遺言書の作成費用|支払い方法と、足りない場合の対処法
遺言書の作成費用は、自筆証書遺言か公正証書遺言かという方式の違いや、専門家に依頼するかどうかによって数百円から数十万円まで幅があります。金額の内訳や相場はすでに別の記事で詳しく解説していますが、実際に依頼を検討する段階になると、「いつ、どうやって支払うのか」「まとまった金額をすぐに用意できないときはどうすればよいのか」という、支払いそのものに関する疑問が出てくる方も少なくありません。
この記事では、司法書士事務所リーガルステーションが、遺言書の作成費用を実際に支払う場面に焦点を当て、支払いのタイミングと方法、分割払いに対応している事務所の見分け方、費用がどうしても用意できないときに検討できる選択肢、予算内に収めるための優先順位のつけ方まで整理します。方式ごとの金額の相場やパターン別の具体的な金額を先に知りたい方は、本文中でご紹介する関連記事もあわせてご確認ください。

費用は「いくらか」だけでなく「どう払うか」も押さえておきたい
遺言書の作成にかかる費用の内訳や、財産額別の具体的な金額のシミュレーションは、遺言書作成費用相場や遺言書作成の金額の記事で詳しく解説しています。この記事では金額の内訳の説明は最小限にとどめ、実際に費用を用意し、支払う場面で迷いやすいポイントに絞って解説します。あらかじめ支払い方法や分割の可否を知っておくと、依頼先を選ぶ際の判断材料が増え、当日になって想定外の負担に慌てることもなくなります。
なお、ここで扱うのは遺言書を「作成する」時点でかかる費用の支払いです。相続開始後に遺言の内容を実現する遺言執行者への報酬は、作成時とは別のタイミングで発生する費用のため、この記事では扱いません。執行時の費用まで含めた総額は遺言書作成費用相場の記事で確認できます。有効な遺言書を用意しておけば、相続開始後に法定相続人全員で行う遺産分割協議を原則として省略できるため、作成費用は、将来の遺産分割にかかる手間や専門家費用を前もって抑える意味も持ちます。
支払いのタイミングと方法

法務局・公証役場に支払う分
法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用する場合の手数料は、申請時に収入印紙で納付します。公正証書遺言・秘密証書遺言の公証人手数料は、日本公証人連合会が定める手数料令にもとづく金額を、多くの公証役場で作成当日に現金で支払う運用です。クレジットカードや振込に対応していない公証役場も多いため、当日は現金を用意しておくと安心です。対応状況は公証役場によって異なるため、事前に管轄の公証役場へ確認しておくとよいでしょう。
専門家に依頼する場合の報酬の支払い方法
司法書士・行政書士・弁護士に依頼する場合の報酬の支払い方法は、公的機関へ支払う手数料と異なり、事務所ごとに設定が異なります。契約時に着手金として一部を受け取り、公正証書遺言の作成が完了した時点で残額を受け取る「着手金・残金の2回払い」方式を採る事務所が多く見られます。銀行振込に加えてクレジットカード決済に対応する事務所も増えていますが、対応状況には差があるため、依頼前の見積もり相談時に、支払い方法・支払いのタイミング・分割の可否をあわせて聞いておくとよいでしょう。
信託銀行の遺言信託は支払い構造そのものが異なる
信託銀行の遺言信託を利用する場合は、司法書士・行政書士・弁護士への報酬とは支払いの組み立てが異なります。契約時に一括で支払う手数料に加えて、保管期間中は年会費のような形で管理費用がかかり、実際に遺言を執行する段階で執行報酬が別途発生するという3段階の支払いになります。作成時の支払いだけで完結しない点は、依頼先を比較する際に押さえておきたい違いです。
分割払いに対応しているかどうかの見分け方

専門家報酬の分割払いに対応するかどうかは、事務所のホームページの料金ページだけでは分からないことが多く、直接問い合わせて確認する必要がある事項です。見積もりの相談時には、次の点をあわせて確認しておくと、契約後に「思っていた支払い条件と違った」という行き違いを避けやすくなります。
着手金の金額と、契約時に一括で必要になるかどうか。残額をいつまでに、何回に分けて支払うか。公証人手数料や証人手配料などの実費は、事務所が一時的に立て替えるか、依頼者が直接支払うか。途中で依頼を取りやめた場合、支払い済みの着手金は返金されるか。これらは事務所ごとに条件が異なるため、口頭の説明だけでなく、契約書や見積書に明記されているかを確認しておくと安心です。
費用がどうしても用意できないときの選択肢
法テラス(日本司法支援センター)の利用
収入や資産が一定の基準を下回る方は、法テラス(日本司法支援センター)の民事法律扶助制度を利用できる場合があります。この制度は、弁護士・司法書士に支払う費用を法テラスが立て替え、利用者は原則として分割で返済していく仕組みです。ただし対象になるかどうかは、資力要件(収入・資産の基準)と、依頼したい業務の内容によって判断が分かれます。遺言書作成に関する相談自体は法律相談援助の対象になる場合がありますが、代理援助・書類作成援助の対象範囲は事案によって異なるため、利用を検討する場合は、法テラスの窓口または法テラスの契約司法書士・弁護士に直接お問い合わせください。
法テラスの民事法律扶助の取り扱いは事務所によって差があります。依頼を検討している事務所が対応しているかどうかも、見積もり相談の際にあわせて確認しておくとよいでしょう。
自筆証書遺言+法務局の保管制度で費用を最小限に抑える
まとまった専門家報酬を用意するのが難しい場合は、自分で自筆証書遺言を作成し、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用する方法もあります。この方法であれば、申請時の手数料3,900円と、戸籍謄本などの実費数千円程度で作成でき、自宅保管につきまとう紛失・改ざんのリスクも避けられます。専門家報酬はかかりませんが、遺言の内容の整理や財産目録の作成、遺留分への配慮といった判断は自分で行うことになります。民法が定める自書・押印などの方式を1つでも満たさないと無効になる点にも注意が必要です。相続財産の内容が複雑な場合や、相続人間で争いが予想される場合は、文案の確認など一部だけでも専門家への相談を取り入れることを検討するとよいでしょう。
予算内に収めるための優先順位のつけ方
費用を抑えたい場合、すべてを削るのではなく、削ってよい部分と削りにくい部分を分けて考えることが大切です。証人を友人・知人に依頼できる場合は、公証役場や事務所に紹介を依頼するより手配料(日当の相場は1名あたり1万円前後)を抑えられます。一方で、公正証書遺言という方式自体を自筆証書遺言に変更すると、形式不備で無効になるリスクや、相続開始後に家庭裁判所での検認手続きが必要になるかどうかが変わるため、方式の変更は費用だけで判断せず、法的な効力面もあわせて検討したい部分です。
専門家に依頼する範囲も調整できます。遺言の文案作成や必要書類の収集だけを依頼し、公証役場とのやり取りは自分で行うなど、依頼範囲を絞ることで報酬を抑えられる事務所もあります。どこまで自分で行い、どこから依頼するかを事前に整理しておくと、見積もりの相談もスムーズです。財産額別の具体的な金額パターンは遺言書作成の金額、依頼先ごとの報酬相場は司法書士の費用、行政書士の費用、弁護士の費用の各記事で解説していますので、あわせてご確認ください。
なお、相続財産の額によっては、遺言書の作成費用とは別に相続税の申告が必要になる場合があります。作成費用の予算を組む際は、この先いずれ必要になるかもしれない資金として頭の片隅に置いておくと安心です。税額がかかるかどうかや見込み額は、税理士にご確認ください。
まとめ|費用の額だけでなく、無理のない払い方を選ぶことが大切
遺言書の作成費用は、法務局・公証役場に支払う分は収入印紙や現金で、専門家報酬は着手金・残金の分割払いに対応する事務所も多くあります。まとまった費用をすぐに用意するのが難しい場合は、法テラスの民事法律扶助や、自筆証書遺言+法務局の保管制度といった選択肢もあります。金額の内訳や相場をまだ確認していない方は、遺言書作成費用相場の記事もあわせてご覧ください。ご自身の状況に合った支払い方法や依頼範囲を相談したい方は、司法書士事務所リーガルステーションまでお気軽にご相談ください。
