行政書士の遺言書作成費用、見積りと想定が変わる具体的なケースと契約前のチェックポイント
行政書士に遺言書作成を依頼するとき、見積りの金額だけを見て安心していると、実際の請求額が見積りと変わってしまうことがあります。行政書士費用の報酬相場や内訳、見積書そのものの読み方はすでに別の記事で解説していますが、具体的にどんな場面で金額が変わるのか、契約前にどこを確認しておけば想定外を避けられるのかは、実例に沿って見た方が分かりやすい部分です。
この記事では、司法書士事務所リーガルステーションが、行政書士に遺言書作成を依頼した方から実際によく相談を受ける「見積りより高くなった」「逆に安く済んだ」という具体的なケース、契約前に委任契約書・見積書で確認しておきたいチェックポイント、費用トラブルになりやすい事務所の特徴と避け方まで整理します。報酬相場や内訳の全体像は別記事「遺言書作成の行政書士費用はいくら?報酬相場と内訳を解説」、見積書に書かれる3つの金額の見分け方は別記事「行政書士の遺言書作成費用、見積り前に確認したい内訳と変動条件」で詳しく解説していますので、あわせて参考にしてください。

行政書士費用が「見積りより高くなった」で多い具体的なケース

行政書士に遺言書作成を依頼した方から、初回の見積り時の金額より最終的な請求額が高くなったという相談を受けることがあります。多くは、行政書士法に基づく業務の範囲内であっても、見積りを取った時点では確定していなかった事情が、手続きを進める中で明らかになったことが原因です。よくあるケースを具体的に見ていきます。
相続人・受遺者の数や本籍地が見積り時より増えたケース
見積りの時点では把握していなかった相続人や受遺者が後から見つかったり、本籍地や不動産の所在地が複数の市区町村にまたがっていることが分かったりすると、収集する戸籍謄本・除籍謄本・住民票・登記事項証明書などの通数が増え、実費とサポート報酬の両方が見積りより高くなります。相続人の範囲は、依頼者本人が把握している家族構成だけでは分からない場合もあり、戸籍を遡って調べた結果、想定していなかった相続人が判明することもあります。
自筆証書遺言から公正証書遺言へ変更した、証人の手配を依頼したケース
当初は自筆証書遺言で見積りを取っていたものの、形式不備で無効になるリスクを避けたいという理由から、途中で公正証書遺言に変更する方もいます。この場合、公証役場へ支払う公証人手数料が新たに加わるうえ、証人2名の立ち会いが必要になります。証人は知人に頼める場合もありますが、未成年者や利害関係人は証人になれないため、自分で用意できず事務所に手配を依頼すると、1人あたり1万円前後の謝礼が実費として加わります。さらに、公証人に自宅や病院への出張を依頼する場合は、公証役場へ自分で出向く場合に比べて手数料が1.5倍になるほか、日当・交通費も加算されるため、総額が見積りより大きく上がりやすい条件です。遺贈先が複数に分かれる場合は、財産の評価額(目的の価額)が受け取る人ごとに算出されて合算されるため、同じ財産総額でも手数料が高額になりやすい点も見積り時点では分かりにくい要素です。
遺留分や遺産分割の調整で文案作成に時間がかかったケース
相続人の一部に遺留分を侵害するおそれがある財産配分を検討している場合、侵害額を抑えるための調整に時間がかかり、原案・案文の作成にかかるサポート報酬が相場の上限に近づくことがあります。また、見積り時点では相続人間の遺産分割についての方向性がまとまっていなかった場合、協議の結果を待って文案を確定させることになり、当初の見積りより打ち合わせの回数が増えることもあります。法的効力を持たない付言事項(家族への感謝の言葉など)を文案に加えたいという要望も、書き方を工夫する分だけ作成の手間が増える要因になります。
遺言執行者への就任を追加で依頼したケース
遺言書作成時のサポートとは別に、将来の相続開始後(本人の死後)に遺言執行者への就任まで行政書士に依頼する場合、作成費用とは別枠で執行報酬が発生します。遺言執行者は、相続人への通知、財産目録の作成、金融機関での預貯金(預金)の解約、不動産の名義変更(相続登記が必要な場合は司法書士との連携)などを行う役割で、かつて日本弁護士連合会が定めていた旧報酬基準を目安にする事務所も見られます。不動産が複数ある場合は固定資産税の評価証明書を取得する実費も加わり、作成時の見積りに執行報酬が含まれていないことに後から気づくケースもあるため、依頼する業務の範囲を見積り段階で確認しておくことが大切です。
公正証書遺言から秘密証書遺言・遺言信託へ切り替えを検討したケース
遺言書には自筆証書遺言・公正証書遺言のほかに秘密証書遺言という方式もあります。内容を公証人にも知られずに作成できる点が特徴ですが、公証人による内容のチェックが入らないため実務での利用は少なく、途中でこの方式への変更を相談すると再見積りになることがあります。また、公正証書遺言の作成から遺言執行まで信託銀行などの金融機関がまとめてサポートする遺言信託への切り替えを検討する場合、契約時の費用だけで数十万円の水準になり、行政書士への依頼よりも高額になりやすい点も見積りが変わる要因です。
逆に「見積りより安く済んだ」ケース
反対に、見積り時の想定より安く済んだという相談もあります。費用が下がりやすい条件を知っておくと、依頼前の準備にも役立ちます。
本人分の戸籍謄本・住民票・証明書など、依頼者自身で収集できる書類を自分で取得し、行政書士への代行を依頼する範囲を絞ったケースは、実費とサポート報酬の両方を抑えやすくなります。また、相続人が兄弟姉妹だけで争いの火種がない場合や、一部の親族が相続放棄を予定している場合は、対象となる財産や親族の範囲が狭まり、文案の調整も簡単になって報酬が相場の下限に近づきます。自筆証書遺言は本人が手書きで作成する方式のため、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用して紛失・改ざんのリスクに備えた場合も、民法が定める自書・日付・氏名・押印の要件を満たせば公証人手数料がかからないぶん、総額を抑えやすい方式です。
契約前に見ておきたい委任契約書・見積書のチェックポイント

見積り額の想定外を減らすには、契約前に委任契約書や見積書の記載内容を確認しておくことが有効です。次の点を具体的にチェックしておきましょう。
業務範囲がどこまで明記されているか
相談対応・文案(案文)作成・書類収集代行のうち、どこまでが見積り額に含まれているかを確認します。戸籍謄本などの収集は依頼者本人の代理人として請求できる範囲にとどまるため、他の相続人の分まで代行してもらえるかは事務所ごとに対応が異なります。業務単位で分けて記載する事務所もあれば、一式でまとめて提示する事務所もあるため、実務上どこまで代行してもらえるかを口頭でも確認しておくと安心です。
追加費用が発生する条件が書かれているか
相続人・受遺者の数が増えた場合、本籍地や不動産の所在地が複数にまたがる場合、方式を途中で変更した場合など、総額が変わる条件が見積書や委任契約書に明記されているかを確認します。複雑な事情がある場合に報酬が上がる可能性が、事前にどの程度説明されているかも比較のポイントです。
執行報酬・証人謝礼など、作成費用以外の費用の扱い
遺言執行者への就任を依頼する場合の執行報酬、証人を事務所に手配してもらう場合の謝礼、公証人の出張を依頼する場合の日当・交通費が、見積りに含まれているか、作成時点でどの程度の見込みが示されているかを確認します。相続財産の規模が相続税の申告が必要な水準になる場合は、税理士や信託銀行との連携体制があるかどうかも確認しておくと安心です。
中途解約・方式変更時の扱い
依頼後に方式を自筆証書遺言から公正証書遺言へ変更する、あるいは依頼そのものを取りやめるといった場合に、それまでの作業分の報酬がどう計算されるか、支払う金額がどう変わるかが契約書に書かれているかを確認しておきましょう。委任契約書の書面に署名・捺印する前に、これらの条件を読み合わせておくと、後から「書面に書いてあった」という水掛け論を避けられます。
費用トラブルになりやすい事務所の特徴と避け方
見積りと実際の請求額に大きな差が出やすい事務所には、共通する特徴があります。依頼先を選ぶ際の目安として押さえておきましょう。
報酬・実費・公証人手数料の区別を明示せず、総額だけを一式で示す事務所は、後から何にいくらかかったのかが分かりにくく、比較も難しくなります。日本行政書士会連合会や日本公証人連合会が公開している目安と見積り額を見比べて、公的な手数料部分と専門家報酬の部分が区別できるかを確認するとよいでしょう。また、相続人間に争いがあり紛争性の高い場面にまで対応できると口頭で説明する事務所には注意が必要です。遺産分割協議の取りまとめや他の相続人との交渉は、弁護士法が禁じる非弁行為にあたるおそれがあり、行政書士の業務範囲を超えます。話し合いでまとまらず家庭裁判所での手続きが見込まれる場合は、早めに弁護士へ相談できる連携体制があるかを確認してください。公正証書遺言の証人について、未成年者や推定相続人、受遺者とその配偶者・直系血族など民法が定める利害関係人を証人として用意しようとする事務所も、後から証人を立て直す手間と費用がかかるため避けたいポイントです。なお、公正証書遺言は原本が公証役場に保管され、依頼者には正本・謄本が交付される仕組みのため、原本の保管場所について説明がない事務所も確認を重ねた方がよいでしょう。
不安なときの相談先と専門家の選び方
行政書士は、権利義務に関する書類作成の専門家として文案作成や書類収集代行に強みがあり、報酬を抑えやすい一方、相続財産に不動産が含まれる場合の名義変更(相続登記・不動産登記)は司法書士の独占業務のため単独では対応できません。遺言の内容に不動産の遺贈や相続が含まれる案件、将来相続登記まで見据えたい案件では、司法書士や弁護士(法律事務所)と連携できる事務所かどうかが依頼先選びのポイントになります。任意後見・成年後見契約など生前対策まであわせて相談したい場合も、対応できる事務所かどうかを依頼前の面談で確認しておくと、相談の往復を減らせます。費用の見積り自体に納得できない場合や、説明の仕方に不安を感じる場合は、1つの事務所だけで決めず、無料の法律相談なども利用しながら複数の見積りを比較してから依頼先を選ぶことをおすすめします。遺産相続の手続き全体を見据え、作成時の負担だけでなく死後に相続人へかかる負担まで含めて相談できる事務所を選ぶと安心です。
まとめ|見積り時点では分からない変動要因を知っておくために

行政書士に遺言書作成を依頼した費用が見積りと変わる主な原因は、相続人・受遺者の数や本籍地の広がり、方式の変更、遺留分への配慮、遺言執行者への追加依頼といった、見積り時点ではまだ確定していない事情です。契約前に委任契約書・見積書で業務範囲と追加費用の条件を確認しておくこと、報酬・実費・公証人手数料の区別が明確な事務所を選ぶことが、想定外の請求を避けるポイントになります。報酬相場や内訳の全体像を先に知りたい方は別記事「遺言書作成の行政書士費用はいくら?報酬相場と内訳を解説」、見積書の読み方を確認したい方は別記事「行政書士の遺言書作成費用、見積り前に確認したい内訳と変動条件」もあわせてご覧ください。司法書士事務所リーガルステーションでは、見積りの内訳を明確にしたうえでご相談を承っておりますので、行政書士費用について不安な点がある方はお気軽にお問い合わせください。
