遺言作成で公証役場を使う3つの方法|出向けないときの対応まで
「遺言作成 公証役場」で調べる方の多くは、公証役場に行けば遺言を作ってもらえるのか、自分で直接依頼する場合にどう進めればよいのか、体が不自由で公証役場に出向けない場合はどうなるのかなど、依頼の入り口で迷っています。
この記事では、司法書士事務所リーガルステーションが、公証役場で遺言を作る際の3つの依頼ルート(本人が直接依頼する・専門家に任せる・出張を依頼する)を比較し、依頼前に決めておきたいこと、証人の要件、必要書類、法務局との違いまでまとめて解説します。公証役場に支払う費用の詳しい内訳は本文でご紹介する関連記事もご確認ください。

結論|公証役場で遺言を作る=公正証書遺言を作ること

公証役場は法務省の管轄のもと公証人が事務を行う機関で、全国各地に設置されています。公証役場で遺言を作るとは、公証人が遺言者の意思を確認しながら作成する「公正証書遺言」を作ることを指します。遺言には遺言者が全文を自書する自筆証書遺言や、内容を誰にも見せずに作成する秘密証書遺言もありますが、これらは公証役場が内容そのものを確認する方式ではなく、関与の度合いが異なります。
公正証書遺言は、原本が公証役場で長期間保管されるため紛失や改ざんの心配がなく、相続開始後に家庭裁判所の検認が不要になる点が特徴です。遺言書がない場合、相続人全員での遺産分割協議が必要になりますが、法律上有効な公正証書遺言があれば原則として協議を省略でき、相続人同士の争いを防ぐ効果も期待できます。
遺言者が亡くなる前に、遺言書に記載した内容に基づく手続きを誰に任せるか決めておくこともできます。その役割を担うのが遺言執行者です。公正証書遺言の作成時にあらかじめ遺言執行者を指定しておくと、預貯金の払い戻しや不動産の名義変更などの執行の手続きを任せられ、相続人同士の家族関係が複雑な場合でも手続きの負担を軽くできます。
公証役場を使う3つの依頼ルート

公証役場で公正証書遺言を作る進め方は、大きく3つに分かれます。ご自身の状況に合わせて、遺言の内容をどう決めるかを含め、どのルートで進めるかをまず決めておくと、その後の準備がスムーズになります。そのため、次の章で依頼前に確認しておきたいポイントを整理します。
本人が直接、公証役場に依頼する
遺言者本人が公証役場に電話または訪問で相談し、財産の内容と相続人・受遺者への分け方を伝えて、遺言の内容をまとめた文案を自分で作成して提出する方法です。文案を公証人が確認し、法的に問題がなければ日程を調整します。作成当日は、遺言者と証人2名が公証役場に立ち会う必要があり、公証人が遺言公正証書の原本を読み上げて内容に間違いがないかを確認したうえで、全員が署名・押印します。遺言者には正本と謄本が交付され、これで手続きが完成します。専門家への報酬がかからない分、費用を抑えやすいのが特徴ですが、文案の作成や必要書類の収集、証人の手配はすべて自分で行う必要があります。公証役場に支払う手数料の詳しい内訳は遺言書作成費用のうち公証役場に払う分はいくら?選び方から当日の流れまでの記事で確認できます。
司法書士・行政書士・弁護士に手続きを任せる
遺言の原案作成、必要書類の収集、証人の手配、公証人との事前の打合せまでを専門家に任せる方法です。公証人は遺言を公正証書という形式に整える中立的な立場で、誰にどの財産をどれだけ渡すかという遺言の「中身」や、遺留分・相続税を踏まえた分け方の相談には基本的に応じません。財産構成が複雑な場合や、相続人同士の対立が予想される場合、遺産分割の割合を事前に整理しておきたい場合は、原案作成の段階から司法書士に相談しておくと、内容を確認してもらったうえで公証人に依頼できます。公証人への直接依頼との違いは公証人には直接依頼できるが、遺言の「中身」の相談相手ではないの記事でも詳しく比較しています。
高齢・病気で公証役場に出向けない場合は出張を依頼する
遺言者が高齢や病気などの事情で公証役場に出向けない場合は、公証人に自宅や病院へ出張してもらうことができます。出張を依頼すると、基本手数料に出張加算(通常の1.5倍が目安)が上乗せされるほか、公証人の日当(4時間以内は1万円、それを超えると2万円が目安)と、出張先までの実際の交通費が別途必要です。出張先や出張できる範囲は公証役場ごとに取り扱いが異なるため、依頼を検討する段階で早めに公証役場へ確認しておくことが大切です。長文の自書が難しい方や、口頭で意思を伝えることが難しい方でも、通訳人の通訳や筆談によって公正証書遺言を作成できる場合があります。
依頼する前に決めておきたい3つのこと
どのルートで進めるにしても、公証役場に相談する前に次の3点を確認しておくと、その後の打合せがスムーズになります。
- 遺言の内容(誰にどの財産をどれだけ渡すか)がおおよそ固まっているか
- 必要書類を自分で集められる見通しがあるか
- 証人2人を自分で用意できるか
この3つがすべて固まっていれば、本人が直接公証役場に依頼する進め方でも大きな支障は出にくいでしょう。1つでも不安がある場合は、原案作成の段階から専門家に相談しておく方法も検討してください。
証人2人の手配(民法974条の要件)
公正証書遺言の作成には、証人2人以上の立ち会いが必要です。証人になれる人の範囲は、民法974条が定める要件で決まっており、未成年者、推定相続人およびその配偶者・直系血族、遺言によって財産を受け取る受遺者およびその配偶者・直系血族、公証人の配偶者や四親等内の親族、公証役場の書記・使用人は証人になれません。遺言の内容に利害関係を持つ人を証人から外す趣旨です。
身近な友人・知人に適任者がいない場合は、公証役場に証人の紹介を依頼できますし、専門家事務所に手続きを任せている場合は専門家が証人を手配することも一般的です。この場合、証人1名あたり1万円前後の日当が別途かかります。証人になる際は運転免許証等の本人確認資料で本人確認を行いますが、証人の押印は認印で足りる運用が一般的です。
必要書類の一覧

必要書類は次のとおりです。財産の額や件数によって多少変わるため、事前に依頼先の公証役場や専門家へ確認してください。
- 遺言者本人の実印と、3か月以内に発行された印鑑登録証明書(印鑑証明書)
- 運転免許証やパスポート、マイナンバーカードなどの本人確認書類(身分証明書)
- 遺言者と相続人・受遺者との続柄がわかる戸籍謄本
- 不動産がある場合は登記事項証明書(登記簿謄本)と、固定資産の納税通知書または固定資産評価証明書
- 預貯金や株式がある場合は通帳や取引残高報告書の写し
- 相続人以外の人に遺贈する場合は、財産を受け取る人の住民票
これらの書類は、事前相談の際に提出するか、作成当日に公証役場へ持参します。本人が直接依頼する場合、書類はすべて自分で集める必要がありますが、専門家に手続きを任せる場合は、書類収集や戸籍謄本の取得を代行してもらえることも多いため、集める時間が取りにくい方はこの点も依頼先を選ぶ判断材料になります。
公証役場と法務局はどう違う?

公証役場と並べて語られることが多いのが法務局ですが、役割は大きく異なります。公証役場は公証人が遺言者の意思を確認しながら公正証書遺言を作成する機関であるのに対し、法務局が行うのは、遺言者本人が自分で作成した自筆証書遺言の原本を保管する「自筆証書遺言書保管制度」です。法務局は遺言の内容が民法の要件を満たしているかを外形的に確認するだけで、遺言者に代わって遺言書を作成してくれることはありません。
公証役場(公正証書遺言)は作成段階から公証人が関与するため方式の不備による無効のリスクがほぼなく、検認も不要です。一方、法務局の保管制度は遺言者自身が書いた自筆証書遺言を預けるだけのため、費用を抑えやすい一方で、内容面の不備までは防げません。法務局と遺言書作成の関係は法務局は遺言書を作成する窓口ではなく、預かってくれる窓口の記事で詳しく解説しています。
よくある質問
公証役場はどこでも使える?
公証人手数料は全国一律で、遺言者の住所地や財産の所在地による管轄の決まりもないため、全国どの公証役場に相談してもかまいません。通いやすさや開庁時間を基準に選んでよいでしょう。
予約をせずに訪問してもいい?
多くの公証役場は事前の電話または訪問による相談を前提としています。平日の日中のみ開庁しているところが多く、土曜・日曜・祝日は休みのため、訪問前に相談の予約を取っておくと確実です。
公証役場に依頼すれば必ず安く済む?
専門家への報酬がかからない分、費用自体は抑えやすい傾向にあります。ただし原案の作成や必要書類の収集、証人の手配はすべて自分で負うことになるため、手間を含めた総合的な負担まで考えると、必ずしも安く済むとは限りません。
まとめ|迷ったら進め方の相談から
公証役場で公正証書遺言を作るには、本人が直接依頼する方法、司法書士など専門家に任せる方法、出向けない場合に出張を依頼する方法の3つのルートがあります。依頼前に遺言の内容・必要書類・証人の3点を確認しておくと、どのルートでもその後の手続きがスムーズに進みます。
ご自身のケースでどのルートが向いているか迷う方、必要書類や証人の手配に不安がある方は、司法書士事務所リーガルステーションまでお気軽にご相談ください。
