
遺言作成の押印は認印でいい?実印が必要な場合との違い
「遺言作成 認印」と検索する方の多くは、自筆証書遺言に押す印鑑は認印で問題ないのか、実印でなければ無効になってしまうのではないかと不安を感じています。結論からお伝えすると、自筆証書遺言の押印は実印である必要はなく、認印で作成しても遺言の効力に差し支えはありません。ただし、訂正印や複数ページにわたる財産目録の契印は本文に押した印と同じものを使う必要があるほか、公正証書遺言を選ぶ場合は本人確認のために実印と印鑑登録証明書が必要になるなど、認印で済む場面と実印が必要になる場面は分けて理解しておく必要があります。この記事では、押印に関する民法上の根拠から、認印・実印・拇印・シャチハタの違い、印鑑登録をしていない方の対応、公正証書遺言との違いまで、司法書士事務所リーガルステーションが解説します。
結論|自筆証書遺言の押印は認印で構わない

自筆証書遺言は、民法968条が定める「全文の自書(手書き)・日付の自書・氏名の自書・押印」という4つの要件を満たせば成立する遺言書です。この条文は押印そのものを要件としていますが、使用する印鑑の種類までは指定していません。したがって、実印・認印のどちらを使っても押印の要件は満たされ、遺言の効力に違いは生じません。
実際に、最高裁判所は指印(拇印)による押印でも自筆証書遺言の要件を満たすと判断した判例(最高裁判決・昭和49年12月24日)があり、印章を持たない状態であっても押印の要件自体が救済される余地があります。この判例を踏まえると、認印を押すこと自体が無効の原因になるという考え方は、法的な根拠に基づかない誤解だとわかります。
認印・実印・拇印・シャチハタ、何が違うのか

認印と実印の違いは印鑑登録をしているかどうか
実印とは、各市区町村に印鑑登録をして「印鑑登録証明書」で本人の印であることを証明できる印鑑のことです。認印は、印鑑登録をしていない、日常的な押印に使う印鑑全般を指します。自筆証書遺言の押印において、この印鑑登録の有無は要件になっていないため、認印で押しても実印で押しても、民法上の効力に違いは生じません。
シャチハタ(浸透印)だけは避けたほうがよい
認印の中でも、スタンプ台を使わずインクが内蔵されたシャチハタなどの浸透印は避けたほうが無難です。押印そのものが無効になるわけではありませんが、経年でインクが薄くなって印影が不鮮明になりやすく、ゴム印特有の変形によって同一の印であることの照合が難しくなりやすいため、遺言者本人の押印であることを争われた場合に不利になりかねません。
それでも実印を勧められることがあるのはなぜか

専門家が実印での押印を勧めるのは、法律上の要件だからではなく、遺言者本人が押印したことを裏付けやすいという実務上の理由によるものです。実印であれば印鑑登録証明書の印影と照合できるため、遺言者が亡くなった後に相続人の間で「本当に本人が押したのか」という疑いが生じたときに、同一性を示す材料になります。遺言書の作成に関わる行政書士の中にも「使用する印鑑は認印でもかまいませんが、実印の方が信用性が高く、お勧めです」と案内する例があり、これは認印を禁じているのではなく、偽造や変造を疑われるような争いを避けるための推奨だと理解してください。
なお、遺言書に実印を押していても、不動産の相続登記(名義変更)や預貯金の解約といった相続開始後の手続きそのものが実印の有無によって左右されるわけではありません。これらの手続きに必要になるのは、遺言書とは別に用意する相続人側の印鑑登録証明書や戸籍謄本などの添付書類であり、遺言書本文に押された印の種類ではない点を誤解しないようにしてください。
訂正印・契印は本文に押した印と同じものを使う

自筆証書遺言の訂正には、変更した場所を指示し、変更した旨を付記したうえで署名し、変更箇所にも押印するという厳格な方式が民法で定められています。この訂正印は、本文に押した印と別の印を使うと、訂正そのものが有効と認められないおそれがあります。認印で本文に押印した場合は、訂正の際も必ず同じ認印を使うようにしてください。財産目録を自書せずに別紙として添付する場合も、ページごとの署名・押印に加えて、綴り目に契印を押しておくと差し替えの疑いを防げますが、この契印も本文と同一の印を使う必要があります。清書の途中で書き間違えた場合は、訂正の方式に従うより最初から書き直すほうが、無効になるリスクを避けやすいという点は、別記事「自筆証書遺言の書き方|4つの要件と財産ごとの文例」でも解説しています。
印鑑登録をしていない方・認印を持っていない方はどうすればいいか

印鑑登録をしていない方、海外に住んでいる方、日本国籍ではない方であっても、認印があれば自筆証書遺言は作成できます。このために実印を新たに登録する必要はありません。手元に認印がない場合は、新しく購入しても問題ありませんが、前述のとおりシャチハタなどの浸透印は避け、スタンプ台を使う一般的な印鑑を選んでください。氏名の彫り方(フルネームか姓のみか)によって、押印の要件そのものが左右されることもありません。
公正証書遺言・秘密証書遺言では実印と印鑑証明書が必要になる

自筆証書遺言とは異なり、公証人に作成してもらう公正証書遺言では、遺言者本人であることを公証役場で公証人が確認するために、実印と印鑑登録証明書(または運転免許証などの本人確認書類)の提示が求められるのが通例です。これは遺言の押印の要件ではなく、公証人が本人確認を行うための手続き上の要件であるという点で、自筆証書遺言の押印とは法的な位置づけが異なります。公証人へ遺言作成を直接依頼する場合の流れや必要書類については、別記事「公証人に遺言作成を依頼する方法」で詳しく解説しています。秘密証書遺言も、遺言者が作成した書面を封印したうえで公証役場に持参し、公証人と証人の立ち会いのもとで手続きを行うため、同様に実印での押印や印鑑証明書の提示を求められる場合があります。
まとめ|認印で作成してよいが、訂正・保管の扱いに注意する

自筆証書遺言の押印は実印である必要はなく、認印で作成しても効力に差し支えはありません。ただし、シャチハタなどの浸透印は避け、訂正印や契印は本文に押した印と必ず同じものを使うようにしてください。公正証書遺言を選ぶ場合は、押印の要件とは別に、本人確認のための実印・印鑑登録証明書が必要になる点もあわせて押さえておきましょう。書き終えた遺言書を自宅で保管すると紛失や改ざんのリスクが残るため、法務局の自筆証書遺言書保管制度の利用もあわせて検討することをおすすめします。保管制度の具体的な手続きは、別記事「遺言書を自分で作成し法務局に預ける方法」でご確認ください。押印や訂正の方法に不安が残る方、押印の有効性が後から争われることを避けたい方は、司法書士や弁護士といった専門家に相談することをおすすめします。司法書士事務所リーガルステーションまで、お気軽にご相談ください。
この記事の監修者
田中 良太司法書士
- 保有資格
- 司法書士・行政書士・宅地建物取引士・測量士補・簡裁訴訟代理等能力認定
- 所属
- 千葉県司法書士会(個人登録番号 第1702号/簡裁訴訟代理認定 第1401013号)
- 学歴
- 同志社大学 法学部 法律学科 卒業
- 経歴
- 相続を主とする司法書士事務所に勤務しながら司法書士試験に合格。債務整理・不動産登記・相続と、業務の異なる4つの司法書士事務所で10年以上の実務を経験
- 実績
- 相続・遺言の面談3,000人以上
- 専門
- 相続・生前対策に特化。税理士・弁護士などの専門家と連携し、遺言書の作成から相続後の手続きまで対応
お客様目線に立った、親切で正直な対応をお約束します。手続きのデメリットやリスクも、包み隠さずお伝えします。
