遺言作成の報酬を抑えるには|依頼前の準備と契約書の確認ポイント
行政書士・弁護士・司法書士に遺言書作成を依頼したときにかかる「報酬」は、同じ内容の依頼でも依頼先によって数万円から数十万円の差が出ます。報酬の仕組みそのものや依頼先ごとの違いが分かっても、「自分の場合、実際にどうすれば報酬を抑えられるのか」までは分かりにくいものです。
この記事では、司法書士事務所リーガルステーションが、遺言作成の報酬を抑えるために依頼前にできる準備、複数の事務所の無料相談を比較するときの聞き方、委任契約書で確認しておきたい項目まで、依頼する側の目線で整理します。報酬そのものの構成や差が出る理由は別記事「遺言書作成報酬」、行政書士報酬を決める3つの算定方式は別記事「行政書士の遺言書作成報酬」で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

遺言作成の報酬は「準備の仕方」でも変わる

専門家報酬の多くは、相談対応や文案作成を含む基本報酬と、相続人・受遺者の数や相続財産の種類が多い場合、書類の収集に手間がかかる場合に発生する加算報酬の2段階で構成されています(内訳の詳しい読み方は別記事「遺言書作成報酬」をご覧ください)。加算報酬は依頼者側の事情によって増減する部分が多いため、依頼前にどこまで自分で準備できるかを整理しておくだけでも、見積もりに表れる金額や打ち合わせの回数が変わってきます。報酬を値切る交渉をするという意味ではなく、専門家に代行してもらう業務の範囲そのものを絞ることで、結果として払う報酬を抑えられるという考え方です。
自分で準備しておくと報酬を抑えやすいこと
戸籍謄本・住民票など必要書類を自分で集めておく
遺言書作成には、相続人を確定するための戸籍謄本(1通450円程度)、住民票(1通300円程度)、印鑑証明書など、複数の役所で発行してもらう書類が必要になります。業務を積み上げて算定する事務所では、この収集代行を依頼する範囲を絞るほど報酬が抑えられる傾向があり、本籍地が遠方でない、相続人の数が少ないといった事情があれば、平日に役所の窓口へ行ける方は自分で取得しておくことで、報酬のうち収集代行分を減らせます。マイナンバーカードがあればコンビニ交付サービスで取得できる自治体も増えています。
財産の内容を一覧にしておく(財産目録の下書き)
不動産の登記事項証明書や固定資産税の納税通知書、預貯金の残高、上場株式の取引残高報告書など、財産の内容を示す資料を先に揃えて簡単な一覧にしておくと、専門家が財産目録を作成する手間が減ります。相続財産の種類や数が多いほど加算報酬が発生しやすい事務所もあるため、漏れなく一覧化しておくことは、見積もり自体の精度を上げることにもつながります。
相続人・受遺者の関係や分け方の希望を整理しておく
誰にどの財産をどれだけ渡したいか、相続人以外の人や団体への遺贈を考えているかを、相談前にメモとして整理しておくと、専門家との打ち合わせの回数を減らせます。打ち合わせ1回あたりに時間制の相談料を設定している事務所もあるため、方向性が固まっていない状態で何度も相談を重ねるより、ある程度希望をまとめてから相談する方が、結果的に報酬を抑えやすくなります。ただし、遺留分を侵害する配分になりそうな場合は、無理に自分だけで決めずに専門家へ早めに相談してください。相続財産の額によっては相続税の申告が必要になることもあり、不動産の名義変更まで見据える場合や、相続財産に借金が多く相続放棄を検討する必要がある場合は、司法書士・税理士と連携できる事務所かどうかも、整理の段階であわせて確認しておくと安心です。
複数の事務所の無料相談を使い、見積もりの前提をそろえる

士業(行政書士・弁護士・司法書士)の多くが、初回の相談を無料または低額で受け付けています。無料相談では、報酬の算定方式(定額制か、業務を積み上げる方式か、遺産の価額に応じた割合制か)、加算報酬が発生する条件、公証役場に支払う公証人手数料や証人手配料が専門家報酬と別枠になっているかを質問しておくと、複数の見積もりを同じ前提で比較しやすくなります。算定方式そのものの違いは別記事「行政書士の遺言書作成報酬」で詳しく解説しています。報酬だけを見るのではなく、公証人手数料や実費まで合わせた総額で見積もりを比較することも忘れないようにしましょう。
相談時には、前述の財産の一覧や相続人関係のメモを持参すると、その場で現実的な見積もりに近い金額を提示してもらいやすくなります。公正証書遺言を希望する場合は、公証人が自宅や病院へ出張するかどうかでも日当・交通費が変わるため、出張の可能性がある場合はその旨も伝えておきましょう。最新の手数料や出張の基準は、日本公証人連合会のウェブサイトでも確認できます。証人を自分で用意して謝礼を抑えたい場合は、未成年者や推定相続人及びその配偶者・直系血族などは民法974条により証人になれないと定められているため、お願いできる相手がいるかも無料相談の前に確認しておくとよいでしょう。
委任契約書で確認しておきたい項目
口頭の説明だけで依頼を決めず、委任契約書(業務委託契約書)に次の項目が明記されているかを確認してから契約することが、あとからの行き違いを防ぎます。
- 報酬の算定方式と、加算報酬が発生する具体的な条件
- 着手金の有無と、契約後に依頼を取りやめた場合の精算方法
- 公証人手数料・実費など、専門家報酬以外にかかるお金が別枠になっているか
- 遺言執行者への就任を依頼する場合、作成時の報酬と執行報酬が別建てで記載されているか
- 報酬を支払うタイミング(契約時・完成時・分割の可否)
特に遺言執行者への報酬は、作成時の報酬とは発生するタイミングも算定方法も異なり、契約書に明記されていないと相続発生後に相続人が想定外の負担を感じることがあります。契約前にこの点だけは必ず確認しておきましょう。
報酬を抑えようとして見落としやすい注意点

自分で準備や整理を進めることは報酬を抑える有効な手段ですが、安さだけを優先すると、自筆証書遺言が民法の定める要件を満たさず法的な効力を持たず無効になったり、自宅保管による紛失・改ざん・偽造のリスクが残ったりすることがあります。法務局の自筆証書遺言書保管制度を使えば紛失のリスクは抑えられますが、内容が有効かどうかまでは審査されず、申請手数料も別途かかります。また、遺留分への配慮が不足した内容にすると、相続人同士が遺産分割で揉める、紛争に発展することもあり、結果的に報酬以上の負担につながりかねません。公証役場へ支払う公証人手数料(公証人手数料令という政令で定められています)や、戸籍謄本などの取得にかかる実費、信託銀行の遺言信託を利用する場合の執行報酬のように、金融機関や公的機関へ支払うお金は専門家報酬とは別物のため、どれだけ準備しても減らせない費用です(内訳は別記事「遺言書作成費用相場」をご覧ください)。自筆証書遺言を自宅保管すると、相続開始後に家庭裁判所での検認手続きが必要になる点も、費用だけでなく手間の面で考慮しておきたいポイントです。複数の見積もりを比較する際の視点は、別記事「遺言書作成費用比較」でも整理していますので、あわせてご確認ください。
まとめ|報酬を抑えるコツは「準備」と「契約前の確認」
遺言作成の専門家報酬は、依頼者自身がどこまで準備できるかによって、加算報酬の発生しやすさが変わります。戸籍謄本などの書類収集、財産の一覧化、相続人関係の整理を済ませたうえで複数の事務所の無料相談を利用し、算定方式や加算条件を同じ前提で比較することが、報酬を抑えながら納得して依頼先を選ぶポイントです。委任契約書を結ぶ前には、算定方式・加算条件・執行報酬の扱い・支払いタイミングを必ず確認してください。なお、報酬や準備の工夫とは別に、家族への感謝を伝える付言事項を遺言書に添えることもできます。報酬の仕組みそのものについては別記事「遺言書作成報酬」、行政書士報酬の算定方式については別記事「行政書士の遺言書作成報酬」もあわせてご覧ください。ご自身の状況に合った進め方について相談したい方は、司法書士事務所リーガルステーションまでお気軽にお問い合わせください。
