
遺言書作成の注意点|方式・書き方・内容・保管で確認すべきこと
「遺言書作成 注意点」と検索する方の多くは、これから遺言書を書くにあたって、何を確認しておけば無効にならずに済むのか、全体像を知りたいと考えています。結論からお伝えすると、遺言書作成の注意点は、(1)自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言のどの方式を選ぶか、(2)選んだ方式の形式面の要件を満たしているか、(3)誰に何をどう渡すかという内容面に問題がないか、(4)書き終えた遺言書をどう保管するか、という4つの段階に分けて確認すると整理しやすくなります。この記事では、司法書士事務所リーガルステーションが、方式ごとに共通する注意点と異なる注意点を分けたうえで、遺言書が無効になりやすい代表的なミス、内容面で見落としやすいポイント、保管やトラブル防止の方法までを順番に解説します。個別の書き方や手続きをより詳しく知りたい方のために、関連記事への案内もあわせて行います。
結論|遺言書作成の注意点は「方式選び」「書き方」「内容」「保管」の4段階に分かれる

民法が定める遺言の方式には、自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の3つがあります。どの方式を選んでも、遺言書作成で注意すべきことは、大きく4つの段階に整理できます。まず、自分の財産や家族関係に合った方式を選ぶこと。次に、選んだ方式が定める形式面の要件を一つも欠かさず満たすこと。さらに、誰に何をどれだけ渡すかという内容面で、法定相続人や遺留分との関係に問題がないかを確認すること。最後に、書き終えた遺言書を紛失・改ざんなく確実に遺族へ届ける保管方法を選ぶことです。この4段階のうち、どこか一つでもおろそかにすると、遺言者本人の意思が実現されなかったり、相続人同士の争いにつながったりするおそれがあります。次の章から、それぞれの段階でどこに気をつければよいかを順番に見ていきます。
注意点1|方式選びの注意点|自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の違いと向き不向き

自筆証書遺言は、遺言者本人が全文・日付・氏名を自書し押印するだけで作成できる方式です(民法968条)。公証人や証人の立会いが不要で、費用もほとんどかからない点が大きな特徴ですが、自宅で保管すると紛失や改ざんのおそれが残り、書式の不備によって無効になりやすいというデメリットもあります。公正証書遺言は、公証人が遺言者の口授した内容を筆記し、証人2人以上の立会いのもとで作成する方式です(民法969条)。原本は公証役場が長期間保管するため紛失・改ざんの心配がほとんどなく、家庭裁判所の検認も不要ですが、財産の価額に応じた公証人手数料がかかります。秘密証書遺言は、遺言者が内容を誰にも見せずに作成し、公証人と証人2人以上の前で「これは自分の遺言である」ということだけを証明してもらう方式です(民法970条)。公証人は内容そのものを確認しないため、自書以外の要件を満たしていないと無効になるリスクは自筆証書遺言と同様に残ります。
財産がそれほど多くなく相続人間で争いの心配が少ない方は自筆証書遺言、確実性を重視したい方や財産構成が複雑な方は公正証書遺言、内容を誰にも知られたくないが存在だけは証明しておきたい方は秘密証書遺言が向いています。公証人への依頼の流れや費用の目安は、別記事「公証人には遺言作成を直接依頼できる?」で、自筆証書遺言の書き方は「自筆証書遺言の書き方」で詳しく解説しています。
注意点2|書き方(形式面)の注意点|無効になりやすい代表的なミス

自筆証書遺言で特に注意したい4つの要件
自筆証書遺言が有効と認められるには、全文の自書・日付の自書・氏名の自書・押印という4つの要件をすべて満たす必要があります。本文は必ず自分の手で書く必要があり、家族や専門家による代筆、パソコンでの作成は認められません。日付を「令和8年8月吉日」のようにあいまいに書いてしまう、氏名をペンネームで署名してしまう、シャチハタなど消えやすい印を使ってしまうなど、ちょっとした思い込みで要件を欠いてしまうケースが少なくありません。2019年1月13日以降に作成する財産目録に限っては自書が不要になり、パソコンで作成した目録や通帳のコピーを添付する方法も認められていますが、本文そのものはこの緩和の対象外です。本文の最後には、法律上の効力を持たない「付言事項」として家族への感謝やお願いを書き添えることもできます。要件ごとの詳しい確認方法は、別記事「自分で作成した遺言書を有効にする方法」のセルフチェックリストも参考にしてください。
共同遺言・口頭・録音は方式を問わず無効
2人以上が同じ書面で作成する共同遺言は、夫婦であっても民法で無効とされています(民法975条)。ビデオレターや音声の録音を遺言として残しても、どの方式の要件にもあたらないため遺言書としては認められません。
訂正の仕方を誤ると、その部分だけ無効になる
自筆証書遺言の訂正には、変更した場所を指示し、変更した旨を付記したうえで署名し、変更箇所にも押印するという厳格な方式が民法で定められています。誤った箇所に二重線を引くだけの訂正や、欄外に書き加えただけの追記は、有効な訂正と認めてもらえないことがあります。訂正箇所が多い場合は、訂正の方式に従うよりも最初から書き直す方が、無効になるリスクを避けやすく確実です。遺言は何度でも書き直し・撤回ができるため、古い遺言を撤回する場合は、その旨と新しい作成日が分かるように明記しておくと、どちらが優先されるかで迷わずに済みます。
注意点3|内容面の注意点|誰に何を渡すかを決める際に見落としやすいこと

法定相続人の範囲と「相続させる」「遺贈する」の書き分け
財産を渡す相手が法定相続人であれば「相続させる」、相続人以外の人(受遺者。内縁の配偶者や孫、お世話になった知人など)であれば「遺贈する」と書き分けます。この書き分けを誤ると、遺言者の死亡後、相続財産である不動産の名義変更や預貯金の払い戻しの手続きで支障が出ることがあるため、財産を渡す相手が法定相続人にあたるかどうかを先に確認しておく必要があります。民法が定める法定相続分とは異なる割合で相続させたい場合も、誰が法定相続人にあたるかを正しく把握していないと、意図した通りの内容になりません。戸籍を確認して兄弟姉妹や甥・姪まで相続人の範囲が広がっていないかもあわせて見ておくと安心です。
遺留分を侵害する内容になっていないか
配偶者・子・直系尊属には、遺言によっても奪うことのできない最低限の取り分である遺留分が民法上保障されています。特定の相続人に財産を一切渡さない内容にすると、遺留分を侵害された相続人から遺留分侵害額請求をされ、相続人同士の争いに発展することがあります。生前に受けた贈与(特別受益)の持ち戻しを免除したいのか、特定の相続人を相続から外す「廃除」を記載したいのかといった判断も、様式を整えるだけでは解決しない内容面の注意点です。
財産目録・財産の記載が特定できる書き方になっているか
不動産を相続させる場合は、登記事項証明書の記載どおりに所在・地番(建物は家屋番号)・地目・地積まで書き写します。預貯金を相続させる場合は、金融機関名・支店名・口座番号まで特定して書きます。記載があいまいだと、遺言者本人の死後に相続人が名義変更や払い戻しの手続きを進める際に支障が出ることがあります。
注意点4|遺言執行者を指定しておくかどうかの注意点

遺言執行者とは、遺言の内容を実際に実現する役割を担う人です。本文の中で「この遺言の執行者として、長男〇〇を指定する」のように指定しておくと、遺言者が亡くなった後に相続人自身が名義変更などの手続きを進める負担を減らせます。遺言執行者を指定していないと、相続人全員の協力が必要な手続きが増え、相続人の数が多い場合や相続人同士の関係が良くない場合ほど負担が大きくなる傾向があります。遺言執行者には未成年者はなれません(民法1009条)ので、指定する相手の年齢にも注意してください。
注意点5|保管方法の注意点|自宅保管のリスクと法務局・公証役場の保管制度

自筆証書遺言を自宅で保管すると、紛失や、相続人の誰かによる偽造・改ざん・隠匿のおそれが残ります。これを防ぐ方法として、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用する選択肢があります。原本と画像データを法務局が保管してくれるため紛失・改ざんのリスクを防げるほか、様式面の不備も申請時に確認してもらえます。具体的な手続きは、別記事「遺言書を自分で作成し法務局に預ける方法」で詳しく解説していますので、手続きの最新情報は法務省のホームページとあわせてご確認ください。
公正証書遺言の原本は、作成した公証役場が長期間保管します。震災等の災害に備えた電磁的記録による二重保存も進んでおり、紛失・改ざんの心配がほとんどありません。いずれの方式でも、保管場所を家族の誰にも伝えていないと、遺言者本人の死後に遺言書の存在そのものに気づいてもらえないおそれがあるため、保管している事実だけは信頼できる家族に伝えておくことをおすすめします。
注意点6|遺言者が亡くなったあとに起こりやすいトラブルへの注意点

相続人の誰かが遺言書を偽造・変造・隠匿・破棄すると、その行為をした相続人は相続欠格として相続権を失うおそれがあります(民法891条)。遺言書を発見した家族が、その場で勝手に開封してしまうケースにも注意が必要です。法務局の保管制度を利用していない自筆証書遺言は、遺言者が亡くなった後、相続人が家庭裁判所に遺言書を提出して「検認」の手続きを受ける必要があり、検認前に開封すると過料の対象になることがあります。実際に遺言書が本人の知らないところで書き換えられたのではないかと疑われるトラブルについては、別記事「遺言書を勝手に作成された場合」で解説していますので、心当たりがある方はあわせてご確認ください。
検認は遺言書の状態や形式を家庭裁判所が確認し記録する手続きであり、この場で遺言の有効性そのものを判断するわけではありません。公正証書遺言と、法務局の保管制度を利用した自筆証書遺言は、この検認の手続き自体が不要です。
こんな場合は専門家に相談した方がよい

財産の種類や金額が多い方、相続人の数が多い方、相続人以外の人への遺贈を考えている方、相続人同士の関係が複雑な方は、方式選びや形式面のチェックだけでは対応しきれない内容面の判断が必要になることがあります。遺留分を侵害していないか、財産の記載に漏れや矛盾がないかといった判断は、様式を整えるだけでは解決しません。将来、相続人の間で遺産分割の話し合いが争いに発展することを避けたい場合も同様です。内容面に不安がある、あるいは無効になる恐れを少しでも感じた場合は、作成の段階から司法書士や弁護士といった専門家に相談しておくと安心です。
まとめ|遺言書作成の注意点は、方式・書き方・内容・保管の4つを順番に確認する

遺言書作成で注意すべきことは、(1)自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言のどの方式を選ぶか、(2)選んだ方式の形式面の要件を満たしているか、(3)誰に何をどう渡すかという内容面に問題がないか、(4)書き終えた遺言書をどう保管するか、という4つの段階に分けて確認すると整理しやすくなります。方式選びに迷ったとき、形式面・内容面のチェックに不安が残るとき、保管方法を決めきれないときは、遺産相続のトラブルを防ぐためにも、司法書士事務所リーガルステーションまで、お気軽にご相談ください。
この記事の監修者
田中 良太司法書士
- 保有資格
- 司法書士・行政書士・宅地建物取引士・測量士補・簡裁訴訟代理等能力認定
- 所属
- 千葉県司法書士会(個人登録番号 第1702号/簡裁訴訟代理認定 第1401013号)
- 学歴
- 同志社大学 法学部 法律学科 卒業
- 経歴
- 相続を主とする司法書士事務所に勤務しながら司法書士試験に合格。債務整理・不動産登記・相続と、業務の異なる4つの司法書士事務所で10年以上の実務を経験
- 実績
- 相続・遺言の面談3,000人以上
- 専門
- 相続・生前対策に特化。税理士・弁護士などの専門家と連携し、遺言書の作成から相続後の手続きまで対応
お客様目線に立った、親切で正直な対応をお約束します。手続きのデメリットやリスクも、包み隠さずお伝えします。
