効になるリスクがあります。年齢が若く法律行為に不慣れな方や、高齢で判断能力に不安がある方は、公証人が内容を確認しながら作成する公正証書遺言を選ぶと、年齢を理由に無効と判断されるリスクを抑えられます。自筆証書遺言で作成する場合の基本的な書き方や注意点は、別記事「自筆証書遺言の書き方」で解説していますので、あわせてご確認ください。
年齢を重ねてから書き直すときに気をつけたいこと

遺言は何歳になっても書き直せ、内容を書き換えることもできますが、年齢が上がるほど「書き直した時点で意思能力があったか」が後から争われやすくなります。結婚・離婚・再婚・死別・子どもの誕生など家族構成に変化があったときは、できるだけ早い段階で内容を見直し、新しい遺言の作成日が分かるように年月日を明記しておくことが大切です。複数の遺言書が見つかった場合は作成日が新しいものの内容が優先されるため、古い遺言書を破棄せずに残しておいても問題ありません。
遺言書があると、相続人の年齢にかかわらず手続きの負担が減る

遺言書がない状態で亡くなると、相続人全員による遺産分割協議でまとまらなければ、家庭裁判所の調停や審判、場合によっては訴訟に発展することもあります。兄弟姉妹や先妻・後妻との間の子など関係が複雑な家族ほど、話し合いが長引く傾向があります。遺言書があれば、不動産の名義変更や預貯金の解約といった死後の手続きがスムーズに進み、相続人の負担を大きく減らせます。
一方で、遺言の内容が特定の相続人の遺留分を侵害していると、受け取る財産が少ない相続人から異議が出て、結果的に争いに発展することもあります。相続人以外の人に財産を渡す「遺贈」という方法を使う場合も、遺留分を侵害しない範囲で検討すると安心です。相続放棄や限定承認・単純承認といった相続人側の選択に関わる場面でも、遺言で財産の内容が明確になっていると、相続人が判断しやすくなります。
書き終えた遺言書は、公証役場や法務局の保管制度を利用すれば紛失・偽造・変造のリスクを防げます。公証役場の相談窓口は日本公証人連合会のウェブサイトでも確認できます。
こんな場合は専門家に相談した方がよい

本人の判断能力に不安がある場合、再婚家庭や内縁の配偶者がいるなど相続人の関係が複雑な場合、相続税が関わる規模の財産がある場合は、年齢の条件を満たしているかという法的な点だけでも、司法書士や弁護士、行政書士といった専門家に相談しながら進めると安心です。相続財産に不動産や株式などが多い場合は、税理士と連携しながら進めるケースもあります。年代ごとの事情に応じたアドバイスが必要な場合は、まずは司法書士事務所リーガルステーションまでお気軽にご相談ください。
まとめ|遺言書作成の年齢条件は1つ。書くべき理由は年代で見つける

遺言書作成の年齢の条件は、民法が定める満15歳以上という1点だけで、上限はありません。一方で、実際に遺言書を書くべき理由やきっかけは、20代・30代の「万一への備え」から、40代・50代の「相続税・事業承継」、60代・70代の「複雑な家族関係の整理」、80代以上の「認知症への備え」まで、年代によって大きく変わります。年齢の条件や意思能力の基準そのものについては別記事「遺言は何歳から作れる?」で詳しく解説していますので、あわせてご確認ください。ご自身の年代に当てはまる理由が見つかった方は、年齢を理由に先延ばしにせず、書ける時に書いておくことが、司法書士事務所リーガルステーションがもっともお伝えしたいことです。お気軽にご相談ください。
この記事の監修者
田中 良太司法書士
- 保有資格
- 司法書士・行政書士・宅地建物取引士・測量士補・簡裁訴訟代理等能力認定
- 所属
- 千葉県司法書士会(個人登録番号 第1702号/簡裁訴訟代理認定 第1401013号)
- 学歴
- 同志社大学 法学部 法律学科 卒業
- 経歴
- 相続を主とする司法書士事務所に勤務しながら司法書士試験に合格。債務整理・不動産登記・相続と、業務の異なる4つの司法書士事務所で10年以上の実務を経験
- 実績
- 相続・遺言の面談3,000人以上
- 専門
- 相続・生前対策に特化。税理士・弁護士などの専門家と連携し、遺言書の作成から相続後の手続きまで対応
お客様目線に立った、親切で正直な対応をお約束します。手続きのデメリットやリスクも、包み隠さずお伝えします。
