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公正証書遺言の作成費用は誰が負担する?生前の支払いと遺言執行費用の違い

「公正証書遺言の作成費用」を調べると、公証人手数料の内訳や支払いのタイミング、見積書の読み方はすぐに見つかります。一方で、その費用を実際に「誰が」負担するのか——遺言者本人なのか、相続人なのか、相続財産そのものから支払えるのか——という支払う主体の整理は後回しにされがちです。家族が窓口で代わりに支払う場面や、将来の遺言執行にかかる費用までひとまとめに考えてしまい、相続人同士で「誰が持つべきお金なのか」が曖昧になるケースも見られます。

この記事では、司法書士事務所リーガルステーションが、公正証書遺言の作成費用を「誰が負担するものか」という観点から整理します。費用の内訳そのものは公正証書遺言作成費用の記事、見積書に書かれた項目の読み方は遺言公正証書作成費用の記事、公証人手数料の具体的な計算方法は遺言公正証書作成手数料の記事で解説しているので、金額そのものを確認したい方はそちらもあわせてご覧ください。

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司法書士 田中良太

公正証書遺言の作成費用は、まず「誰の財産から出すか」で2つの場面に分かれる

公正証書遺言の作成費用は、まず「誰の財産から出すか」で2つの場面に分かれる

公正証書遺言にかかるお金は、発生する時期によって負担する財産が変わります。ひとつは、遺言者が生きている間に公証役場や専門家へ支払う「作成費用」。もうひとつは、遺言者が亡くなった後に遺言の内容を実現するためにかかる「遺言執行費用」です。同じ「遺言にかかる費用」という言葉でまとめて考えると、どちらの財産から出るお金なのかが分からなくなり、相続人同士で負担の押し付け合いが起きることもあります。まずこの2つを分けて考えることが、費用を誰が負担するかを整理する出発点になります。

作成費用(公証人手数料・専門家報酬・実費)は、原則として遺言者本人が生前に負担する

公正証書遺言は、遺言者自身が「自分の財産をどう分けるか」を決めるために作成するものです。そのため、公証役場に支払う公証人手数料、行政書士・司法書士・弁護士など専門家に依頼する場合の専門家報酬(相場は依頼先によって幅があり、各専門家の費用記事で確認できます)、戸籍謄本や固定資産評価証明書などの必要書類の取得にかかる実費は、いずれも遺言者本人の財産から支払うのが基本です。遺言者が存命中の出費であり、相続人はまだ何も相続していない段階にあるため、将来相続人になる人にこの費用を請求する権利が生じるわけではありません。

公証役場への支払いは、本人の意思にもとづく生前の支出

公証人手数料は、公証人手数料令という政令にもとづき、遺言の対象となる財産の評価額(目的の価額)に応じて全国一律に決まります。この手数料は、あくまで遺言者が自分の意思で公正証書遺言を作成する行為そのものにかかる費用であり、作成当日に公証役場の窓口で現金で支払うのが一般的です。手数料の算定基準は日本公証人連合会が公表しており、目的の価額の算定方法や早見表は遺言公正証書作成手数料の記事で確認できます。

証人手配料や正本・謄本の交付手数料も、同じ「生前・本人負担」の扱い

公正証書遺言の作成には証人2名以上の立ち会いが必要で、民法974条により未成年者や推定相続人・受遺者及びその配偶者・直系血族などは証人になれません。身近に頼める人がいない場合は公証役場や専門家事務所に紹介を依頼でき、その手配料や証人への日当も、公証人手数料と同じく遺言者本人が生前に負担する実費です。また公正証書遺言の原本は公証役場に保管され、遺言者には正本・謄本が交付されます。この交付手数料(書面1枚につき300円程度、電子データなら1通2500円程度が目安)も作成当日にあわせて支払うのが通常です。なお自筆証書遺言は公証役場を介さずに作成できるため、「誰にいくら払うか」という整理そのものが生じない点も対照的です。

家族や将来の相続人が、作成費用を立て替えることもできる

高齢の遺言者本人が公証役場まで出向けない、手元にまとまった現金を用意しづらいといった事情で、同居する家族や将来相続人になる人が、窓口や専門家事務所への支払いを一時的に立て替えることは実務上よく見られます。立て替え自体は一般的な行為ですが、立て替えたお金をどう扱うかによって、後の相続に影響する場合があります。

立て替えが大きいと「特別受益」が問題になることがある

立て替えた金額を遺言者本人からそのつど返してもらっていれば、通常の金銭の貸し借りと同じ扱いで済みます。しかし、返してもらわずに立て替えたままにしておくと、その相続人が他の相続人より多くの利益を得た「特別受益」として扱われ、相続時に取り分の調整を求められる可能性があります。立て替える場合は、立て替えた事実と金額を記録に残し、遺言者本人から返してもらうのか、将来の相続分の中で調整するのかを、早い段階で家族内で確認しておくと安心です。相続人間の取り分に関わる判断になるため、迷う場合は司法書士や弁護士に確認してください。

相続放棄を考えている人に立て替えを頼むときは要注意

将来相続放棄を予定している人であっても、生前に作成費用を立て替えること自体は可能です。ただし、相続放棄をすると相続人の地位そのものを失うため、立て替えた分を「将来の相続分から調整する」という扱いはできなくなります。この場合は、立て替えた時点で遺言者本人からその都度返してもらっておくなど、相続放棄後も問題が残らない形で清算しておくことが大切です。

「作成費用」と「遺言執行費用」は、民法上の扱いが分かれる

「作成費用」と「遺言執行費用」は、民法上の扱いが分かれる

民法1021条が定める「遺言の執行に関する費用」

民法第1021条は「遺言の執行に関する費用は、相続財産の負担とする。ただし、これによって遺留分を減ずることができない」と定めています。ここでいう執行費用とは、遺言者が亡くなった後に、遺言執行者が財産目録を作成したり、預貯金の解約や不動産の名義変更といった手続きを進めたりする際にかかる費用や報酬のことです。つまり、死後に発生する執行のための費用は、相続財産そのものから支払うことが法律で認められています。

作成時の公証人手数料・専門家報酬は、この条文の対象ではない

一方、公正証書遺言を作成する際の公証人手数料や専門家報酬は、遺言者が生きている間に発生する費用であり、民法1021条が対象とする「遺言の執行に関する費用」には当たりません。「遺言書に『作成費用も相続財産から出す』と書いておけば相続財産から払える」という単純な話ではなく、作成費用はあくまで遺言者本人の生前の支出として整理される点に注意が必要です。遺言執行者への報酬だけを遺言書の中であらかじめ指定しておくことが、死後の手続きを円滑にする実務上のポイントになります。

相続人が複数いても、作成費用をあとから誰かに請求することは基本的にできない

作成費用が遺言者本人の生前の支出である以上、相続が始まったあとに相続人の一人が他の相続人へこの費用を請求する権利は原則として発生しません。ただし、遺言者の死亡時点で公証役場や専門家への支払いが未払いのまま残っていた場合は、その未払い分は遺言者の債務として、相続財産から通常の債務と同様に清算されるのが一般的な扱いです。財産を複数の相続人・受遺者に分けて遺贈する場合、公証人手数料にあたる目的の価額は受け取る人ごとに算定して合算するため、同じ財産総額でも分け方によって手数料の合計が変わります。財産の総額が1億円を超えると遺言加算が加わり、3億円・10億円を超える部分はさらに加算の基準が変わるため、遺産分割協議で分け方を決める場合と異なり、遺言で先に分け方を指定しておくと、相続人全員の協議が整う前から準備を進めやすくなります。

遺言執行者への報酬は、遺言書の中で決めておくと相続人間のトラブルを避けやすい

遺言執行者への報酬は、遺言書の中で決めておくと相続人間のトラブルを避けやすい

前述のとおり、遺言執行者に専門家を指定する場合の執行報酬は民法1021条により相続財産から支払うことができますが、具体的な金額や算定方法まで法律で決まっているわけではありません。事前に遺言書の中で執行報酬の金額や算定方法を記載しておくと、相続人間で「誰がその報酬を負担するのか」という争いを避けやすくなります。あわせて、専門家に文案の作成から依頼しておくことで、形式の不備によって遺言が法的な効力を持たないリスクを抑えられ、相続人間の紛争の防止にもつながります。執行報酬を相続財産から支払う取り決めが、遺留分を侵害する範囲にまで及ばないかは、司法書士や弁護士に確認しておくと安心です。

まとめ|公正証書遺言の作成費用は「誰が」負担するかを区別して整理する

公正証書遺言にかかるお金は、生きている間に遺言者本人が負担する「作成費用」と、死後に相続財産から支払える「遺言執行費用」とで、法律上の扱いが分かれます。家族が作成費用を立て替える場合は、特別受益として扱われないよう早めに清算方法を決めておくこと、遺言執行者への報酬は遺言書の中で金額や算定方法を明記しておくことが、相続人間のトラブルを避けるポイントです。費用の内訳を確認したい方は公正証書遺言作成費用の記事、見積書の読み方を確認したい方は遺言公正証書作成費用の記事もあわせてご覧ください。ご自身の状況に合わせて誰がどの費用を負担すべきか整理したい方は、司法書士事務所リーガルステーションまでお気軽にご相談ください。

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