
公正証書遺言の作成費用のほかにかかる「遺言執行費用」はいくら?相場と支払うタイミング
「公正証書作成費用」を調べていくと、公証人手数料や専門家報酬といった、遺言を作成する時点でかかるお金の話はすぐに見つかります。しかしそれだけでは終わりません。遺言者が亡くなった後、遺言の内容を実現するために「遺言執行費用」という別のお金がかかることに、作成費用を調べている段階ではまだ気づいていない方も少なくありません。
この記事では、司法書士事務所リーガルステーションが、公正証書遺言の作成費用とは別に発生する遺言執行費用について、報酬の相場、専門家と銀行(遺言信託)で異なる目安、支払うタイミングを整理します。作成費用そのものの内訳は公正証書遺言作成費用の記事、誰が費用を負担するかの基本は公正証書遺言の作成費用は誰が負担する?の記事で解説しているので、作成費用の内訳を先に確認したい方はそちらもあわせてご覧ください。

公正証書遺言の「作成費用」と「遺言執行費用」は、発生するタイミングが違う
公正証書遺言にかかるお金は、大きく2つの場面に分かれます。ひとつは、遺言者が生きている間に公証役場や専門家へ支払う「作成費用」。もうひとつは、遺言者が亡くなった後に、遺言の内容を実際に実現するためにかかる「遺言執行費用」です。民法第1021条は「遺言の執行に関する費用は、相続財産の負担とする」と定めており、作成費用とは異なる財産(相続財産そのもの)から支払われる点が、この2つの最大の違いです。どちらの費用にあたるかで支払う人・支払うタイミングが変わるため、作成費用を調べている段階で、この先発生する執行費用の存在も知っておくと、相続人が後から戸惑うことを避けられます。負担者の視点からの詳しい整理は公正証書遺言の作成費用は誰が負担する?の記事で解説しているので、ここでは執行費用そのものの金額とタイミングに絞って見ていきます。
遺言執行費用の内訳|執行者への「報酬」と、手続きにかかる「実費」

遺言執行者への「報酬」
遺言執行者(遺言の内容にもとづいて、財産目録の作成、預貯金の解約、不動産の名義変更などの手続きを行う人)を専門家に依頼する場合、その対価として発生するのが執行報酬です。公証人手数料のように法令で金額が決まっているわけではなく、依頼先が自由に設定できる点が、作成費用の中心である公証人手数料との大きな違いです。
名義変更・解約などにかかる「実費」
報酬とは別に、預貯金の解約や不動産の名義変更、財産目録を作成するための戸籍謄本・不動産の登記事項証明書の取得など、手続きそのものにかかる実費も執行費用に含まれます。相続人だけでなく、相続人以外で遺言によって財産を受け取る「受遺者」がいる場合は、その受遺者への引き渡し・名義変更の手続きも増え、実費の件数が増える傾向があります。この実費は、公正証書遺言か自筆証書遺言かにかかわらず、遺言を実行する際には同じようにかかるものです。
遺言執行者報酬の相場はどう決まるか|依頼先で変わる3つの目安
遺言執行者報酬の金額は、誰に依頼するかによって算定の考え方が変わります。ここでは代表的な3つの依頼先の目安を紹介しますが、いずれも事務所・銀行ごとに幅があるため、正確な金額は依頼前の見積もりで確認してください。
弁護士・司法書士・行政書士に依頼する場合
専門家に依頼する場合、報酬は相続財産の額に応じた一定の割合(目安として1%程度から3%程度)に、最低額(事務所によって30万円前後からという目安を示しているところもあります)を設けて算定する形が一般的です。遺産の内容が複雑で、不動産や会社の株式など名義変更の手続きが多岐にわたる場合は、上乗せの報酬が発生することもあります。各専門家に公正証書遺言の作成そのものを依頼する場合の報酬相場は、行政書士の費用・司法書士の費用・弁護士の費用の各記事で確認できます。
銀行(遺言信託)に依頼する場合

銀行や信託銀行が提供する遺言信託サービスを利用し、遺言執行者を指定する場合、執行報酬は専門家に依頼する場合より高めに設定されている傾向があり、最低報酬額(100万円前後からという目安を示している銀行もあります)が専門家より高いことが多いのが特徴です。あわせて、遺言書の保管料や、生前の相談にかかる料金が別途発生する場合もあります。
親族など専門家以外が執行者になる場合
遺言執行者は専門家でなくても、相続人や受遺者、親族を指定することもできます。この場合、報酬を無報酬とすることも、遺言書の中で金額を指定することも可能です。ただし、不動産の名義変更など専門的な知識が必要な手続きを親族だけで進めるのは負担が大きく、必要に応じて行政書士や司法書士、弁護士といった専門家に個別に依頼し直す実費が別途発生することもあります。
遺言執行費用はいつ、誰が、どこから支払うか
支払うのは遺言者の死後、相続財産から
作成費用が遺言者本人の生前の支出であるのに対し、遺言執行費用は遺言者が亡くなった後に発生し、民法第1021条にもとづき相続財産から支払われます。遺言者の生前にこの報酬を前払いすることは通常なく、執行者が実際に業務を始める死後のタイミングで初めて発生する費用です。
執行者が立て替えて、後で相続財産から清算する流れが一般的
専門家が遺言執行者になる場合、名義変更や解約にかかる実費は、いったん専門家が立て替え、相続財産(預貯金の解約金など)から清算するという流れが一般的です。相続人が先に現金を用意する必要がないケースが多い一方、相続財産が不動産ばかりで現金が少ない場合は、清算のタイミングについて事前に確認しておくと安心です。
遺言執行費用でトラブルを避けるための工夫

報酬の金額や算定方法を遺言書の中で決めておく
遺言執行者への報酬は、法律で金額が決まっていないぶん、何も決めずに死後を迎えると、相続人と執行者の間で金額の話し合いが必要になります。公正証書遺言を作成する段階で、報酬の金額や算定方法(相続財産の〇%など)を遺言書の中に明記しておくと、死後に相続人間で揉める可能性を減らせます。
執行者を誰にするかも費用に影響する
専門家に依頼するか、銀行の遺言信託を使うか、親族を指定するかによって報酬の目安は大きく変わります。公正証書遺言の文案作成を依頼した専門家に、そのまま遺言執行者も依頼できるかを確認しておくと、作成費用と執行費用をあわせて早い段階で見通しを立てやすくなります。報酬額や算定方法に迷う場合は、依頼先の専門家に直接確認してください。
まとめ|公正証書遺言の作成費用のほかに、死後の「遺言執行費用」も確認しておく
公正証書遺言には、生きている間にかかる「作成費用」と、亡くなった後に相続財産から支払う「遺言執行費用」という、法律上の扱いが異なる2つのお金があります。執行費用の中心は遺言執行者への報酬で、専門家・銀行(遺言信託)・親族のどれに依頼するかによって相場が大きく変わり、名義変更や解約の実費もあわせて相続財産から清算されます。報酬の金額や算定方法を遺言書の中で決めておくことが、相続人間のトラブルを避けるポイントです。公正証書遺言の作成費用そのものの内訳を確認したい方は公正証書遺言作成費用の記事、費用を誰が負担するかを確認したい方は公正証書遺言の作成費用は誰が負担する?の記事もあわせてご覧ください。遺言執行者をどなたにすべきか迷う場合は、司法書士事務所リーガルステーションまでお気軽にご相談ください。
