
税理士に遺言作成を相談するなら二次相続まで|負担を抑える遺言の組み方
税理士に遺言作成を相談したほうがいいと聞いても、弁護士・司法書士・行政書士に相談する場合と何が違うのか分かりにくいという声をよく聞きます。遺言書そのものの文案作成や、法的に有効な公正証書遺言の手続きは、一般的に弁護士・司法書士・行政書士が担う業務であり、税理士が単独で代理することは想定されていません。それでも税理士に声をかける価値があるのは、今回の相続(一次相続)だけでなく、配偶者が亡くなったときにもう一度発生する相続(二次相続)まで含めて、相続税の負担を見通せる専門家だからです。
この記事では、司法書士事務所リーガルステーションが、二次相続を見落とした遺言でなぜ税負担が増えやすくなるのか、二次相続まで見据えた遺言の組み方、生前贈与や事業承継と組み合わせて考える場合のポイントを整理します。税理士に相談する際にかかる費用の内訳は別記事「税理士に遺言書作成を依頼するといくら?相続税との関わりを解説」、相談するタイミングと税理士に任せられる業務の範囲は「遺言作成で税理士に相談するタイミングと流れ」で解説していますので、あわせてご覧ください。

税理士に遺言作成を相談する一番の理由は「二次相続」まで見据えられること

二次相続とは、最初の相続(一次相続)で財産を受け取った配偶者が亡くなり、その配偶者が持っていた財産(一次相続で受け取った分を含む)について、子などの相続人があらためて相続することを指します。弁護士・司法書士・行政書士に相談すれば、遺言者本人の意思を示す遺言書の文案作成や公正証書遺言の手続きを法的に有効な形で進めてもらえますが、業務の中心は書面として意思を実現することにあり、相続税額の計算や二次相続まで含めた税負担の見通しは業務範囲に含まれないのが一般的です。相続税法に詳しい税理士が関与することで、一次相続の分配を決める段階から、二次相続で発生する税額まで合わせて見積もり、合計の税負担が小さくなる分け方を検討できます。
特に相続財産の総額が相続税の基礎控除(3000万円に法定相続人の数×600万円を加えた額)を超える見込みがある場合は、遺言の内容を固める前に二次相続まで見据えたシミュレーションを税理士に依頼しておく価値があります。
自筆証書遺言・公正証書遺言のどちらでも、税理士に任せられる範囲は変わらない
税理士に相談できるのは、相続財産の評価や相続税額のシミュレーション、二次相続まで見据えた節税の余地、相続開始後の相続税申告や準確定申告、納税資金の確保についての助言です。遺言書そのものの文案作成や、作成した原本を公証役場に保管する手続きは、弁護士・司法書士・行政書士といった他の士業が担当するのが一般的で、税理士が単独でこれらを有償代理することは想定されていません。文案作成を担当する専門家への報酬は、税理士への相談料とは別枠で発生する点も見積もりの際に確認しておくと安心です。相続税対策まで含めて一つの窓口に任せたい場合は、信託銀行の遺言信託を利用する方法もありますが、二次相続まで見据えた柔軟な見直しがしづらく、契約時の手数料も専門家に個別依頼するより高額になりやすい点には注意が必要です。相続税の実務経験が豊富な税理士法人・会計事務所であれば、受遺者や付言事項の内容まで含めて、文案作成を担当する専門家と連携しながら助言してもらいやすくなります。
なお、自筆証書遺言・公正証書遺言のどちらを選ぶ場合でも、全文・日付・氏名の自書と署名・押印という民法の要式を満たす必要があります。公正証書遺言であれば証人2名以上の立ち会いのもとで公証役場(公証人役場)への手続きと公証人手数料の支払いが必要になり、未成年者や推定相続人、受遺者及びその配偶者・直系血族は証人になれません。自筆証書遺言は費用をかけずに作成できる一方、要式に不備があると法的な効力そのものが無効になるリスクや、自宅保管中の紛失・偽造・改ざんのおそれが残ります。法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用しない場合は、相続開始後に家庭裁判所での検認の手続きも必要です。費用をかけずに内容を秘密にできる秘密証書遺言という方式もありますが、内容の不備を公証人が確認しないため、自筆証書遺言と同様に無効のリスクが残ります。二次相続まで見据えた配分の考え方そのものは、どの方式を選んでも変わりません。
一次相続の配分の仕方で、二次相続の税負担は大きく変わる

配偶者の税額軽減をフルに使うと、二次相続で負担が増えることがある
相続税には配偶者の税額軽減という仕組みがあり、配偶者が取得した財産のうち、1億6000万円と配偶者の法定相続分相当額のいずれか多い金額までは相続税がかからないとされています(具体的な適用条件や金額は改正されることがあるため、最新の内容は税理士に確認してください)。この軽減をフルに使い、一次相続で配偶者に財産を多く残すと、一次相続の相続税は大きく抑えられます。ただし、配偶者がもともと持っていた財産と合わせた分だけ、配偶者自身が亡くなったときの二次相続での相続財産が増え、結果として一次相続・二次相続を合計した税負担が、子に多く分配していた場合より重くなるケースがあります。
どちらの分配が有利かは、配偶者自身の財産の額、配偶者の年齢や今後の生活費、相続人の数、不動産の評価額など複数の条件によって変わるため、一律に「配偶者に残さないほうがよい」とは言えません。税理士に一次相続と二次相続の税額を通算したシミュレーションを依頼し、具体的な数字で比較してから遺言の配分を決めるのが実務的な進め方です。
二次相続まで見据えた遺言の組み方

配偶者と子への配分のバランス
二次相続まで見据える場合、配偶者の税額軽減をどこまで使うかと、配偶者の今後の生活資金をどれだけ確保するかを、相続税の負担とは別に両立させる必要があります。配偶者の生活費や医療費・介護費に不安がなければ、子への分配を一次相続の時点で増やす選択肢も検討対象になります。一方で配偶者の生活資金が不足するような分配は、相続税の負担を軽くできても本人の生活を圧迫してしまうため、税負担の軽減だけを目的にせず、家族関係や配偶者の意向を踏まえて柔軟に検討することが円満な相続につながります。
子がいない夫婦は、二次相続で相続人が大きく変わることがある
子供のいない夫婦の場合、一次相続では配偶者と、亡くなった人の父母(父母が既に亡くなっていれば兄弟姉妹)が相続人になります。配偶者がすべての財産を受け取る遺言を残していれば一次相続はそれで完結しますが、その配偶者が亡くなる二次相続では、配偶者自身の血縁(配偶者の兄弟姉妹やその子である甥・姪)が相続人になり、最初の夫婦どちらの家系にも偏らない形で財産が渡ることがあります。内縁の配偶者や、認知した子、法定相続人以外の第三者へ財産を遺贈したい意向がある場合も、一次相続・二次相続のどちらの段階で誰が相続人になるかによって、実現できる分配が変わってきます。血のつながりが二次相続で別の家系に移る可能性がある場合は、遺言の内容を決める前に税理士だけでなく、文案作成を担当する専門家にも相続人の範囲を確認しておくことをお勧めします。
小規模宅地等の特例は、二次相続でも適用条件を確認し直す
自宅の土地について相続税評価額を大きく下げられる小規模宅地等の特例は、一次相続・二次相続のそれぞれで、同居の有無や保有継続などの適用条件を満たすかどうかを確認し直す必要があります。一次相続で配偶者が自宅を相続して特例の適用を受けていても、二次相続の時点で相続人(子など)が同居していない場合は、特例の適用条件を満たさず評価額が下がらないことがあります。自宅を誰に遺すかという遺言の内容は、二次相続での特例の使いやすさにも影響するため、早い段階で税理士に確認しておくと安心です。
生命保険の受取人を、二次相続まで見据えて設計する
生命保険金は、受取人があらかじめ指定されていれば受取人本人の固有の権利として扱われ、一定額までは相続税の非課税枠(法定相続人の数×500万円が目安)が設けられています。一次相続で配偶者を受取人にすると、その非課税枠の分だけ配偶者の財産が増え、二次相続でまた課税対象になります。子を受取人に指定しておく、あるいは一次相続・二次相続それぞれで非課税枠を使えるように保険契約を分けて検討するなど、受取人の設計も二次相続対策の一部として税理士に相談できる領域です。
遺言執行者も、二次相続では改めて必要になる
一次相続で配偶者を遺言執行者に指定していた場合、配偶者が亡くなる二次相続では、あらためて別の遺言執行者が必要になります。遺言執行者の業務には、相続人への通知、財産目録の作成、預貯金の解約、不動産の名義変更などが含まれ、被相続人(ここでは配偶者本人)の遺言が残っていなければ、相続人全員による遺産分割協議から始めることになります。二次相続の時点で遺言が残っているかどうかで、相続人の手間や争い・紛争の起きやすさが変わるため、配偶者自身にも二次相続に備えた遺言を用意してもらうよう勧めておくことも、税理士に相談する際の重要なポイントです。
生前贈与・事業承継と組み合わせて二次相続対策を考える場合
生前贈与を計画的に行うことで、相続財産そのものを減らし、一次相続・二次相続それぞれの相続税を軽くする対策も考えられます。贈与税には年間110万円の基礎控除があり、相続時精算課税という制度を選択すると、将来の相続税額とあわせて計算する形で、まとまった額の贈与を行うこともできます(制度の選択は一度行うと原則撤回できないなど注意点があるため、利用前に税理士へ相談することをお勧めします)。生前贈与をどのタイミングでどの相続人に行うかは、遺言の内容と矛盾しないよう、遺言作成と並行して検討しておくと、相続開始後の遺産分割がスムーズになります。
家業を営んでいて事業用資産を後継者に集中させる事業承継まで見据える場合は、事業承継税制(一定の要件を満たすと相続税・贈与税の納税が猶予される制度)の利用も検討対象になります。事業承継税制は適用要件や手続きが細かく、適用を受けた後も一定期間の報告義務があるため、遺言の内容を決める前に、この分野の実務経験がある税理士に相談しておくことが欠かせません。後継者に事業用資産を多く遺贈する内容にすると、他の相続人との間で遺留分(一定の相続人に法律上保障された最低限の取り分)をめぐる争いや紛争に発展しやすいため、遺留分を侵害しない範囲になっているかどうかも、二次相続まで見据えた検討と並行して確認しておくと安心です。
二次相続のシミュレーションを依頼する際に準備しておきたいこと

二次相続まで含めたシミュレーションを税理士に依頼する際は、一次相続の対象となる財産目録に加えて、配偶者がもともと所有している財産(自宅以外の不動産、預貯金、生命保険、非上場株式など)の概要も伝えられるようにしておくと、精度の高い見積もりを受けられます。相続人を確定するための戸籍謄本、不動産があれば登記事項証明書や固定資産税評価証明書といった書類もあわせて準備しておくと、税理士だけでなく、不動産の名義変更(登記)を担当する司法書士との連携もスムーズになります。名義変更には登録免許税という税金もかかるため、二次相続まで見据えた全体のコストとして確認しておくとよいでしょう。相続財産に不動産や非上場株式が多く、二次相続の納税資金になるキャッシュが不足しそうな場合は、生命保険への加入や一部資産の売却・換金によって資金を確保しておく対策も、このタイミングで相談できます。配偶者の年齢や今後想定される生活費、先妻・後妻それぞれの子がいるかどうか、長男が既に亡くなっていて孫が代襲相続する可能性があるかなど、相続人の関係が分かる簡単な家系図を用意しておくと、面談がスムーズに進みます。
税理士を選ぶ際は、二次相続のシミュレーションや事業承継まで含めた実務経験が豊富かどうか、遺言の文案作成を担当する弁護士・司法書士・行政書士との連携体制が整っているかどうかを確認するとよいでしょう。相続税は税理士によって得意分野が分かれる税務分野であるため、相続税専門あるいは二次相続対策の取扱件数が多いことを公表している税理士法人・会計事務所を選ぶと、精度の高い助言を期待しやすくなります。
まとめ|税理士に遺言作成を相談する価値は、二次相続まで見通せること
税理士に遺言作成を相談する一番の理由は、遺言書そのものの文案作成ではなく、今回の相続(一次相続)だけでなく配偶者が亡くなったときのもう一度の相続(二次相続)まで含めて、相続税の負担を見通せることにあります。配偶者の税額軽減をどこまで使うか、小規模宅地等の特例や生命保険の受取人をどう設計するか、生前贈与や事業承継と組み合わせるかによって、一次相続・二次相続を合計した税負担は大きく変わります。司法書士事務所リーガルステーションでは、税理士など他の専門家とも連携しながらご相談を承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。相談時にかかる費用の内訳やタイミングは、別記事「税理士に遺言書作成を依頼するといくら?相続税との関わりを解説」「遺言作成で税理士に相談するタイミングと流れ」でまとめています。
