
公正証書遺言作成手数料の見積もりの取り方|依頼前に決めておくこと
「公正証書遺言作成手数料」で検索すると、財産の価額ごとの早見表や計算例はすぐに見つかります。ただし、早見表の数字は財産の評価額と受け取る人が決まって初めて当てはまるものなので、この段階では「自分の場合はいくらか」までは分かりません。公証役場や専門家に実際の見積もりを依頼するには、その前に決めておくべきことがいくつかあります。
この記事では、司法書士事務所リーガルステーションが、公正証書遺言作成手数料の見積もりをどこに・どう依頼するか、依頼前に決めておくべきことのチェックリスト、見積もり時点と作成当日で金額が変わる典型パターンまでを、実務の流れに沿って解説します。早見表そのものや財産額別の計算実例は、後述のとおり別記事にまとめているので、あわせてご覧ください。

手数料の金額は「見積もり」を取って初めて正確にわかる

公正証書遺言作成手数料は、日本公証人連合会が公表している公証人手数料令という政令が定める基準にもとづき、財産の評価額(目的の価額)に応じて段階的に決まります。この手数料は、遺言書という書面そのものの作成費用ではなく、公証人が遺言者の意思を確認しながら公正証書という形式の遺言書を作り上げる手続きに対して支払う費用です。目的の価額ごとの基本手数料の早見表や、相続人・受遺者が複数いる場合の計算実例は遺言公正証書作成手数料の記事で詳しく解説しているので、金額の出し方そのものを確認したい方はそちらをご覧ください。
早見表を見ればおおよその見当はつきますが、実際にいくらになるかは、財産の内容と受け取る人の組み合わせが具体的に決まらないと確定しません。そのため公証役場や専門家では、正式な金額を「見積もり」という形で案内しています。この記事では、その見積もりを実際に取る場面で、何を決め、何を聞かれ、どう金額が動くのかを整理します。
見積もりはどこに、どう依頼するか
公証役場に直接問い合わせる場合
最寄りの公証役場に電話または訪問で相談すれば、公証人手数料の見積もりを直接聞くことができます。財産の内容(不動産の評価額、預貯金の残高など)と、誰にどう分けるかを伝える必要があるため、後述する準備を済ませてから連絡すると、その場で概算を案内してもらいやすくなります。文案の作成や必要書類の収集は自分で行うことになるため、費用を抑えたい方、内容がシンプルな方に向いています。
司法書士・行政書士・弁護士を通して見積もりを取る場合
司法書士・行政書士・弁護士に相談すると、公証人手数料の見積もりに加えて、遺言の文案作成や公証役場との日程調整、必要書類の収集まで含めた見積もりを出してもらえます。公証人手数料そのものはどこに依頼しても同額ですが、専門家に依頼する場合は別途専門家報酬が発生します。財産の内容が複雑な場合や、遺留分への配慮など専門的な判断が必要な場合は、専門家経由で見積もりを取るほうが、後から内容を修正する手間を避けやすくなります。
見積もりを依頼する前に決めておくべきこと

公証役場や専門家に見積もりを依頼する際、次の点が決まっていないと正式な金額を出してもらえません。事前に整理しておくと、相談の場で二度手間になりません。
誰に、何を渡すか(相続人・受遺者の範囲と分け方)
手数料は、財産全体の額ではなく、財産を受け取る人ごとの目的の価額に応じて計算されるため、「誰に、何を渡すか」が決まっていないと見積もりを出せません。遺言では誰にどの財産を渡すかを自由に指定できますが、配偶者や長男など相続人だけに渡すよう指定する場合と、相続人以外の人にも遺贈するよう指定する場合とで、算定の仕方は変わりません(受け取る人ごとに同じ考え方で目的の価額を算定します)が、分け方そのものによって基本手数料の合計は変わります。遺産分割の方針がまだ固まっていない場合は、先に大まかな配分だけでも決めておきましょう。なお、相続人・受遺者と遺言者との続柄を確認するために戸籍謄本の提出を求められることが多いため、見積もりの相談とあわせて早めに取得しておくと手続きがスムーズです。
財産の評価額をどう出すか
目的の価額の算定には、相続財産の種類ごとに参照する資料が異なります。不動産は固定資産税の納税通知書や固定資産評価証明書に記載された評価額、預貯金は残高がわかる通帳や残高証明書、有価証券は直近の評価額がわかる資料を用意しておくと、見積もりの精度が上がります。評価額の算定方法に迷う場合は、この段階で専門家に相談してしまうのも一つの方法です。
公証役場へ行けるか、出張が必要か
遺言者本人が公証役場へ出向ける場合と、病気や高齢で出向けず公証人に自宅や病院への出張を依頼する場合とでは、手数料の計算そのものが変わります。出張の要否は見積もり金額に直結するため、通院の状況や体調も踏まえてあらかじめ決めておくとよいでしょう。
証人を自分で用意できるか
公正証書遺言の作成には証人2名以上の立ち会いが必要です。民法974条により、未成年者、推定相続人およびその配偶者・直系血族(父母、祖父母、子、孫など)、受遺者およびその配偶者・直系血族は証人になれません。友人・知人など証人になれる人に心当たりがない場合は、公証役場や専門家事務所に紹介を依頼することになり、その分の日当が見積もりに加わります。証人を自分で用意できるかどうかも、依頼前に確認しておきたい点です。
見積もり時点と作成当日で金額が変わる典型パターン
見積もりを取った時点の金額と、実際に作成する当日の金額が変わることがあります。よくあるパターンを知っておくと、当日になって慌てずに済みます。
財産の評価額が変わる
不動産の固定資産評価額は年度によって見直されることがあり、預貯金の残高も日々変動します。見積もり時点から作成日までに期間が空くと、目的の価額そのものが変わり、手数料の区分が変わることがあります。たとえば評価額が50万円から100万円に増えたり、200万円から500万円に増えたりすると、それだけで手数料の区分がひとつ上がることがあります。財産の総額が1億円前後の場合は、遺言加算の対象になるかどうかの境目にもなるため、特に確認しておきたいところです。作成日が近づいたら、評価額を最新のものに更新しておくと安心です。
分け方を後から変更する
見積もり後に、財産を渡す人数を増やしたり、配分を細かく分け直したりすると、受け取る人ごとに目的の価額を算定し直すため、基本手数料の合計が変わります。財産を複数人に分けるほど、1人にまとめる場合より基本手数料の合計は高くなる傾向があるため、分け方を変更する場合は見積もりも取り直すのが確実です。
正本・謄本の枚数や交付方法が想定より増える
公正証書遺言の原本は公証役場で保管され、遺言者には正本と謄本が交付されます。書面で交付を受ける場合の手数料は用紙1枚につき300円で、遺言の内容を作成の過程で書き加え、証書の枚数が見積もり時点より増えると、この分の手数料も増えます。電子データでの交付に対応している公証役場では、1通あたり2500円が目安です。
見積もり後に出張が必要になった場合
見積もり時点では公証役場へ出向く前提だったのに、体調の変化で出張に切り替える場合は、基本手数料が50%加算されるほか、公証人の日当(4時間以内は1万円、4時間を超える場合は2万円が目安)と交通費の実費が新たに加わります。体調に不安がある場合は、見積もりの段階で出張も想定して確認しておくと、当日の金額差に驚かずに済みます。
案内された見積もりに何が含まれているか確認する

公証役場や専門家から金額を案内されたら、上記の準備事項を踏まえたうえで、その金額に何が含まれているかを確認しましょう。基本手数料と遺言加算だけの金額なのか、証人の日当や正本・謄本の交付手数料まで含めた金額なのかによって、見積もり同士を単純に比較できるかどうかが変わります。専門家経由の見積もりでは、公証人手数料と専門家報酬が別枠で案内されているか、書類収集の実費が別途かかるかもあわせて確認しておくと、総額の見通しを立てやすくなります。
専門家報酬まで含めた総額の目安や、自分で公証役場とやり取りする場合との比較は公正証書遺言の費用の記事で解説しています。行政書士・司法書士・弁護士それぞれの報酬相場を知りたい方は、行政書士の費用、司法書士の費用、弁護士の費用の各記事もあわせてご確認ください。
よくある質問
見積もりだけを無料で聞くことはできる?
多くの公証役場・専門家事務所では、作成を正式に依頼する前の見積もり相談を無料で受け付けています。ただし財産の内容を伝えないと概算しか出せないため、前述の準備を済ませてから相談するとスムーズです。
見積もりと当日の金額が違っていたらどうすればいい?
評価額の変動や分け方の変更などにより差額が生じた場合は、当日その場で正式な金額が案内され、差額分を含めて支払う形になります。差が大きい場合は、作成日を改めて調整してもらうことも可能です。不明な点があれば、支払い前に公証役場や依頼先の専門家に確認しましょう。
自筆証書遺言や秘密証書遺言と迷っている場合も見積もりは必要?
自筆証書遺言は自宅保管なら手数料がかからず、法務局の保管制度を利用する場合も一律3,900円、秘密証書遺言も財産額にかかわらず一律11,000円です。公正証書遺言のように財産額に応じて金額が変わるのは3方式のうち公正証書遺言だけなので、見積もりが必要になるのも公正証書遺言を選ぶ場合です。ただし公正証書遺言は、公証人が関与するぶん形式不備で無効になるリスクが低く、家庭裁判所での検認も不要になるという法的な効力面のメリットがあります。費用と安心感のどちらを優先するかで方式を選ぶとよいでしょう。
まとめ|正確な手数料は「決めてから」見積もりを取ると分かる
公正証書遺言作成手数料は、誰に何を渡すか、財産の評価額、公証役場へ出向けるか、証人を自分で用意できるかが決まって初めて、正確な見積もりが出せます。見積もり後も、評価額の変動や分け方の変更、証書の枚数、出張の要否によって当日の金額が動くことがあるため、案内された金額に何が含まれるかもあわせて確認しておくと安心です。
早見表そのものや財産額別の計算実例を先に確認したい方は遺言公正証書作成手数料の記事、専門家報酬まで含めた総額を知りたい方は公正証書遺言の費用の記事をご覧ください。ご自身の財産の内容を踏まえた見積もりを取りたい方は、司法書士事務所リーガルステーションまでお気軽にご相談ください。
