公証役場の遺言作成費用は家族構成で変わる|ケース別の目安
「公証役場 遺言作成費用」で調べる方の中には、費用の内訳や早見表はひととおり目にしたものの、「結局、自分の家族構成や財産の持ち方だと、いくらくらいになるのか」がまだ掴めていない方も少なくありません。
この記事では、司法書士事務所リーガルステーションが、公証人手数料そのものの計算方法ではなく、家族構成や財産の持ち方によって費用や手続きがどう変わるかを、6つの典型的なケースに分けて解説します。手数料の早見表や計算実例は遺言公正証書作成手数料の記事にまとめているので、正確な金額を先に確認したい方はそちらもあわせてご覧ください。

公証役場の遺言作成費用は「誰に、どう分けるか」で決まる(おさらい)

公証役場に支払う公証人手数料は、日本公証人連合会が公表している公証人手数料令という政令の基準にもとづき、遺言によって財産を受け取る人ごとの評価額(目的の価額)に応じて段階的に決まります。財産の総額が同じでも、受け取る人の数や分け方によって基本手数料の合計が変わり、財産全体が1億円以下の場合はこれに遺言加算が加わります。目的の価額ごとの早見表や、相続人・受遺者が複数いる場合の計算実例は遺言公正証書作成手数料の記事で確認できます。
自筆証書遺言であれば公証人手数料はかからず(法務局の保管制度を使う場合は別途手数料が発生します)、公証役場への費用がかかるのは公正証書遺言を選ぶ場合です。公正証書遺言は、公証人が関与して本人の意思を直接確認しながら作成するため、要件不備で無効になるリスクが低く、相続開始後の家庭裁判所での検認も不要になるという法的な効力の面での確実性があり、財産の持ち方が複雑になるほどこのメリットを選ぶ家庭が増えます。文案の作成や必要書類の収集を行政書士・司法書士・弁護士に依頼しながら進める家庭も多く、この記事では、どのような家族構成・財産の持ち方のときに、費用や手続きがどう変わるかを見ていきます。
家族構成・財産の持ち方で費用が変わる6つのケース

同じ「公証役場に払う費用」であっても、家族構成や財産の持ち方によって、金額そのものだけでなく、必要な書類や手続きの手間も変わります。ご自身の状況に近いケースを確認してみてください。
子どものいない夫婦が同時に公正証書遺言を作る場合
子どものいない夫婦が、互いを相続人として指定する公正証書遺言をそれぞれ作成する場合、2人分の公証人手数料がかかる点は変わりませんが、証人の手配をまとめられる場合があります。民法974条により、推定相続人およびその配偶者・直系血族は証人になれないため、夫婦はそれぞれ互いの遺言の証人にはなれませんが、友人・知人など第三者の証人2名を用意できれば、同じ証人2名に夫と妻、両方の遺言作成に立ち会ってもらうことができます。公証役場や専門家事務所に証人を紹介してもらう場合、1回の来庁で2人分の立ち会いを済ませられれば、日当や手配の手間を2組分ではなく1組分に抑えられることがあります。手数料令にもとづく基本手数料そのものは、2人分がそれぞれ発生する点は変わらないため、同時に作成する場合はその旨を事前相談の段階で公証役場に伝えておくとよいでしょう。
再婚などで遺留分への配慮が必要な場合
再婚して前の配偶者との間に子がいる場合や、現在の配偶者の連れ子を含めて財産を分けたい場合は、相続人の組み合わせが複雑になり、受け取る人ごとに目的の価額を算定する相手が増えるため、公証人手数料の合計も上がりやすくなります。相続人の人数や関係が複雑になるほど、遺言が無い場合に必要となる遺産分割協議が長引きやすくなるため、遺言で分け方を明確にしておく意味も大きくなります。さらに、配偶者や子が持つ最低限の取り分である遺留分(兄弟姉妹にはありません)を侵害する分け方になっていないかの確認も欠かせません。遺留分を侵害する分け方のまま公正証書遺言を作成すると、法的には有効な遺言書であっても、相続が始まった後の遺産相続の場面で相続人同士が揉めることになりやすく、争いや紛争、トラブルに発展しやすくなります。分け方に不安がある場合は、文案を公証役場に提出する前に、代理・交渉の権限を持つ弁護士の費用の記事も参考に、早めに相談しておくと安心です。
不動産を複数所有している場合
自宅のほかに実家や投資用の物件など、不動産を複数所有している場合は、目的の価額を算定するための固定資産税の納税通知書や固定資産評価証明書、登記事項証明書(登記簿)を物件ごとに用意する必要があり、書類をそろえるだけでも時間がかかります。評価額が確定するまで正確な手数料の見積もりが出せないため、見積もりを依頼する前に決めておきたいことは公正証書遺言作成手数料の記事のチェックリストを参考にしてください。高齢や病気で公証役場への来庁が難しい場合は自宅や病院への出張を依頼することになり、基本手数料の加算と公証人の日当・交通費が追加でかかります。
相続人以外の人に財産を渡す場合
内縁のパートナーや、相続人にあたらない孫など、法定相続人以外の人に財産の一部を遺贈したい場合は、受遺者ごとに目的の価額を算定して手数料に合算します。受遺者が相続人ではない場合、遺言者との関係を示す戸籍謄本に加えて、受遺者本人の住民票の提出を求められることが一般的です。内縁のパートナーへの遺贈自体は、公正証書遺言の効力として有効に行えますが、遺留分を侵害しやすい分け方にもなりやすいため、前述の再婚のケースと同様に、分け方の段階で専門家に相談しておくと手数料の見通しも立てやすくなります。
事業を引き継ぐ人がいる場合
会社の経営や個人事業を特定の相続人に引き継がせたい場合は、事業用の不動産や株式を含む相続財産の評価額が目的の価額に加わるため、遺産のうち事業用財産の占める割合が大きいご家庭ほど、算定そのものに専門知識が必要になります。遺言の内容を実現する遺言執行者は、預貯金の払い戻しや不動産の名義変更などの手続きを行う役割で、事業の実情が分かる専門家に依頼する場合は、作成時の公証人手数料とは別に、将来の執行報酬が発生する点も見落とせません。相続財産の額によっては、遺言作成費用とは別に相続税の申告が必要になる場合があるため、税額の見込みは税理士にご確認ください。信託銀行が提供する遺言信託というサービスを利用する場合も、公正証書遺言の形式を取るときは公証役場の手続きが必要になりますが、公証役場とのやり取りの大部分は信託銀行が代行します。専門家に依頼した場合の総額の目安は公正証書遺言の費用の記事で解説しています。
証人を自分で用意できない場合
友人・知人に証人を頼める相手がいない場合は、公証役場や専門家事務所に紹介を依頼できます。民法974条により、未成年者、推定相続人およびその配偶者・直系血族、受遺者およびその配偶者・直系血族に加え、公証人の配偶者や四親等内の親族、公証役場の書記・使用人も証人にはなれません。紹介してもらう場合は証人1名あたり1万円前後の日当が加わるのが一般的で、証人2名を紹介してもらうと、その分だけ基本手数料に上乗せされる実費が増えます。費用の内訳や当日の流れ全体は遺言書作成費用 公証役場の記事で解説しています。
複数のケースに当てはまる場合、費用もそのまま重なって考える
再婚して不動産も複数所有している、事業を引き継ぐ人以外にも財産を渡したいなど、ここで紹介したケースは単独ではなく重なって当てはまることもあります。その場合は、それぞれのケースで説明した要素(目的の価額の算定対象が増える、遺留分への配慮が必要になる、出張や証人の手配が必要になるなど)が単純に積み重なるとイメージしておくと、見積もりを取ったときの金額に驚きにくくなります。ご自身の状況が複数のケースに当てはまりそうな場合は、早見表だけで概算するのではなく、公証役場や専門家に実際の見積もりを依頼することをおすすめします。
よくある質問
夫婦で同時に公正証書遺言を作ると、証人は何人必要?
公正証書遺言はそれぞれ別の遺言書になるため、原則として2回分、証人2名が立ち会う必要があります。ただし、夫婦それぞれの推定相続人にあたらない第三者を証人に選べば、同じ証人2名に夫婦両方の作成に立ち会ってもらうことができ、紹介を依頼する場合の手配を一度にまとめられます。
内縁のパートナーに遺贈すると、他の相続人の遺留分はどうなる?
内縁のパートナーへの遺贈によって、配偶者や子などの相続人の遺留分を侵害する内容になっていないかは別に確認が必要です。遺留分を侵害する遺言も法的には有効に作成できますが、相続が始まった後に相続人から遺留分侵害額請求をされ、紛争に発展する可能性があります。分け方に不安がある場合は、作成前に弁護士へ相談しておくと安心です。
事業を引き継ぐ人がいる場合、公証役場だけで手続きは終わる?
公証人手数料の算定自体は公証役場で完結しますが、事業用財産の評価額の算定や、遺言執行者の選定、遺言信託を利用するかどうかの判断は、公証役場の業務には含まれません。これらは税理士や司法書士、信託銀行など専門家との相談が必要になる場面が多く、公証人手数料とは別に専門家報酬や執行報酬が発生します。
まとめ|自分の家族構成に近いケースを確認してから、正式な見積もりへ
公証役場に払う遺言作成費用は、目的の価額と遺言加算を基本の算定基準としながらも、子どものいない夫婦の同時作成、再婚による遺留分への配慮、不動産の複数所有、相続人以外への遺贈、事業承継、証人の手配など、家族構成や財産の持ち方によって金額や必要な手続きが変わります。手数料令にもとづく基本的な考え方は家族構成が変わっても共通ですが、算定の対象になる相手の数や、遺留分・証人の手配といった周辺の手続きが変わる点を押さえておくと、見積もりの金額にも納得感を持てます。公正証書遺言としての効力やメリットは家族構成にかかわらず共通なので、ご自身のケースを早めに把握し、円満に手続きを進めましょう。
見積もりを依頼する前に決めておきたいことは公正証書遺言作成手数料の記事、費用の内訳や当日までの流れ全体は遺言書作成費用 公証役場の記事でも確認できます。ご自身の家族構成や財産の持ち方に応じた費用を具体的に知りたい方は、司法書士事務所リーガルステーションまでお気軽にご相談ください。
