
公正証書遺言書作成費用は財産の種類でどう変わる?不動産・現金・保険のケース別
「公正証書遺言書作成費用」を調べると、公証人手数料の早見表や内訳の説明はすぐに見つかります。ただし、同じように公正証書遺言を作る知人がいても、自分が受け取った見積もりの金額が思ったより高い、あるいは安いと感じることがあります。その違いの多くは、遺す財産の種類(不動産があるか、現金だけか、会社の株式や生命保険があるか)によって、評価の手間や専門家に任せる業務の範囲が変わることに原因があります。
この記事では、司法書士事務所リーガルステーションが、公正証書遺言書作成費用を「財産の種類」という軸で整理します。費用の内訳そのものの基本は公正証書遺言作成費用の記事、公証人手数料の早見表と財産額別の計算実例は遺言公正証書作成手数料の記事で解説しているので、金額の出し方を先に確認したい方はそちらもあわせてご覧ください。

公正証書遺言書作成費用は「共通してかかる部分」と「財産の種類で変わる部分」がある
遺産相続に備えて公正証書遺言書作成費用を調べている場合、どのような財産を遺す場合でも共通してかかる部分と、財産の種類によって重くなったり軽くなったりする部分の2つに分けて考えると、見積もりの違いを理解しやすくなります。この章ではまず共通部分を確認し、次の章から財産の種類ごとの違いを見ていきます。
財産の種類を問わず共通してかかるもの|公証人手数料の算定方式・証人手配料・交付手数料
公証人手数料は、公証人手数料令という政令第9条の別表が定める基準にもとづき、遺言の対象となる財産の評価額(目的の価額)に応じて全国一律に決まり、財産の種類にかかわらず同じ計算式が使われます。公正証書遺言の作成には証人2名以上の立ち会いが必要で、民法974条により法律上、未成年者や推定相続人・受遺者及びその配偶者・直系血族などは証人になれません。身近に依頼できる人がいない場合は、公証役場や専門家事務所に紹介を依頼でき、証人1人あたり1万円前後の手配料が実費として加わります。また、病気や高齢で公証役場に出向けず、自宅や病院、施設への出張を依頼する場合は、基本手数料が50%加算されるほか、公証人の日当(4時間以内は1万円、4時間を超える場合は2万円が目安)と交通費の実費も加わります。公正証書遺言の原本は公証役場に保管され、遺言者には正本と謄本が交付され、この交付手数料(書面1枚につき300円程度、電子データなら1通2500円程度が目安)も作成当日に支払うのが通常です。証書の枚数が増えるほどこの交付手数料も増えます。見積もりの前に専門家へ提出する書類は、戸籍謄本に加えて、本人確認のための印鑑登録証明書(お持ちでない場合は運転免許証などの身分証明書)、受遺者がいる場合はその住民票などがあります。これらはいずれも、財産が不動産でも現金でも同じ扱いになります。最新の手数料基準は、日本公証人連合会や最寄りの公証役場に確認するのが確実です。
財産の種類を問わず変わらないメリット|無効リスクの低さと検認不要
どのような財産を遺す場合でも、公正証書遺言には共通のメリットがあります。公証人が遺言者本人の意思を直接確認したうえで、法律上の効力を持つ遺言として作成するため、自筆証書遺言のような形式不備で法的に無効になるリスクが低く、原本が公証役場に保管されるため紛失・改ざんの心配もありません。遺言者が亡くなった後、相続人が家庭裁判所で行う検認の手続きも不要です。財産の内容が複雑になるほど、この確実性の高さが専門家報酬という対価に見合う場面も増えてきます。
財産の種類によって変わるもの|評価の手間・必要書類・専門家報酬の業務範囲
一方で、目的の価額をどう算定するか、どんな書類を集める必要があるか、専門家にどこまでの業務を依頼するかは、財産の種類によって大きく変わります。現金のように評価の手間がほとんどかからない財産もあれば、不動産や未上場株式のように専門的な調査が必要な財産もあります。なお自筆証書遺言は、全文・日付・氏名の自書と署名・押印という民法の要件を満たせば、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用しない限り誰にも費用を支払わずに作成でき、保管制度を利用する場合も一律3900円です。秘密証書遺言は財産の評価額にかかわらず公証人手数料が一律11000円です。このように、財産の種類によって費用が変わる仕組みそのものが、目的の価額に応じて手数料が決まる公正証書遺言だけに生じる特徴だという点も押さえておくとよいでしょう。
不動産を遺す場合|評価証明書の取得と将来の名義変更がからみ、費用が上がりやすい

固定資産評価証明書・登記事項証明書の取得実費が加わる
不動産の目的の価額は、固定資産税評価額を基準に算定するのが一般的です。このため、固定資産評価証明書や登記事項証明書の取得が必要になり、1通数百円程度の実費が加わります。固定資産評価証明書は、固定資産税の納税通知書や課税明細書に記載された評価額でも確認できる場合があるため、お手元にあれば先に確認しておくと取得の手間を省けることがあります。
複数の市区町村に不動産がある場合は、書類収集の手間と専門家報酬が増えやすい
不動産が複数の市区町村にまたがっている場合は、評価証明書や登記事項証明書をそれぞれの役所・法務局から取り寄せる必要があり、実費と収集の手間が物件の数に応じて増えます。専門家に書類収集まで依頼する場合は、この手間の分だけ専門家報酬が相場の上限に近づきやすくなる点も見積もりの段階で確認しておきたいポイントです。
将来の名義変更(遺言執行)にかかる費用も見据えておく
不動産の名義変更(登記)は、遺言者が亡くなった後に遺言執行者が行う手続きであり、作成時の公証人手数料や専門家報酬とは別のタイミングで発生する遺言執行費用に含まれます。不動産の数が多いほど登記にかかる実費や執行者への報酬も増えやすいため、作成費用だけでなく将来の執行費用まで含めて見通しを立てておくと安心です。名義変更まで任せる遺言執行者は、司法書士・行政書士・弁護士などの専門家のほか、銀行の遺言信託サービスを利用して指定することもでき、執行報酬の相場は信託銀行のほうが専門家より高めに設定されている傾向があります。執行費用の相場や支払うタイミングは公正証書遺言の作成費用のほかにかかる遺言執行費用の記事で詳しく解説しています。
現金・預貯金だけを遺す場合|評価の手間が少なく費用を抑えやすい

現金や預貯金は、残高がそのまま目的の価額になるため、不動産のような評価証明書の取得や評価額の算定作業が不要です。必要な実費は戸籍謄本など基本的な書類の取得費用にとどまり、不動産や未上場株式を遺す場合に比べて実費・専門家報酬ともに抑えやすいのが特徴です。文案作成のみを専門家に依頼する、あるいは自分で公証役場とやり取りして作成するという選択肢も取りやすく、専門家に依頼する場合と自分で手続きする場合の総額の違いは公正証書遺言の費用の記事で詳しく解説しています。ただし、目的の価額に応じて公証人手数料が発生する点そのものは、財産の種類にかかわらず公正証書遺言に共通する仕組みです。
未上場の会社の株式や事業用財産がある場合|評価が複雑になり専門家報酬が上がりやすい
未上場の会社の株式や、個人事業で使っている不動産・設備などの事業用財産は、市場価格がないため評価額の算定そのものに専門的な判断が必要になります。目的の価額を適切に算定するには、税理士など他の専門家が関与する場面も出てくるため、文案作成を依頼する司法書士・行政書士・弁護士の業務範囲が広がり、専門家報酬も相場の上限に近づきやすくなります。事業承継に伴って相続税の申告が必要になる見込みがある場合は、作成費用の見積もりと並行して税理士に相談しておくと安心です。
後継者に事業用財産を多く遺贈する内容にすると、他の相続人との間で遺留分をめぐる紛争や争い、トラブルに発展しやすく、円満な相続を妨げる要因にもなります。遺留分は配偶者や子など法定相続人に認められた最低限の取り分で、兄弟姉妹には認められていません。相続人間で揉める可能性が見えている場合は、交渉や代理の場面を見据えて早い段階で弁護士・法律事務所に相談し、遺留分を侵害しない範囲になっているかどうかを確認しておくことをおすすめします。
生命保険金がある場合|受取人指定分は目的の価額に含まれないことが多い
生命保険金は、受取人があらかじめ指定されていれば、受取人本人の固有の権利として保険会社から直接支払われる財産であり、原則として遺産分割や遺言の対象(目的の価額)には含まれません。したがって、保険金の額が大きい場合でも、その分だけ公証人手数料が増えるわけではないのが一般的な扱いです。ただし、受取人が「法定相続人」のように指定されている場合や、指定されていた受取人が遺言者より先に亡くなっている場合は扱いが変わることがあり、判断に迷う場合は保険会社や専門家に確認しておくと安心です。
借金・ローンなどの負債がある場合|手数料の算定には反映されないが伝えておきたい
公証人手数料の算定基準になる目的の価額は、プラスの財産を基準にするため、借入金やローンの残債といった負債は原則として差し引かれません。負債がある場合に手数料そのものが安くなるわけではないという点は、見落とされやすいポイントです。一方で、負債の扱いを遺言書の中で付言事項として触れることもでき、相続人が負債の存在を知らずに困ることを防げます。負債を誰が引き継ぐかは、遺産分割協議で法定相続人間が話し合って決めることになるのが基本です。負債の有無は相続放棄の判断にも大きく関わるため、見積もりを依頼する段階で負債の内容も専門家に伝えておくと、遺言全体の整合性を見てもらいやすくなります。なお相続税の計算では、負債は相続財産の総額から差し引ける債務として扱われますが、これは公証人手数料の算定とは別の話である点に注意してください。
財産の種類が複数混在する場合は、見積もり前に内容をひとまとめに伝えておく

実際には、不動産と現金、あるいは未上場株式と生命保険のように、複数の種類の財産が組み合わさっているケースが多く見られます。たとえば、自宅などの不動産は長男に相続させ、預貯金は次男に相続させるというように、財産の種類ごとに渡す相手を分ける遺言も実務ではよく見られます。この場合、不動産と現金それぞれの評価の手間と専門家報酬の目安を、渡す相手ごとに整理しておくと、見積もりを受け取った際に内容を照合しやすくなります。見積もりの精度を上げるには、依頼前にどのような種類の財産があるかを一通り専門家に伝えておくことが大切です。見積書に書かれた公証人手数料・専門家報酬・実費という3つの項目の読み方や、依頼前に決めておきたいことは遺言公正証書作成費用の記事、作成費用を誰が負担するかの基本的な考え方は公正証書遺言の作成費用は誰が負担する?の記事もあわせてご確認ください。
まとめ|公正証書遺言書作成費用は、財産の種類によって重くなる部分が変わる
公正証書遺言書作成費用のうち、公証人手数料の算定方式や証人手配料、交付手数料は財産の種類にかかわらず共通です。一方で、不動産は評価証明書の取得と将来の名義変更がからんで費用が上がりやすく、現金・預貯金は評価の手間が少なく費用を抑えやすく、未上場株式や事業用財産は評価の複雑さから専門家報酬が上がりやすい傾向があります。生命保険金は受取人指定分が目的の価額に含まれないことが多く、負債は手数料の算定には反映されないものの遺言全体の整合性のために伝えておく価値があります。ご自身が遺す財産の組み合わせに応じた費用の見通しを、専門家のアドバイスを受けながら立てたい方は、司法書士事務所リーガルステーションまでお気軽にご相談ください。
