遺言書作成の注意点を「書く前・書く時・書いた後」の順にチェックする
「遺言作成 注意点」と検索する方の多くは、これから実際に遺言書を書き始める直前に、何を確認しておけば安心かを知りたいと考えています。自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言という方式ごとの違いや形式面の要件を体系的に理解したい方は、別記事「遺言書作成の注意点」で詳しく解説していますので、先にそちらをご確認ください。このページでは、これから実際に手を動かして遺言書を書く方向けに、司法書士事務所リーガルステーションが「書く前」「書く時」「書いた後」という3つの場面に分けて、注意点を順番に確認します。
結論|遺言書作成の注意点は「書く前」「書く時」「書いた後」の3つの場面で確認する

遺言書作成で見落としやすい注意点は、どの方式を選ぶかという一般論だけでなく、実際に手を動かすタイミングによっても変わります。結論からお伝えすると、注意点は(1)書き始める前に方式・財産・家族関係を整理しておくこと、(2)実際に書いている最中に形式面の要件を守ること、(3)書き終えた後に保管・伝達・見直しのタイミングを決めること、という3つの場面に分けて1つずつ確認すると、漏れなく進められます。自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言のどの方式を選んでも、この3段階の考え方は共通して使えます。
書く前に確認する注意点|方式・財産・家族関係を整理する

どの方式で書くか(自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言)を決めているか
民法が定める遺言の方式には、自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の3つがあります(民法967条)。自筆証書遺言は自分で全文を自書すれば作成でき費用も抑えられますが、自宅保管では偽造や紛失のおそれが残ります。公正証書遺言は公証人と証人2人以上の立会いのもとで作成し、原本を公証役場が保管するため確実性が高い一方、公証人への手数料がかかります。秘密証書遺言は内容を誰にも見せずに作成し、公証人と証人の前でその存在だけを証明してもらう方式です。公証人への相談の流れは、別記事「公証人には遺言作成を直接依頼できる?」で詳しく解説しています。書き始める前に、財産の規模や相続人との関係から、自分にはどの方式が向いているかを決めておくことが最初の注意点です。
財産を目録にして全部書き出せているか
遺言書を書く前に、不動産・預貯金・株式などの財産を一覧にした財産目録を作っておくと、記載漏れを防ぎやすくなります。不動産は登記事項証明書の記載どおりに所在・地番(建物は家屋番号)まで書き写し、預貯金は金融機関名・支店名・口座番号まで特定します。2019年1月13日以降は、財産目録に限り自書が不要になり、パソコンで作成した目録や通帳のコピーを添付する方法も認められていますが、本文そのものはこの緩和の対象外です。
法定相続人と遺留分を侵害しない内容になっているか
財産を渡す相手が法定相続人であれば「相続させる」、相続人以外の人(受遺者。内縁の配偶者や孫、お世話になった知人など)であれば「遺贈する」と書き分けます。あわせて、配偶者・子・直系尊属に保障されている遺留分を侵害する内容になっていないかも、書き始める前に確認しておきたい点です。特定の相続人に財産を一切渡さない内容にすると、遺留分侵害額請求をされ、相続人同士の争いにつながることがあります。兄弟姉妹には遺留分がないため、法定相続人の範囲を正しく把握しておくことも欠かせません。
書く時に確認する注意点|形式面で失敗しやすいポイント

自筆証書遺言は全文・日付・氏名を自書し押印したか
自筆証書遺言が有効と認められるには、全文の自書・日付の自書・氏名の自書・押印という4つの要件をすべて満たす必要があります(民法968条)。家族や専門家による代筆、パソコンでの作成は本文には認められません。日付を「令和8年8月吉日」のようにあいまいに書く、氏名をペンネームで署名する、シャチハタなど消えやすい認印を使うといった、思い込みによる要件の欠落が少なくありません。本文の最後には、法律上の効力を持たない「付言事項」として家族への感謝やお願いを書き添えることもできます。
公正証書遺言・秘密証書遺言は証人2人以上を用意できているか
公正証書遺言は公証人が遺言者の口授した内容を筆記し、証人2人以上の立会いのもとで作成します(民法969条)。秘密証書遺言も、公証人と証人2人以上の前で「これは自分の遺言である」ことだけを証明してもらう必要があります(民法970条)。未成年者や推定相続人、受遺者とその配偶者などは証人になれないため(民法974条)、立会いを頼む相手を事前に確認しておく必要があります。
訂正の仕方・共同遺言の禁止を守っているか
自筆証書遺言の訂正には、変更した場所を指示し、変更した旨を付記したうえで署名し、変更箇所にも押印するという厳格な方式が民法で定められています。二重線を引くだけの訂正や欄外への書き加えは、有効な訂正と認めてもらえないことがあるため、訂正箇所が多い場合は、その部分を直すより最初から書き直す方が確実です。また、2人以上が同じ書面で作成する共同遺言は、夫婦であっても民法で無効とされています(民法975条)。
書いた後に確認する注意点|保管・伝達・見直しのタイミング

自宅保管のリスクと、法務局・公証役場の保管制度
自筆証書遺言を自宅で保管すると、紛失や、相続人の誰かによる偽造・改ざん・隠匿のおそれが残ります。これを防ぐ方法として、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用する選択肢があります。原本と画像データを法務局が保管するため紛失・改ざんのリスクを防げるほか、申請時に様式面の不備も確認してもらえます(手続きの最新情報は法務省のホームページでご確認ください)。公正証書遺言の原本は、作成した公証役場が長期間保管するため、紛失・改ざんの心配がほとんどありません。法務局の保管制度を利用していない自筆証書遺言は、遺言者が亡くなった後に相続人が家庭裁判所へ提出して「検認」の手続きを受ける必要があり、検認前に開封すると過料の対象になることがあります。公正証書遺言と、法務局の保管制度を利用した自筆証書遺言は、この検認の手続き自体が不要です。
保管場所を家族に伝え、遺言執行者を指定しているか
法務局の保管制度を使わない自筆証書遺言は、保管場所を家族の誰にも伝えていないと、遺言者本人の死後に遺言書の存在そのものに気づいてもらえないおそれがあります。保管している事実だけは、信頼できる家族や、遺言執行者に指定した人に伝えておくと安心です。遺言執行者とは遺言の内容を実際に実現する役割を担う人で、指定しておくと相続人自身が名義変更などの手続きを進める負担を減らせます。遺言執行者には未成年者はなれません(民法1009条)。
見直すきっかけをあらかじめ決めているか
遺言書は一度書けば終わりではありません。結婚・離婚・出産・孫の誕生、自宅の売却や建て替え、退職金の受け取り、新たな預金口座の開設や株式投資の開始といった、財産や家族関係が変わる出来事が起きたタイミングを、見直しのきっかけとしてあらかじめ決めておくと、記載のない財産が残ったまま相続が始まる事態を防げます。財産が大きく変わったときは、欄外に追記するよりも、全体を書き直す方が記載の矛盾を避けやすくなります。古い遺言を撤回する場合は、その旨と新しい作成日が分かるように明記しておくと、どちらが優先されるかで迷わずに済みます。
こんな場合は特に注意したい|財産や家族関係が複雑なケース

財産の種類や金額が多い方、相続人の数が多い方、相続人以外の人への遺贈を考えている方、相続人同士の関係が複雑な方は、方式選びや形式面のチェックだけでは対応しきれない内容面の判断が必要になることがあります。遺産分割の話し合いが将来の争いに発展することを避けたい場合も同様です。内容面に不安がある、あるいは無効になる恐れを少しでも感じた場合は、作成の段階から司法書士や弁護士といった専門家に相談しておくと安心です。自筆証書遺言の書き方そのものを詳しく知りたい方は、別記事「自筆証書遺言の書き方」もあわせてご覧ください。
まとめ|遺言書作成の注意点は、書く前・書く時・書いた後の順に1つずつ確認する

遺言書作成の注意点は、(1)書き始める前に方式・財産・家族関係を整理すること、(2)実際に書く時に形式面の要件を満たすこと、(3)書き終えた後に保管・伝達・見直しのタイミングを決めること、という3つの場面に分けて確認すると、遺言者本人の意思を確実に実現しやすくなります。方式ごとの要件をより詳しく知りたい方は、別記事「遺言書作成の注意点」もあわせてご覧ください。何から手を付ければよいか迷ったときや、内容面の判断に不安が残るときは、遺産相続のトラブルを防ぐためにも、司法書士事務所リーガルステーションまで、お気軽にご相談ください。
この記事の監修者
田中 良太司法書士
- 保有資格
- 司法書士・行政書士・宅地建物取引士・測量士補・簡裁訴訟代理等能力認定
- 所属
- 千葉県司法書士会(個人登録番号 第1702号/簡裁訴訟代理認定 第1401013号)
- 学歴
- 同志社大学 法学部 法律学科 卒業
- 経歴
- 相続を主とする司法書士事務所に勤務しながら司法書士試験に合格。債務整理・不動産登記・相続と、業務の異なる4つの司法書士事務所で10年以上の実務を経験
- 実績
- 相続・遺言の面談3,000人以上
- 専門
- 相続・生前対策に特化。税理士・弁護士などの専門家と連携し、遺言書の作成から相続後の手続きまで対応
お客様目線に立った、親切で正直な対応をお約束します。手続きのデメリットやリスクも、包み隠さずお伝えします。
