税理士に遺言書作成を依頼するといくら?相続税との関わりを解説
遺言書を作成するにあたり、相続税のことも考えて税理士に相談したほうがよいのではと考える方は少なくありません。人がいつ亡くなるかは分からないからこそ、早めの準備が大切ですが、税理士は税務の専門家であり、遺言書そのものの文案作成や公正証書遺言の手続きを税理士が単独で代理できるかどうかは、依頼前に業務範囲として確認しておきたいポイントです。
この記事では、司法書士事務所リーガルステーションが、税理士に遺言書作成を相談する場合に実際どこまで任せられるのか、相談時にかかる費用の内訳、税理士への相談が特に役立つケース、弁護士・司法書士・行政書士と連携する場合の費用の見え方まで整理します。方式別・依頼先別の費用相場を全体から知りたい方は、別記事「遺言書作成費用の相場|自筆証書遺言・公正証書遺言・専門家依頼の費用をまとめて解説」もあわせてご覧ください。

税理士に遺言書作成そのものを依頼できる?業務範囲の確認
税理士の業務は、税理士法によって税務代理(税務署への申告や申請の代理人となること)、税務書類の作成、税務相談の3つに定められています。遺言書は相続税の申告書とは異なり、遺言者本人の意思を示す私文書であるため、その文案を税理士が有償で代理作成することは、税理士本来の業務範囲にあたらない可能性があります。遺言の文案作成や公正証書遺言の手続きサポートは、一般的に弁護士・司法書士・行政書士が担う業務とされており、税理士が単独でこれらを行うことについては慎重な見方があります。なお、税理士は相続税の申告だけでなく、相続が始まった年の所得税の確定申告(準確定申告)についても相談できる専門家です。
実務では、相続税に強い税理士事務所が、弁護士・司法書士・行政書士と提携してワンストップで相談を受け付けているケースが多く見られます。この場合、税理士は相続財産の評価や相続税額のシミュレーション、税負担を軽くする財産の分配についてのアドバイス・助言を担当し、遺言書の文案作成や公正証書遺言の手続きそのものは提携先の専門家が担当する、という役割分担になるのが一般的です。税理士が相続税対策に関与する場合は、節税の余地があるかどうかも含めて助言を受けられます。士業という枠組みで見ると、税理士は相続税法に詳しい専門家であり、遺言の法的効力や書き方そのものを判断する役割は弁護士・司法書士・行政書士が担います。公正証書遺言の作成時に税理士が証人として同席・立ち会うことも考えられますが、これは証人としての立会いであり、文案作成の代理とは別の話です。どの専門家がどこまで担当するのかは事務所によって異なるため、相談時に業務の範囲を確認しておくと安心です。
税理士に相談する場合に実際にかかる費用の内訳

相続税は、被相続人(亡くなった方)の財産を承継する際にかかる税金です。税理士に遺言書作成について相談する場合の費用は、大きく分けて「税理士への相談料・税務面のサポート費用」「遺言書の文案作成や手続きを担当する専門家への報酬」「公証人手数料や戸籍謄本などの実費」の3つで構成されます。それぞれどのような内容に対する費用なのかを分けて理解しておくと、見積りを受け取ったときに内容を把握しやすくなります。
相続税のシミュレーション・税務相談料
税理士への相談料は、初回相談を無料から1万円程度としている事務所もありますが、相続財産の評価や相続税額のシミュレーションまで踏み込んだ税務相談は、時間制で5000円から2万円程度を目安とする事務所が多く見られます。相続税の申告が必要になることをあらかじめ見込んで、申告業務も含めた一式の見積りを提示する事務所もあります。相続財産に土地や非上場株式など評価が複雑な資産が含まれる場合は、評価作業の分だけ相談料・報酬が上がる傾向があります。なお、相続税を納めた後に評価額の見直しなどで還付を受けられる場合もあるため、申告後も内容に不満や疑問が残るときは税理士に確認するとよいでしょう。
遺言書の文案作成・公正証書遺言の手続きにかかる費用
遺言書の文案作成や、公正証書遺言にする場合の公証役場とのやり取りは、税理士と提携する弁護士・司法書士・行政書士が担当するのが一般的です。報酬の目安は依頼先によって異なり、行政書士は3万円から10万円程度、司法書士は5万円から15万円程度、弁護士は10万円から20万円程度とされることが多いようです。相続財産に不動産があり、将来の相続登記(不動産登記)まで見据えるなら、司法書士との連携が有効です。不動産の名義変更には登録免許税という税金もかかるため、実費としてあわせて確認しておくとよいでしょう。税理士事務所がワンストップで受け付けている場合でも、この報酬は税理士への相談料とは別枠で発生する点に注意が必要です。見積りを受け取る際は、税務面の費用と文案作成・手続きの費用が分けて示されているかを確認しておくと、内容を比較しやすくなります。
公証人手数料・証人・戸籍謄本などの実費
公正証書遺言を選ぶ場合は、専門家への報酬とは別に、公証役場へ支払う公証人手数料がかかります。手数料は公証人手数料令という政令が法的根拠になっており、遺言の対象となる財産の評価額(目的の価額)に応じて段階的に高くなる仕組みです。100万円以下なら5000円、1000万円以下なら17000円、5000万円以下なら29000円が目安で、これに加えて相続人を確定するための戸籍謄本(1通450円程度)や、不動産があれば登記事項証明書、固定資産税評価証明書といった書類の取得実費が数千円程度かかります。作成後、公正証書遺言の原本は公証役場に保管されるため、自宅保管に伴う紛失のおそれがありません。
公正証書遺言の作成には証人2名以上の立ち会いが必要ですが、未成年者や推定相続人、受遺者及びその配偶者・直系血族は、民法が定める要件により証人になれません。専門家の事務所で証人を手配してもらう場合は、1人あたり1万円前後の手数料が実費として加わるのが実務上の相場です。税理士が相続税の計算のために取得した資料を、文案作成を担当する専門家と共有できる体制の事務所であれば、書類取得の重複を減らせることもあります。
なお、自筆証書遺言は全文・日付・氏名を自書し署名・押印(捺印)することで法的効力を持ちますが、要式に1つでも不備があると無効になるリスクに加え、紛失や偽造・変造のおそれも残ります。自宅で保管し法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用しない場合は、遺言者が亡くなった後に家庭裁判所での検認という手続きも必要になります。保管制度を利用すればこの検認は不要になるため、税理士に相続税の相談をする際に、書き方に不安がある点や保管制度の利用についてもあわせて触れておくと、相続開始後の手続きの見通しを立てやすくなります。
税理士への相談が特に役立つケース

財産の内容がシンプルで相続税の心配がない場合は、税理士への相談を必須とまでは言えません。一方で、次のような事情がある場合は、遺言書作成の段階から税理士に相談しておくことが役立ちます。
- 相続財産の総額が相続税の基礎控除(3000万円に法定相続人の数×600万円を加えた額)を超える可能性がある場合
- 土地や非上場株式など評価方法が複雑な資産が多い場合
- 家業を営んでいて、長男など特定の相続人に事業用資産を集中させる事業承継まで見据えたい場合
- 生前贈与を組み合わせて、贈与税と相続税の負担を合わせて抑えたいと考えている場合
- 先妻・後妻それぞれの子がいる、子供のいない夫婦である、兄弟姉妹だけが相続人になる、長男が既に亡くなっていて代襲相続が関わるなど、相続人の関係が複雑な場合
- 内縁の配偶者や、世話になった孫、親族以外の第三者へ財産を遺贈したい場合、法定相続人以外の団体への寄付を考えている場合
相続人同士の仲が良好でない場合や、認知した子がいる場合も、相続税の計算と遺産分割の両面から早めに税理士へ相談しておくと安心です。
特に土地が相続財産に含まれる場合は、小規模宅地等の特例が使えるかどうかで相続税額が大きく変わるため、遺言の内容を決める前に税理士に評価額の見立てを確認しておくと、相続人ごとの税負担の差を踏まえた分配を検討しやすくなります。遺留分(一定の相続人に法律上保障された最低限の取り分)を侵害する内容にすると、相続税の計算だけでなく遺産分割そのものが相続人間の法的な紛争に発展しやすくなります。法定相続人の数は相続税の基礎控除額の計算にも影響するため、法定相続分と遺留分の両方を踏まえて遺言内容を検討することが円満な相続につながります。故人の意思を明確に残す(遺す)ことは、後々の相続人間の争いを防ぐことにもつながります。なお、具体的な税額や特例の適用可否は、税理士に直接確認することをお勧めします。
相続財産に不動産や非上場株式が多く、納税資金になるキャッシュが不足しそうな場合は、生命保険への加入や一部資産の売却・換金によって、納税額に見合う資金を確保しておく対策も税理士に相談できる領域です。遺産相続にあたって一部を寄付し社会貢献にあてたいという意向がある場合も、相続税の計算に影響するため、遺言の内容を決める前に税理士へ確認しておくと安心です。事業承継や生前贈与まで見据える場合は、遺言作成の早い段階から税理士に相談しておくと安心です。
税理士・弁護士・司法書士・行政書士が連携する場合の費用の見え方
税理士と弁護士・司法書士・行政書士が連携して遺言書作成を進める場合、費用の示され方は事務所によって2パターンに分かれます。1つは、税理士への相談料と、文案作成・手続きを担当する専門家への報酬を、それぞれ個別の見積りとして提示するパターンです。もう1つは、相続税対策を含めた遺言書作成一式としてまとめた見積りを提示するパターンで、この場合は内訳が示されないこともあります。どちらの場合も、誰がどの業務を担当し、それぞれの報酬がいくらなのかを依頼前に確認しておくと、後から想定外の請求を受けるリスクを減らせます。なお、相続税対策まで含めて一つの窓口に任せたい場合は、信託銀行の遺言信託を利用する方法もありますが、契約時の手数料が専門家に個別依頼するより高額になりやすい点には注意が必要です。
相続に関わる関係者が多い案件では、同じ戸籍謄本や財産の評価資料を複数の事務所がそれぞれ別に取得し、実費が重複して請求されることもあります。資料を共有できる体制が整っている事務所かどうかも、見積りを比較する際のポイントです。また、税理士が遺言執行者への就任を含めて提案してくる場合もありますが、遺言執行には相続人への通知や財産目録の作成、預貯金の解約、不動産の名義変更などの手続きが含まれ、税理士単独で対応できない部分は弁護士・司法書士と連携することになるため、執行時の役割分担と報酬の見込みもあわせて確認しておくと安心です。
税理士に相談する際に準備しておきたいこと
税理士への相談をスムーズに進めるためには、相続財産の概要を財産目録の形でまとめておくことが役立ちます。不動産であれば固定資産税の納税通知書や登記事項証明書、預貯金であれば残高が分かる通帳や取引残高報告書、過去に生前贈与を行っている場合はその記録も添付できる状態にしておくと、相続税額のシミュレーションの精度が上がります。家族関係が複雑な場合は、相続人になる人の範囲を示す簡単な家系図を用意しておくと、税理士だけでなく文案作成を担当する専門家との面談も円滑に進みます。自分の意思を明確に伝え、確実に実現するためにも、早めの準備が有効です。
税理士を選ぶ際は、相続税の実務経験が豊富な事務所かどうか、弁護士・司法書士・行政書士との連携体制が整っているかどうかを確認するとよいでしょう。相続税は税理士によって得意分野が分かれる税務分野であるため、相続税専門あるいは相続税の取扱件数が多いことを公表している税理士法人・会計事務所を選ぶと、評価や対策の精度を期待しやすくなります。
まとめ|税理士は遺言書の文案作成ではなく相続税の見立てで役立つ専門家

税理士に遺言書作成を相談する場合、遺言書そのものの文案作成や公正証書遺言の手続きは、一般的に弁護士・司法書士・行政書士が担う業務であり、税理士はこれらと連携しながら被相続人の財産の評価や相続税額のシミュレーション、税負担を抑える財産の分配について助言する役割を担うのが実務の形です。かかる費用は、税理士への相談料、文案作成・手続きを担当する専門家への報酬、公証人手数料や実費の3つに分けて考えると、見積りの内容を把握しやすくなります。相続財産が相続税の基礎控除を超える可能性がある場合や、事業承継・生前贈与まで見据えたい場合は、遺言書作成の段階から税理士に相談しておくことをお勧めします。司法書士事務所リーガルステーションでは、税理士・弁護士など他の専門家とも連携しながらご相談を承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
